Ep.3-33 希望を打ち砕く者
活動報告に「遅れます」言うたのに見れなかったヤツでございますか……m(_ _)m
遅れました!()
小見出しの方もじわじわやってます。
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――GUOOOOOOOO!!
――GAAAAAAAAAA!!
雄叫びを上げて、二柱の神が肉薄する。
辺り一面を覆ってしまう程の砂鉄と雷が激突しているその真下で、彼らもまた激しくぶつかり合う。
その度に尋常ではない衝撃と音がまき散らされ、遠くの木々ですら激しく揺れているのが分かる。
「「「っ………………」」」
そんな超常の激突を、子供たちはただただ呆然と見つめていた。
現在、彼らの周りを取り囲むように張られている正体不明の結界によって、その衝撃は直には伝わってこない。
「……ちょっと、なんスか、あれ……」
「いやいや、やっべーって……」
だが、それでも十二分に分かる。
目の前で繰り広げられるのは余りにも超常の力の応酬。視界に広がるのはまさに大自然の猛威。
そこにいるはずの二柱の獣の姿を、まともに捉えることすらできないほどだ。
しかし、目の前の衝突は紛れもなく、彼らによって引き起こされている次元の違う闘い。
――人間の理解を容易く超えた、まさに神話の闘いだった。
「あ、あれが、もしかして……」
「――ああ。あれが、神なる獣、王獣だ」
「「「!?」」」
「な、な、」
「りゅ、流斗くん!?」
目の前の光景にただただ慄然としている子供たち。その後方から戦闘を眺めていた流斗は、不意にボソッと呟かれた言葉にそう答えを返しつつ姿を見せる。
事情を鑑みれば仕方のないことなのだが、今日はどうしてもいろんな人たちを驚かせてばっかりだ。
別に、驚かせる気は毛頭ないんだけどなーっと……。
「よっ。みんな……無事みてーだなー」
眼前で今なお繰り広げられている王獣たちの戦闘。その衝撃すらをも完全に防ぎきっているこの結界――その名を『永遠なる安寧の聖域』という――ではあるが、この魔術を使った当事者である流斗は、結界を自由に出入りすることができた。
怪我人がいないかどうか確認するつもりだったが、ぱっと見る限りは全員無事のようである。
「いやいや、無事だけどさ……」
「んなことより、あのバケモンは何なんだ?」
「そーよ。それに、この光の結界みたいなのは何よ?」
「そ、そもそも、りゅ、流斗くんはここにいていいんですか?」
流斗に気づいた大二郎、エルリア、桜花が、そう次々と質問攻めしてくる。
いやいや待たれい待たれい。そんなにいっぺんに言われたって分からんてば、と、思わず苦笑いを浮かべる。流斗は大昔の偉い人ではないのだ。
……と、言うかだ。
「えーっと、茨木さんや? 体調の方はもういいのか?」
今朝方聞いた限りでは体調不良に苦しみ、ここまで運んできてもらってきたはずの少女の剣幕に、驚きを隠せない。
しかし、
「え? あーんなの見せられたら痛いのもどっか行っちゃったわよ!」
完全に普段の勢いを取り戻したらしい。半ばヤケクソのように告げられた言葉に、思わず笑ってしまう。
まーまーなるほど確かに、病み上がりにゃ少々刺激が強すぎるだろう。
「……」
「おい、流斗……」
そんなエルリアとのやり取りを無言で見ている周りのクラスメイト達が、そうやらいい加減説明してもらいたそうである。
ま、そろそろ焦らすのも止めたげようかねぇ。
……最も、既に『王獣』と相対したことのある少女――夏希と奏は、既に現状を把握していそうではあるが。
「――今ぶつかっているうち、猿の方がこの林『静謐極まる緑林』を統べる王『猿猴王』。その名を『磁猿魔』。磁力を操る、魔王の如き存在。――ハイエナの方がこの林を奪わんとやって来た魔獣たちの王『鬣犬王』。電気を操る、神域を襲う緑林たる獣」
“緑林”を奪わんとする、“緑林”。何とも言葉遊びのようであるが、しかし紛うことない真理。
元々住まうモノと、奪わんとやって来たモノ。目の前で繰り広げられるのは、まさに自然の生存競争そのものであった。
流斗の言葉をまだ受け入れ切れていない様子の子供たちに畳みかけるように、更に言葉を紡ぐ。
「ほんで、この結界はお前さんたちを守るためのもの。一応全グループに状況を伝え終えたからな、俺もここに来たって訳だ」
一部分を意図的に伏せ、さっくりと質問に答えておく。
これくらいの説明で、眼前で何が起こっているのかは把握できることだろう。
決して嘘は伝えていない。ただ、一つだけ伏せるべき情報を選別しただけだ。
知ってもしょうがないことは言ってもしょうがないだろうてよーっと。
――GOOOAAAAA!!
眼前で、再び衝突を見せる二柱の神。
そんな言い訳じみたことを心中考えている流斗には、凄惨なる景色の中でのやりとりが正確に知覚されていた。
『磁猿魔』の背後では、膨大な砂鉄がまるで意志を持つかのように蠢く。
その一部は彼に纏い、頑強極まる鎧となって彼の力となる。
一方『鬣犬王』の全身には圧倒的な電流が迸る。
特に前脚や顔周りはその電流がまるで鋭利な鎧のように形を変え、彼女の武器となる。
そうして全身を強化した二柱が、拳を、牙を、足を、爪を、打ち付け合い、その度に新たな衝撃を発生させている。
二柱の上空では更に、砂鉄によって拵えられた巨大な拳を模した鉄の塊と、先ほど子供たちに放たれたものとは桁違いに大きい雷球が衝突し、これまた圧倒的な衝撃を生み出している。
――人間も、魔獣も、それぞれ用いる魔術には固有の系統がある。
多く一般的には、一個体一系統であるが、高い実力を有する者ほど複数系統を操れたりする。
そして、一個体一系統と言っても、その本質はそれこそ多種多様である。
例えば目の前で相対する二柱の神。
本来ならば、電力と磁力は独立には発生しない。つまり、彼らの力は本質的には同質のチカラとも思われるかもしれない。
だが、違う。より優位に、より自然に使える魔術というものを各々必ず持っている。
従って、ここまで『猿猴王』は磁力、『鬣犬王』は電力しか用いていない。
何故ならそれが、彼らの力の本質であるがゆえに。
――最も、一口に電気とか火とか言っても、その中でも更に多種多様に及んでいたりするのだが、その話は今はいいだろう。
兎に角現在、目の前では砂鉄と雷による激突が繰り広げられていた。
「んえーっと、何か互角みたいっスけど、大丈夫なんスか?」
何が起こっているのか、まともに見えないほどの圧倒的な光景を眺めつつ、唯依がそう尋ねてくる。
普段の飄々とした彼女の様子は少し影を潜めているが、なんせこんな状況だ。仕方のないことだろう。
「ん? ああ、大丈夫っスよ~。何てったって――」
彼女たちを安心させるために、敢えて少しおちゃらけて返事をする。
そう。心配など、なかった。何故なら――
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人知を超えた力の激突。
その最中にある『鬣犬王』はしかし、まだまだ希望を捨ててはいなかった。
ガッ!! とひと際激しい衝突のあと、その勢いのままにお互い少し距離をとる。
未だ互いに怪我の一つもない。つまり、ここまでは純然たる互角だった。
「――なるほど。確かに、噂にたがわぬ相当な実力のよう。だが」
だが、まだやりようはある。そう彼女はほくそ笑む。
音に聞く猿猴の王とは、磁力を操り暴虐の限りを尽くす、まるで魔王の如き存在。それ故に、わざわざ脆弱な人間が入り込むこの時期を待っていたのだから。
そして今。その魔王のホームともいえるこの林で、人質と言える人質もなしに、現在まで互角に渡り合えているのだ。『鬣犬王』にとっては、上々と言えるだろう。
「(で、あるならば……)」
であるならば、まだまだ勝算は十分にある。
トータルで見れば、既に自分たちの負けは揺るがない。既に部下のほとんどを失った今、彼女に残された最後の希望は、眼前の猿王を討ち取ることで強引にこの域を奪うこと。それだけだった。
「――あ?」
だが、その希望は。
「あーあー。なるほど。勘違いさせちまったみてえだなぁ」
その希望は、しょせんただの希望。泡沫の如き、淡く儚い希望。
「かん、違い?」
「そうだ。あの結界の強度が分からんからな、抑えて闘っていたんだが……、どうやらその必要もないみてえだ」
希望を捨てていない彼女の目に気づいた『猿猴王』が、その淡い最後の欠片をも踏みつぶさんと言葉を紡ぐ。
「な、何を……」
「分からねえのか?」
一つ残った希望すらも容易く打ち砕かんとするその姿は、まさに魔王。
「それなら教えてやろう。――“格の違い”という奴をな」
次の瞬間、目視どころか知覚すら能わないほどの暴虐が、彼女を襲った。
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