Ep.3-4 少年の役割
タイトル再考中でございます
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「さて、話の続きにしよっか。ああ、そのままでいいから、聞くだけ聞いててくれよなーっと」
と、少女たちより先に食べ終えた少年がそう再び口火を切る。
少女たちはまだ、イカれた料理名とは裏腹にめちゃくちゃ美味しいこの店の料理に舌鼓を打っている最中だったので、反応を見つつも一人語り続けることにする。
「さてと、どこまで言ったっけなァ……。あーそうだ、林の様子がおかしいってとこやな。毎年、学園長が演習の話をしにその縁故の獣とやらに会いに行ってたらしいんだけどな、例年ならその主と直々に会っていたのに、何故か今年は林の前で部下の魔獣に会っただけですぐに帰されちまったらしい」
帰された、というのは、中々凄いことをするなとは思う。
相手は部外者たる人間とは言え、仮にも自分たちのボスの知り合いだというのに。
だが、恐らくここで一つ疑念が湧くことだろう。
もしかしたら、学園長がボスの知り合いであることを知らない三下が、勝手に追っぱらったのかもしれない、と。
現に、口にものを含みつつその話を聞いていた少女たちは、何か思いついたような表情をしていた。
だが、
「うんにゃ。それがなァ、その獣はどうやら正しく彼女のことを認識していたらしーんだ」
だが、その疑念は容易く否定される。
流斗も初めはそう思ったのだが、学園長が言うことには、自分に会ったのはいつも主の傍にいた側近らしき獣だったらしい。
その上で、その獣曰く――もちろんそいつが人の言葉を話すわけではないから、YESかNOでの簡単な問答だったらしいが――、ボスは忙しくて出てこれないということ。この学園の演習については例年通り行っても構わないこと。これらを伝えられたらしい。
「それで、そんな状況で、演習自体を中止にはしなかったの?」
食べ終えたらしい夏希が、そう疑問を呈す。
問題が生じているのなら、中止にすればよかったのではないか、と。
「ああ。別に何か、明らかな危険が見受けられたワケじゃあない。この演習で得られるだろう生徒たちの経験と秤にかけて、中止にするにゃあ理由が弱かった、ってとこらしいぜ」
いくら異常が見受けられたとしても、明確な危険として判断されなければ学校行事を中止にするのは難しい。
増して、学年の過半数に初めて実戦を提供することとなる一大イベントだ。向こうの対応が例年と少し違っただけで、その大事な機会を丸ごと失わせてしまうようなことはしなくてもいいだろう、と、教職員たちの会議で判断されたらしい。
「なーるほどねぇ……。それで、流斗くんの不参加の理由ってのは?」
流斗の言葉に納得した表情をしつつ、夏希が更に畳みかける。
大規模演習の不安要素は分かったが、それが流斗の不参加とは結びつかないようにも見える。
「あーそっか。そんで、そんな現状に際しての敢行っちゅうことで、学園長に頼まれたんさ。
――演習の最中、林の中を見回って、異常があれば林の外で待機している担任たちにすぐに知らせて欲しい。そして、もし万が一生徒に危害が及ぶことがあったら、彼らを守ってあげて欲しい。
ってな」
一二回会っただけなのに随分重い期待してくれるよなー、と、そう言いつつ苦笑いする。
「えっと、つまり、が、牙頼君は、その演習自体には一緒に行けるんですね」
「んー、そこらへんは何とも言えねーんだよなァ。下手に波風立てないためにも、多分そこに向かう道中は別行動だろーな。ま、帰り道は分からんけどなー」
「……ふむ。事情は分かった。それで昨日、依頼に来れなかったのね」
「んでも、何で流斗くんだったんだろ? 殆ど初対面のキミに、学園長が直々に頼むなんて」
やっべ。どうやら違和感に気付かれたようだ。
やはりこの子たち、何も見ていないようでしっかりと見ている。知り合ってまだ二週間だが、それは流斗とて既に幾度か感じさせられていた。
そもそも自分と国王夫妻や王国軍総隊長とのつながりは、半ば公然の秘密となってしまっている。この学園への編入に際し国王から直々に発表されたのもそうだし、初めの授業で総隊長と一緒にいたのもそうだし。
であるならば、お次は学園長とも何かしらのつながりがあるのではないか、と、そう思われるのも無理はないだろう。というか、ごく自然な思考であった。
まあ実のところ、自分と彼女の間には本当にほぼほぼ何のつながりもなくて、編入に際した手続きのときに二度ほどお会いしただけであったのだが。
国王とか総隊長とか、そこら辺からの情報で目をつけられてしまったらしい、なーんて話をして、いよいよ自分の素性について更なる疑念を抱かせてしまうのも嫌だし、さてさて、どうするべきか。
そんな感じで、内心暫しの間迷いつつ思考した果てに、
「あーっと、そうさなァ……。見回りっつっても、あくまで万が一のためにっていう位置づけだしなー。学年でも主席を分かち合う程優秀で、しかも既に依頼をこなした経験のあるお前さんらも候補だったのかもしれねえが、優等生と言う事実が広く知られているお前さんらをわざわざ別行動させるより、普通に演習に参加している集団の中にいてもらう方を取ったんだろ。俺はその分、まだここに来て日か浅い新参者だからなー」
と、取り敢えずその場で思いついた理由をでっち上げておく。自分が選ばれた理由は、あくまでやんごとないところからの情報があったが故であるらしいので。
だが同時、事実今言った理由もあったのではないか、と思えてくる。
大規模演習の舞台となる広大な林。当然ながら自分だけで全四クラス、十六グループを四六時中見守れるかと言えば、間違いなくノーである。
一応もし何か異常があれば、生徒たちは林のすぐ外で待機している各クラスの担任に連絡をすることになっている。
そんな中で、これ以上見回りに人員を割くよりは、実際に演習として行動しているグループ内に優秀な生徒を置いておいた方がいいだろう、という判断もあったのかもしれない。
「……それで、私たちにわざわざそれを伝えたのは、火消しのため?」
少し熟慮の時間があったのか、間を空けて夏希が更に話しかけてくる。
「いぐざくとりー。お前さんらが俺から理由を聞いて、それが正当なもんだったって言っといてくれりゃあ、いらん波風も立たんだろーからな。――樹宮を連れて来てもらったのは、よく一緒にいる二人だけじゃくて、ほぼ初対面のも聞いていたっていう、まあ証人みたいな感じさね」
「あー、それで証人ってこと。なるほどねぇ」
「わ、分かりました!!」
「という訳で、あとでクラスの奴らに聞かれたらよろしく頼むぜ。他の奴らは、杞憂に終わるかもしれない不安事項をわざわざ知る必要はないしな」
もう聞くことは無いよなー? と、少年がそう話を締めた。
そんな会話をした後。次の教室へと流斗たちが移動していると、
「……ん? あれって……」
「んお? ほんとだ。うおーい!」
学園内のお店が立ち並ぶ大通り。その道の端の方にクラスメイトらしき後ろ姿が三つ、何かを取り囲むようにしゃがみ込んでいるのを見つけたのだった。




