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神に牙むく無双の咎人 ~時代に抗う、次代の寵児たち~  作者: 銀風 朧月
第2章 次代の雛は開闢を知らず
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Ep.2-10 第一王女

今更ですが章題は仮のつもりです

 **********



 今朝会ったばかりだが、どこか親しみやすいこの年下の少女に対し気軽に挨拶を返す。

 相変わらず元気だな、この子は。


 それに対してミーナは、ちみっ子じゃないのですー、と言いつつ、しかし朝のように襲ってくることは無い。

 見ると、両手に昼食の乗ったお盆を持っていた。ちょうどこれから、席探しのようである。


「朝は助かったぜ、さんきゅーなー」


「それはよかったのです。けど、お陰でミーナは結構苦労したのです……」


 そうして少し恨めし気な少女の、自分と別れた後に襲ってきたらしい苦難のことを聞かされたのだった。




 聞くも涙、語るも涙のその話を聞き終わった少年少女たち。しかし糾弾されている当の流斗が真っ先に発した言葉は、


「それ、俺のせいじゃ無くね?」


 という何とも慈悲の欠片もないものだった。


 いや、確かに行き慣れない場所まで案内してもらったとは言え、案内できたのだから元の場所へ戻ることもできただろうて。

 しかも、正当な理由と判断されたらしく遅刻は無かったことになったらしい。これで責められるのは筋違いってもんではなかろうか、と。


「いやいや、あんまり知らない建物まで来てしまったせいなのです。ということなので、責任を取ってくださいですー!」


「ふむん……。じゃあ、これ食べるか?」


 その様子を見るに、彼女も本気で言ってる訳ではない。恐らく行き場のないやるせなさをぶつけているだけだろう。

 だがしかし、女の子に言われる“責任取って”という言葉ほど怖い言葉もそうそうない。

 ので、取り敢えず手元に残っていたデザート――戯れで手に取ったプリンを彼女の持つお盆に献上しておく。


 わーい、許したのですー、と、あっさり許してお盆を掲げ小踊り始めた彼女の後ろから、


「全くもう、あまりそういうことはだめですよ……」


 と、諫めるような声が響いた。



 ミーナと流斗のやり取りを静かに眺めていた最中、不意に聞こえてきたその言葉に、今度は一体誰だろう? と少女の後方を見た夏希と奏は、


「「――っ!?!?!?」」


 そこにいた人物に、丁度飲んでいたお茶を思わず吹き出しそうになる。

 だが、流石にそこは淑女(仮)、何とか踏みとどまる。


「(たはは……うっそでしょ……)」


 その少女がこの学校に入学したことは、言わずもがな知っていた。

 入学式の代表挨拶で登壇するのを、しっかりとその目で見ていた。

 だが、よもやこんな普通の食堂に来るとは、増してや単に見かけるどころか早々に関わりを持つことになるとは、全く想像してもいなかった。


「……なんだ?」


 一方、恐らくこの場で唯一彼女が誰だか皆目存じ上げない少年は、少女たちのそんな様子に首をかしげるも、さりとてその顔にふと顔見知りの面影を見る。

 と言うかつい数日前にお呼ばれして、編入を告げられたばかりであるし。


 両手に昼食を持ちつつ、少しゆっくり目にお辞儀をして、件の少女――第一王女は、流斗たちへ淑やかに挨拶してくる。


「お初にお目にかかります、先輩方。私、アリシア・ミラ・イッシュヴァルトと申します。若輩ながら、この国の王女をやらせていただいております。どうぞこれから、よろしくお願い致します」


 いーやいやいや、知ってるってー! というツッコミは流石の夏希にも躊躇われ、心中にそっとしまっておく。


「勿論、敬語は不要ですので、どうぞお気軽にアリシアとお呼び下されば幸いです」


 むむむ、そんなこと言われても……、と顔を見合わせている少女たちを尻目に、流斗は、


「あーいよー。よろしく頼むぜ、アリシアさんよ」


 と、何の躊躇もなく踏み込んでいく。

 次いで、さっくり自己紹介を終わらせやがった。

 ま、まじかこの人ー! と思うも、お陰で後に続いて話しやすくなったので、それぞれ簡潔に名乗る。


 夏希先輩に奏先輩ですね、どうかよろしくお願いします、という少女の言葉に、もう一人の少女も、


「あ! わたし、ミー……けほ、ミーネルって言うです。どうかミーナと呼んで下さいです」


 と続く。

 ()くして、この場に居合わせた少年少女はようやく自己紹介を終えたのだった。



「それで、お前さんらは席を探してんのか?」


 流斗が、そう尋ねる。

 ミーナも併せてだろうが、王女相手にお前さんら呼ばわりとはやはりこの少年、恐れを知らないというかなんというか……。

 そういえばこの少年、王族の推薦を以て編入する運びになったと入学式で国王が言っていたような気がする。

 先の態度を見るに、彼ら自体は初対面のようだが、国王とつながりがあるのならそういう身分の高い人との会話にも慣れているのかもしれない。


「そうなのです。あと二人、わたしたちと仲の良い子たちがいるのですけど、用事で職員室に呼ばれてるみたいで。多分、もう少ししたら来ると思うですけど……。四人丸ごと空いている席は、中々ないのですよー」


「……なるほど、ね」


 奏が納得の表情を見せる。

 ちなみに彼女たちは六人席に三人で座っていた。四人組と相席するには、残念ながら一人分足りなかった。


「ちなみに、なんとですね。その二人とこのアリシアちゃんは今年の主席なのですよー」


 ミーナが何故か自慢げにそう言う。アリシアは、その言葉に少し照れ臭そうな笑みを浮かべている。

 まるで自分のことのようにそう言える辺り、きっといい関係を築いているのだろう。


「おー、なるほど。……ってことは、ここには五人の主席がいるってことか。そいつァ随分とできすぎじゃねーかい」


「んえ? 五人です?」


 ミーナが、可愛らしく小首をかしげる。


「あー、それはだなー。――無堂、あと、湊宮。お前さんら、去年二人いたっていう入試の主席だろ? それも、満点での、な」


 夏希たちにそう話を振る。

 その言葉に驚愕しつつも、平静を装って尋ね返してくる。


「!? あはは、言う必要はないかなって思ってたんだけど……。というか、どこで知ったの?」


「ま、知り合いにな」


 と、適当に誤魔化しておく。まあ正しくは、どこかの王さんと老兵さんが色々と権力を使ってクラスを調べるついでに教えてくれたことなので、間違ってはいない。


 あ、どこかの王さんと言ったが、そう言えばここにお姫さんがいたっけ。

 この子は自分のことを……いや、知らないか。あの人たちが安易に口を割るとは思えんしな。


 と、暫しわき道に逸れたことを考えていると、何やらショックを受けたような表情のミーナが、


「がーん! ってことは、ここにいる人の中で入試が満点じゃなかったの、わたしだけなのですー!」


「まあ俺も、だけどなー」


「流斗せんぱいは編入だから入試受けてないじゃないですかー!」


 そう言って攻撃して来ようとするも、両手が塞がっていることに気づきぐぬぬ……と唸る。

 夏希とは少し違ったベクトルで、何ともいじりがいのある子である。


「ミーナちゃん、実戦は私たち四人の中でも一番なんですけど、座学はあまり好きではないんですよね」


「……そっかそっか。今度一緒に、依頼でも行けたらいいね」


「ホントですか! 行きたいです!」


 傷心のミーナを慰めるように、奏が彼女たちを征伐者の依頼に誘う。

 それはまだ入学したてで依頼に行ったことがない彼女たちには思わぬプレゼントだったようで、一気に元気を取り戻す。


 気づけば、初対面とは思えないほど場が盛り上がっていた。

 この学校でも更に優秀な者同士、惹かれるものでもあるのだろうか。


 そろそろ、遅れてくる二人も来る頃だろうな、と、立ち上がり彼女たちに告げる。


「さて。そんじゃま、俺は先に退散するとするよ」


「えっ? もう行っちゃうのです? あの二人にも会ってもらいたかったのですけど……」


 流斗の台詞に、ミーナが少し驚きと悲しみの混じり合った表情を浮かべる。


「いやいや、そうしたいのはやまやまなんだが、生憎と席がねーんでな。ま、先輩後輩、親睦を深め合うといいさー」


 はっはっはー、とどこか白々しい言葉と共に、流斗はそう言って颯爽と立ち去る。


「(そう言えば確か、あの総隊長のじいさんも、孫が入学したとか言ってたな。今の三年生は知らねーが、二年だけでなく一年にも優秀なメンツが揃ってるみたいだなァ。――こいつァ、いよいよ面白くなってきたじゃねえかオイ)」


 そう不敵な笑みを浮かべながら。


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