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第27話 帝国の鉱山を調べたら、採掘よりごみ処理の方が儲かった

帝国北部。

巨大な鉱山地帯。

ドランの商会と結んだ新しい輸送契約を使い、俺たちは鉱山の廃石を現地で選別できるか調べに来た。

浮遊運搬台の扱いを覚えた御者も、地形を調べるため同行している。

俺は皇帝直属の鉱山を訪れていた。

鉱山の責任者は、厳しい顔をした老人だった。

「オリバ殿」

「はい」

「我々の鉱山に、何の用ですかな?」

「廃石を調べたいんです」

老人は眉をひそめた。

「……廃石?」

「はい」

「また、ごみですか」

俺は笑った。

「そうです」

老人はため息をついた。

「好きに調べてください」

試験場の横で、老鉱夫が廃石の山を指した。

「この山の下には、雨が降ると水がたまる。掘り返したら斜面が崩れるぞ」

俺は金属の含有率ばかり見て、石の置かれた場所を見ていなかった。

鉱山長に頼み、古い測量図と排水路の記録を探してもらった。

図面には、数十年前に埋められた水路が一本だけ残っていた。

「ここを先に開けよう。金属を回収するのは、その後だ」

「工期が延びるぞ」

「山が崩れたら、工期どころじゃありません」

雨の翌日、排水路から濁った水が勢いよく流れ出た。

老鉱夫は黙ってその流れを見ていた。

「お前さん、儲け話をしに来たんだろう」

「そうです。でも、この町を危険にして儲けるつもりはありません」

俺は工事費を収支表に加えた。

利益は減ったが、初めて安心して山に近づけるようになった。

坑道の出口から谷まで、使い道を失った廃石が段々に積まれていた。

俺は石を拾い、鑑定した。

【鉱山廃石】

鉄含有率:12%

銅含有率:1.2%

ミスリル含有率:0.4%

オリハルコン含有率:0.03%

俺は目を見開いた。

「……おいおい」

次の石。

【ミスリル含有率:0.7%】

さらに次。

【オリハルコン含有率:0.05%】

俺は笑った。

「……これはすごい」

ミリアが尋ねる。

「また宝の山ですか?」

「ああ」

「……やっぱり」

俺は廃石の山を見上げた。

ここには、何百万トンもの廃石が積まれている。

すべてが高品質というわけではない。

だが、適切に選別すれば、相当な量の希少金属を回収できる。

「……これは大きな事業になるぞ」

俺は呟いた。

鉱山の帳簿を見て、俺は計算をやり直した。

廃石から回収できる金属は多い。

だが運搬費と魔力消費を引けば、利益は想像ほど大きくない。

「採掘より儲かるって言ったじゃないですか」

とミリアが小声で言う。

「条件付きだ」

俺は鉱山長に、選別設備を現地へ置く案を示した。

石を丸ごと運ぶのではなく、価値のある成分だけを運ぶ。

試験運転では装置が詰まり、二日間停止した。

それでも現場の職人が改良したふるいが効き、ようやく数字が黒字に変わった。

儲けは鑑定だけで生まれない。

試験開始から一か月後。

試験精製の結果が出た。

回収した鉄。

銅。

ミスリル。

そして、わずかなオリハルコン。

俺は計算書を作成した。

処理費用。

設備費。

魔石の消耗。

人件費。

輸送費。

そして、回収金属の売却価格。

結果。

「……利益が出ますね」

鉱山責任者が驚いた。

「本当ですか?」

「はい」

俺は頷いた。

「しかも、採掘量を増やさなくても」

老人は黙った。

そして、ゆっくり笑った。

「……三十年間、捨て続けてきた石が」

「はい」

「今になって金になるとは……」

俺は笑った。

「面白いでしょう?」

老人は頷いた。

「……実に面白い」

その結果を聞いた鉱山長は、すぐに大規模な契約を求めてきた。

だが俺は、差し出された書類をその場では受け取らなかった。

「まず廃石の山を、場所ごとに調べさせてください」

「なぜだ。どの山にも金属があるのだろう?」

「量が違います。運ぶ費用も違う。全部を同じ値段で引き受けたら、俺たちも鉱山も損をします」

老人は不機嫌そうだったが、翌朝から案内人を付けてくれた。

廃石の山は、遠くから見ると同じ灰色だった。

しかし鑑定すると、採掘された時代によって成分がまるで違う。

昔の技術では取り切れなかった金属が残る山もあれば、ほとんど価値のない石ばかりの山もある。

俺は地図に印を付けていった。

ミリアが首を傾げる。

「全部を買い取るつもりじゃなかったんですか?」

「最初はそう思った。でも、見ずに決めるのは危険だ」

「オリバさんでも、読み違えることがあるんですね」

「毎日あるよ。帳簿がそれを教えてくれる」

俺が笑うと、ミリアも少しだけ笑った。

三日目、古い坑道の近くで作業員が転倒した。

積み上がった廃石が崩れ、足場を塞いだのだ。

俺たちは作業を中止し、救助用の道を確保した。

幸い大きな怪我はなかったが、鉱山長の顔は青ざめていた。

「昔から危ないと分かっていた。だが片づける金がなかった」

俺は崩れた山を見上げた。

「利益が出る場所から処理して、その利益で危険な山を片づけましょう」

「儲からない山まで?」

「放っておけば、次は誰かが下敷きになります」

老人は何も言わなかった。


翌日、鉱山の職人たちを集めて工程を見直した。

廃石を砕く人、ふるいにかける人、金属を回収する人。

これまで別々に働いていた人たちが、作業順を一枚の板に書き出す。

「ここで一度、石を戻しているな」

職人の一人が指摘した。

「だったら、このふるいを先に置けないか」

別の職人が木炭で線を引き直す。

俺は黙ってそのやり取りを見ていた。

鑑定の力で金属の含有率は分かる。

でも、現場で何が無駄になっているかは、働く人にしか見えない。

改良後の試験は順調ではなかった。

湿った石がふるいに貼りつき、選別が止まった。

「乾かす場所が足りない」

ミリアが言う。

俺は屋根付きの仮置き場を提案したが、職人たちは別の方法を選んだ。

山の斜面を利用して水を切り、雨の前に覆いを掛ける。

設備費は俺の案よりずっと安かった。


一週間後、改めて収支表を作った。

最初の計算では赤字だった工程が、ようやく黒字になった。

ただし、危険な山の撤去費用を積み立てると、利益はそれほど大きくない。

「それでもやるのか」

鉱山長が聞く。

「はい。続けられる利益があれば十分です」

老人は契約書に署名した。

俺はその横へ、現場の職人たちの名前も記録した。

この事業を成功させたのは、俺一人ではない。

廃石の選別試験で、鉱山の若者が希少金属の含有率を過大に記録した。

報奨金を増やしたかったと泣きながら告白した。

俺は記録を直し、報奨を採掘量ではなく安全な分別の精度に連動させた。

鉱山長は

「甘い」

と言ったが、嘘をつかせる仕組みを残したまま罰する方が危険だと伝えた。

鉱山長は、採掘量の表の横へ安全点検の記録を置いた。

「これも毎月、俺が確認する」

老人の指は、金額ではなく崩れかけた斜面の印を押さえていた。

契約を結んだ日の昼、鉱山の食堂で若い職人が尋ねた。

「希少金属が取れなくなったら、この仕事も終わりですか」

俺は即答できなかった。

廃石には限りがある。

だから契約書の裏に、選別設備の保守と坑道の安全点検を地元の職人へ発注する計画を書いた。

鉱山長は

「掘るだけの山から、守る仕事のある山に変えるのか」

と言い、現場責任者と一緒に費用を計算し始めた。


翌月、最初の安全点検の日が来た。

前に含有率を水増ししてしまった若者が、今度は金属の少ない廃石を持ち込んだ。

「こっちは売れません。でも、この下の斜面が崩れそうです」

彼の報告で作業は止まり、職人たちは排水路を開け直した。

雨の夜を越えても斜面は動かなかった。

朝、鉱山長が新しい作業表を掲げた。

金属の回収班に並び、斜面の点検と排水路の保守を担当する班ができていた。

含有率を水増しした若者の名前も、その中にある。

「昨日の報告は、俺の勘違いかもしれませんでした」

と若者が言った。

「それでも止めてよかったんでしょうか」

鉱山長は黙って机の上の石を一つ拾った。

前夜の雨で崩れた斜面から採れた、ひびの入った石だった。

「止めなければ、これが坑道の入口へ落ちていた」

老人は石を若者に渡した。

「明日も見つけたら、報告しろ」

若者は石を両手で受け取った。

次の当番表を確認すると、自分の名前の横に赤い印がある。

排水路の再点検日だった。

彼は印を指でなぞり、職人仲間に声を掛けて外へ走っていった。

俺が持ち帰ったのは、採れた希少金属の試料と、雨で泥のついた新しい点検表だった。

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