講堂
講堂では、すでに何人かの受講生が座っていた。
受講生の多くはロジーナと同じくらいの世代の若者たちだったが、中には大人の姿もちらほら見える。
一度一般社会に出て経験をつみ、その後に魔術師を目指すと人もいるからだ。
「ロジーナちゃん。席、どうする? この辺でいい?」
コーネリアは、ロジーナと一緒に座ることがさも当たり前だという様子で話しかけてくる。
「……」
ロジーナが黙っているのを肯定しているととらえたのか、コーネリアはロジーナの腕に手を添えて座るように促した。
普段なら、誰かと近くに座ることに戸惑ったかもしれない。
しかし、今はそういう感覚もなく、ただ自然にその流れに身を任せた。
ロジーナにとって、周囲から浮いているのは日常の一部だった。
幼い頃から、人と自分の間には距離があることに慣れていた。
二人は並んで座った。
その一連の流れがあまりにも自然すぎて、戸惑う暇すら与えられなかったことに後から気づいた。
ロジーナは今までこんな風に誰かと一緒に座った記憶はほとんどない。
自分に起こっていることがよくわからず、確認するかのようにゆっくりと周囲を見回す。
コーネリアと目が合った。
コーネリアはやさしいまなざしで、ロジーナに微笑みかけてきた。
ロジーナは気恥ずかしくなって下を向いた。
「いろんな人がいるねぇ」
コーネリアはロジーナにささやきかけるように言った。
「うん……」
ロジーナはそう返事するだけで精一杯だった。
職員がやって来て、資料を配り始めた。
ロジーナはそれをそそくさと受け取ると、中身を確認しはじめた。
扉が開き、事務局長のタチアナを先頭に数名入ってきた。
講堂内は静かになった。
「みなさん、こんにちは。本日から中級魔術師認定研修会が始まります。開催にあたりまして……」
挨拶とともに、日程や注意事項の説明がはじまった。
みな、真剣に聞いている。
「では、これから講師の先生方を紹介いたしたします」
タチアナがそう言うと、講師たちが真ん中に立った。
「法律を担当する……」
講師陣が次々と紹介されていく。
「弁護士の先生、ちょっと強面だね」
コーネリアが小声で話しかけてくる。
ロジーナは小さく相槌を打った。
「礼儀作法の先生、きつそうな感じ?」
紹介されるたびに、コーネリアが小声で講評をする。
「おじいちゃん先生、大丈夫かなぁ~」
よたよたしている老医師への突っ込みに、ロジーナは思わずクスリと笑ってしまった。自分の中で、こうした些細な笑いが自然に出ることは、ちょっぴり不思議な感覚だった。
「では、さっそくですが、この後、休憩をはさんで、講義に入ります。10分後に開始いたします」
タチアナはそう説明すると、一礼をし、講師らとともに退出していった。
「初日からスケジュールびっしりだね」
コーネリアがシラバスを開きながら呟いた。
「そうだね」
ロジーナは同意した。




