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コーネリアとの出会い

 中級魔術師試験は十五歳から受けることができるようになる。

 十五歳になったロジーナは、やっと中級魔術師試験を受けることができ、見事に合格した。

 しかし、中級魔術師に認定されるためには、協会主催の研修合宿を受講しなければならない。

 そしてこの中級魔術師認定研修の内容は魔術ではなく一般教養。

 ともすれば一般社会の常識とズレてしまいがちな魔術師たちにとっては意味のある研修会だ。

 

 研修の初日、ロジーナは割り当てられた部屋の扉の前に立った。

 大きく息を吸い、ノックする。

 

「は〜い。どうぞ〜」

 中から、やわらかい、陽だまりのような声が聞こえた。

 少し震える手をドアノブにかける。

 

 扉を開けると、すでに一人、少女がいた。


 年は同じくらいだろうか。金色の巻き毛が肩でふわりと揺れ、少し濃いめのエメラルドグリーンの瞳がこちらをまっすぐに見ていた。


「はじめまして。私、コーネリア。よろしくね」

 にっこりとためらいの欠片も感じさせない声と、ふんわりした雰囲気に、ロジーナは一瞬どう反応していいか戸惑った。

 これまで同世代の女子から、こんな風に話しかけられた経験がなかったからだ。


 師であるクレメンスの元にはたくさんの通いの弟子がいる。ロジーナと同じ世代の者も何人もいた。

 しかし、幼い頃から内弟子として修行を積んでいるロジーナと彼らには歴然とした実力の差があった。

 彼らにとってロジーナは異質な存在であるようで、明らかに距離を取る者、あからさまに妬みを含んだまなざしを送りつけてくる者しかいない。

 ロジーナに普通に話しかけてくるのは、師であるクレメンスと、一番弟子のカルロス、そして銀月堂の娘リンダくらいだった。


「……ロジーナです。よろしくお願いします」

 とりあえず挨拶をした。


「良かったぁ〜」

 コーネリアはほっとしたように笑った。

「なにが?」

 ロジーナは意味が分からず眉をひそめた。

「ロジーナちゃんみたいな優しそうな子と同じお部屋で」

 一瞬、思考が止まった。 

「優しい? そんなこと言われたことないけど……」

 正直にそう言うと、コーネリアは目を丸くした。

「え〜そうなの? ロジーナちゃん、とっても優しそうだし、お人形さんみたいにきれいだし〜」

 今度は別の言葉が返ってきた。


 きれい……。

 何のことを言われているのか、すぐには分からなかったが、それが容姿のことを指しているのだと気がついた。


 ロジーナは目の前の少女を見返す。

 絹糸のようにふんわりとした髪質。キラキラと人懐っこそうな瞳。厚めの紅い唇。なによりも、明るい陽だまりのような雰囲気。

 どう見ても、コーネリアの方がずっときれいだと思った。

 

「……きれい? コーネリアさんの方がきれいだと思うけど?」

「うふっ、ありがとね」

 コーネリアは嬉しそうに小首を傾げてそう言った後、

「ロジーナちゃんってホントいい子ね」

 と続けた。

 

 いい子……。

 それはどういう定義で出てきた言葉なのだろうか。


 ロジーナにはどう答えていいのか分からず押し黙った。

「うふっ。仲良くしてね」

 沈黙を気にする様子もなく、コーネリアは微笑んだ。

 ロジーナは何も言えず、ただ小さくうなずいた。


 カーンカーンカーン

 廊下からベルの音が聞こえてきた。


「あ、集合の合図だ。ロジーナちゃん。行こうっ」

 コーネリアは当然のようにそう声をかけると、筆記用具を持ち、ドアノブに手をかけた。

 一瞬動きを止めたロジーナだったが、振り向いたコーネリアの優しい眼差しに思わず「うん」と答えた。


 二人は連れ立って講堂へと向かった。

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