⑪十四代目勇者との戦い
「違うよ。勝ち確なんだよ。なんたって異世界転生だよ? 魔王の癖に頭が悪いなぁ」
頭の悪い人間に『頭が悪い』と言われても説得力はない。相田は思わず失笑していた。
「まだリコルの方が、よっぽど勇者らしくしてたな」
先代の名前を出され、アインは一気に不機嫌になった。それはまるで感情を制御できない子どもが見せる程に分かりやすい表情だった。
ひとしきり笑い終えた相田が腕を組む。
「礼を言う。お陰で負ける気が一層しなくなった」
相田はアインに向けて片手を伸ばし、指で招く。
「来るがいい………勇者は魔王を倒せるのだろう? その自信と真理をひっくり返してやろう。まぁ、怪物達を後ろに従えていたお前が勇者だとは、誰の目にも見えないがな。裏表紙の候補にすらならねぇよ」
「ごちゃごちゃと!」
アインが白銀の剣を構えた。
「ごちゃごちゃ? 話しかけてきたのはお前の方だろう?」
「一々、煩いんだよっ!」
顔を赤くしたアインが正面から飛び込む。その速さは常人よりも早く、一蹴りで相田との間合いへと飛び込んでいた。
「さぁ、この動きが!」
「見えなくもない」
相田が右膝を突き出すと、その先端はアインの鼻頭を正確に捉えていた。
「ぶぱぁっ!」
勢いの反動でアインが仰け反り、曲線状に鼻血を噴き出す。
「クレアの親父さんを見た後だからな。全然遅ぇ、速さが足りないって奴だ」
事前に見せられた速さよりも遅い時、人は見極める事ができる。しかも挑発によって正面から来る事が分かりきっており、さらに相手の性格から懐に飛び込んでくると読んでいた相田にとって、彼の速さは決して捉えられないものではなかった。
そして、相手の態勢が整うまで待つ事を相田は選ばなかった。
「この国の勇者は、どいつもこいつも意味をはき違えていて困る」
相田は左足で地面を蹴って体を浮かすと地面と水平に傾け、浮かしてあった右足と同時に膝を伸ばして体ごと回転、さながらドリルのような蹴りを解き放つ。突き出された蹴りは、現実ならば大した威力にならないが、相田の想像力が追加された事で、アインは大型車に引かれたかのように後方へと吹き飛ばされ、一軒家を巻き込んで瓦礫の中に埋もれていった。




