⑨無限の想像から生まれていく無双
「さぁて、お次は足元にある物でも使わせてもらおうか」
魔王、超能力、物語において、石を扱う者は主役でなくとも数多く存在する。
相田は両手を広げて地面へと向ける。そして、ナイフを操る技を基本形に想像力に具体性をもたせていくと、小石が小さく振動し始め、一つまた一つと腰まで浮かび始めた。
「くっ!」
操る数の多さに、相田の額には血管が浮かび上がる。
僅かに頭痛も始まった。
「集中………集中だ」
自身の中で、雨とは真逆の現象を想像し続ける。
ついに周囲に漂う小石は数百を超え、地面に対して水平に浮かんでいた。
「いけ! ストーンクレイモア!」
実在する近代兵器と魔法の融合を果たした言葉を吐き、相田は空へと指を突き向ける。同時に小石は指先に向かって水平に飛ぶ無数の礫と化して、空の敵へと目がけていった。
魔物達は自身の落下速度と、石の速度との相乗効果によって体に穴を開けていき、赤い雨と命果てた肉塊や石片となって地面に落下していく。辛うじて生き残った者や回避できた者も、まばらとなった数と鈍化した動きではフォーネの恰好の餌食となり、地面に近い順から程良く殴られ、蹴られ、次々と打ち落とされていった。
中央広場の至る所で積まれていく魔物の死骸。石畳は赤く染まり、肉片は雪のように落下していく。まさに地獄が再現されていくようだった。
その中心に、相田とフォーネは息を整えながら立っている。
怪物達の元はこの街の住民である。それを躊躇なく手にかけていく相田の心に、罪悪感が汚泥の入った桶をひっくり返すように常に襲って来るが、それでも手を緩めなかった。
―――もう、迷わない。迷えない。迷う訳にはいかない。
相田はその言葉を前面に掲げ、それ以上深く考える事を止めていた。
迷えば、背中を守ってくれているフォーネを殺してしまう。相田にとって、最も恐ろしい事は、住民達だった命を刈り取る事よりも、ただ一人の弟子を失う事だった。
足元の石材を使い果たし、空に向かう礫の数が一気に衰える。
その隙を待っていたのか、地表と空から同時に怪物達が迫って来た。
「その程度かぁぁっ!」
想定していた相田は、素早く腰を屈めて両手を地面に付ける。
すると、相田達を中心に十六方位の巨大な刃が地面から生え、地表と空から迫ってきた怪物達を切断していった。さらに刃はそのまま直線状へと放たれ、後続の怪物達をも巻き込んだ。
格闘ゲームにおいて、不用意に飛び跳ねて近付こうとした者に放たれる技である。
怪物の数は一度に数十体は襲ってくるが、相田の大技でその九割を殺し、零れた残りをフォーネが各個撃破する。
二人に触れられる存在は皆無であった。




