④魔王からの最後の命令
「御主人様!」「お父さん!」
案の定、コルティとケリケラが血相を変えて反対してきた。
だが、相田は首を左右に振る。彼女達の想いを受け止めつつも、決断を覆さなかった。
「いつも不器用で済まないな………だが、一人でも多く助ける為は、これしか方法がない」
相田も自分が死ぬつもりが毛頭ない事を、不安な表情で躊躇っていた周囲に笑顔で応える。
「俺の技なら、正直一人の方が戦いやすい。ほら、以前にも一人で千五百人相手に生きて帰れただろう? まぁ、あれと同じさ」
つい最近の出来事のはずが、数年前の様な間隔の記憶となっていた。あの時は、死者を呼ぶ事で数の差を埋めたが、人間を怪物に変異させる術が存在する以上、呼び出した死者を逆に依り代として利用される可能性が捨てきれない。相田はそこまで考えていたが、それを話すことなく、周囲の心配を払拭させようと笑い続けた。
「シュタイン!」
「御前に」
相田は魔王軍随一の軍師の名前を呼ぶ。
「俺が戻ってくる間の魔王軍の一切を任せる。撤退した魔王軍の再編を行い、ロデリウスの王国騎士団達と共にウィンフォスへと無事に帰還させてやってくれ。当初の契約通り、期限が経った後は、同胞達を故郷へと、家族の下へと返してやってくれ」
「はっ。最後の一人まで万事滞りなく務めさせて頂きます………魔王様もどうか御武運を。無事なお帰りを我ら一同、お待ちしております」
頭を下げ、シュタインは握った拳をもう片方の掌で包むように合わせ、堂々たる拱手の構えを見せる。
「ツヴァイール」
「は、御前に」
刀傷のライカンスロープが拱手のまま側面に控えていた。
「撤退する魔王軍の治安維持を任せる。特に避難しているカデリア王国の住民達の保護を徹底してくれ。だが万が一、怪物になれば容赦はするな。コルティ達と共に、魔王軍としての威厳を損なう事なく務めを果たせ」
「御意」
ツヴァイールは頭を下げた後、自慢の長刀を鞘ごと腰から抜き、それを相田へと差し出す。
「自分をここまで取り立てて下さった事、感謝に堪えません。せめて我が刀、魔王様と共に見届けさせて頂ければと思います」
「じ、自分のも使って欲しいギー」
彼に続いて、小鬼のクルマンが両手いっぱいに火縄銃を相田の前に持って来た。
「分かった。お前達の想いを預からせてもらう」
相田は二人から武器を受け取る。
そして相田が、上空を見上げた。
「ベルゲン! お前もだ。飛んでいるからといって逃げ遅れるなよ!」
「了解であります! 上空から申し訳ございませんが、魔王様も御達者で!」




