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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第十一章 魔王の戦い
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③交渉

「魔王様。敵を確認しました! 五分以内にこちらへ到着の模様!」

 上空からベルゲンの報告が降りてくる。先程の猛攻は相田の大技で中央広場を周囲の家屋事更地にさせたが、それでもなお四方から敵が迫って来ていた。


「逃げるにしても、この状況では動きが取れないね」

 ロデリウスが気絶しているリコルを担ぎながら息を切らしている。

「でも、動くなら今ですわ」

 同じくマキの体を背負うクレアが一筋の汗を流す。セルから受け継いだ銀の精霊であるエクセルは、彼女の着る魔導服の上から胸当てや籠手、脛当てへと姿を変え、さらに重力制御によってマキの体重を相殺させて負担を軽減させていた。


 だが、逃げるという選択肢は、巨体であるガーネットや重症のフォーネを含め、動く事ができない仲間達を見捨てる事になる。彼らの心情としては覚悟の上ではあったが、相田はそれを良しとしなかった。

 クレアの言葉を最後に、自然と周囲の視線が相田に集中する。

 

「大魔王、そこにいるんだろう?」

 決意を含んだ静かな声。呼び寄せた相田の近くで空間が歪み、銀色の長髪の男が姿を現した。

「うむ。まぁ、流石に分かったか」

 大魔王の右頬が僅かに吊り上がる。

 実際、大魔王が相田の傍にいたのか、それともコルティ達の様子を窺っていたのか。気配を読み取る事が殆ど出来ない相田に、それを特定する事はできない。だが、確実にここにいるという判断での言葉だった。

 大魔王の力があれば、城からの脱出も、中央広場に集まる怪物達の相手も容易だったはずである。それこそフォーネの治療もできたのかもしれない。だが相田は、湧き出てくる感情を腹の底に抑え込み、大魔王以上に意地の悪い笑みで返す。

「人間の強さを、知りたくはないか?」

 その言葉に大魔王は相田を見降ろしたまま無言を貫いた。


 相田は続ける。

「人の強さの一つは、誰かを守る覚悟だ。自己犠牲ともいうが………まぁ、ここでは言葉選びはどうでもいい。とにかくお前が見たがっている姿を、俺自身が体現させてやろうという訳だ」

「その代償として、余にこの者達の安全を図れ、と」

 話が早くて助かる。相田はこんな状況でも楽しむかのように笑う大魔王に対して、ある意味における尊敬の念を抱きつつも、負けじと対等に要求を叩きつけた。

「お前の事だ、俺の性格を呼んだ上で周囲の状況も退路も把握しているだろう? ならば、ここにいる者達を安全な場所に転送なり避難させる術を既にもっているんじゃないか?」

 大魔王の博識、指揮の高さを相田は疑っていない。物語の中では、数百年という時をかけて地上を制圧する計画を立てていた大魔王が、ここで何もせず、傍観のみで過ごしていたとは考えづらい。相田は相手を過大に評価する程度の思考をもって、大魔王の行動を理解しようとする。


 その大魔王は、相田の提案に目を瞑って一秒程沈黙すると、静かに口を開ける。

「良いだろう」

「よし、交渉成立だ」

 互いに利害が一致した契約であった。

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