他の人とは違う
シリウス様に言われたとおり、私はルディアス様と一緒に女王様の部屋、執務室へ向かっていた。
学院に来てから毎日のように繋いでもらっている手なのに、今日は何だかどきどきしてしまう。繋がれた手が熱い。今までは気にならなかったのに、手汗が出ていないかどうかとか、髪の毛がはねていないかとか、小さなことが気になってしまう。
ちらりと隣を見ると、気づいたルディアス様が微笑んでくれた。その笑顔を見るだけで、とても幸せな気持ちになる。
――そばに居られることがこんなにも嬉しい。
誰かに必要としてもらえることが、そばに居てもいいと許されることが、こんなにも嬉しいことだって今までは知らなかった。
先程までのルディアス様と会えない時間は辛くてため息ばかりだった。だけど、今は一緒にいられることが、笑いかけてもらえることが、とても嬉しい。
一緒に居られるだけで、胸がぎゅっとなって涙が出そうになってしまう。
――まるで心と体が自分のものじゃなくなったみたい。
私の体はどうしてしまったのだろう?
学院に来る前も、胸がぎゅうと締め付けられることは何度もあった。お父様に怒られているときや、お母様の泣きそうに笑うお顔を見たときは、辛くて苦しくて悲しかった。
でも、この胸の苦しみは今まで感じたのとは違うような気がする。苦しいのだけど、どこかふわふわするような、そんな不思議な気持ちだった。
「どうした? 具合が悪いのか?」
もしかしたら、ルディアス様の言う通り、具合が悪いからこんなにも胸が苦しいのかもしれない。
「執務室に行くのは止めておくか」
「い、いいえ! 女王様もシリウス様もお待ちですから。私は大丈夫です」
「だが……」
「あ、あの……」
――ルディアス様ならどうしてこんな気持ちになるのかわかるのかもしれない。
でも、ルディアス様に相談するのは何となく恥ずかしくて「本当に大丈夫です」と俯いてしまう。すると、大きくて温かな手が私の頭を優しく撫でてくれた。
その手が背中に移動することを不思議に思っていると、ふわりと体が浮くような感覚があった。いつの間にか離されていた手も、抱えるように膝下に差し入れられていた。
「あ、あの……ルディアス様?」
「無理はするな。治癒室へ行こう」
「治癒室……?」
「ああ。重い病気だったら大変だ」
ルディアス様はそう言って、来た道を戻ろうとしてしまう。このままだと執務室が遠ざかってしまう。
「ルディアス様、私なら大丈夫です。女王様の元へ伺いたいです」
「だが、具合が悪いのだろう?」
覗き込むように顔を見られて、体の熱が一気に上がった気がした。横抱きにされているとルディアス様の顔が近くなって余計にドキドキしてしまう。
さらりとした黒い短髪も、少し太い首筋も、男の人特有の隆起した首元も、力強い腕も、ルディアス様の何もかもが私とは違った。
ふるふると首をふって、熱を外に逃がそうとする。
「あ、あの、本当に大丈夫です。だから、下ろしていただきたいのです」
「そうか……わかった。だが、まだ顔も赤い。このまま俺が執務室へ連れて行こう」
ルディアス様はそう言って、私を抱きかかえたまま執務室へ向かおうとする。
そのままずんずんと進んで行くルディアス様に、何度も下ろしてほしいと伝えても、心配だからと執務室へ着くまでは聞き入れてはもらえなかった。
お久しぶりです。
久々だったので短めの投稿です。
今後も書き続けられるようにのんびり楽しく頑張りたいなと思ってます。
待っていてくれた方も、ここまで読んでくださった方もありがとうございます。




