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尾行のお誘い

サブタイトル変えるかもです……!

 アイリスにルディアス様とお出かけをすると聞いた後、私はエストを捜しに行こうとしていた。

 話はもちろん、明日のことだ。アイリスがルディアス様と出かけるなんて、こんなに楽しそうなことはないと思う……!!


「イザベラ様、私はエストを捜しに行ってきますね」

「あら、私もアロイスと話そうと思っていたから、一緒に行きましょう?」

「そうだったんですね! でも、二人が居そうなところって何処でしょう……」

「エストはわからないけど、アロイスは図書室に行くのが好きみたいよ?」


 エストはいつもアロイス様と一緒にいるから、今日も一緒にいるといいんだけど。

 そう思いつつイザベラ様に教えてもらった、学院内の三階にある図書室へと私達は向かう。


「それにしても、やっぱりアイリス達は恋仲なんでしょうか?」

「私にはわからないのだけれど……照れていたアイリスは可愛らしかったわね」


 二人を捜す最中、私達の話題になったのはアイリスのことだった。

 火の授業で使ったアイリスの魔法は、火を消すだけじゃなかったみたいで、どうやら私に加護まで与えたようだった。

 学院に入った初めての日に、女王様から与えられた力と同じような感覚が、あの日にも感じられたのだ。

それはイザベラ様も同じだったようで、一体どうやったらあんな魔法になるのかと話したけど、私には想像もつかなかった。


 それに火の魔法を失敗した私に、『おあいこです』と許してくれた優しいアイリス。あの時はルディアス様に先を越されたけど、抱きしめたかったのは私も一緒だった。

 可愛いアイリスに間違いがあってはいけない。

 ルディアス様のことは、無愛想な人だし正直言って恐い。アイリス以外に向ける、あの冷たい視線……思い出しただけでドキドキして背筋が凍るような気がする。


 だけど……どちらかと言えば興味の方が強いと思う。アイリスにだけ優しいルディアス様が、どんなお出かけをするのか見てみたい気持ちがあった。

 でも、一人では恐い。だからこそのエストだった。いざという時に魔力を持っているエストがいると心強いし!

 三階に向かう途中で、ようやく見知った二人の背中を見つけることができた。


「エスト! やっと見つけた」

「よー。ソフィアじゃん。どうした?」


 手を上げて応じてくれるエストは、一つ年上だとは思えないほど、気軽に話せる。赤い瞳はいつも楽しそうに笑っていて、親しみやすい。

 同じ色の髪は邪魔にならないように、いつも自分で切ったり、一つに縛ったりしてるらしい。……もう少し練習したほうがいいんじゃないかと、私は思ってたりする。


「こんにちは、ソフィア様……と、イザベラ様」

「あら? アロイスは私をついでのように扱うのね?」

「そ、そんな。滅相もございません」

「冗談よ」


 くすくす笑うイザベラ様と、真っ青な顔のアロイス様の間には力関係が出来上がってるんじゃないかな、と漠然と思う。

 この一週間で一体何があったんだろう。気になるけど、聞いてはいけないような……聞いたら最後、巻き込まれそうな気がして二人には触れなかった。

 アロイス様は、王子様のような金髪碧眼なのに、勿体無いなとちょっとだけ思う。王子様のような彼も、妖艶な美を持つイザベラ様には敵わないのかもしれない。


 気を取り直して、エストに話しかける。笑顔三割増しくらいだ。


「あのね、アイリスが明日ルディアス様と出かけるんだって。それで、一緒についてきてくれないかなと思って」

「えー? 何で俺が?」

「エストしかいないのよ……」

「見つかったらルディアスに睨まれるぞ?」


 その言葉で一瞬怯んだ。ルディアス様の冷たい目を思い出すと、ぶるっと身体が震えてしまう。

 黙っていると、イザベラ様と話をしていたアロイス様が、助け船を出してくれる。


「ですが、エストも昨日のルディアスの噂話……気になっていたのではないですか?」

「ルディアスがアイリスを誘ったってのはなー。確かに気にはなってたけどよ」

「私もルディアスがしっかりエスコートできるか心配していましたし、ちょうどいいじゃないですか」


 渋々と「まーな」と言うエストの顔を窺う。これならいけるかもしれない。


「ルディアスに話を聞くくらいならいいぜ」

「それなら今日はルディアスに話を聞いて、明日は様子を窺いに行きましょうか。大丈夫そうなら、私達はそこで帰るということで」

「はい! ありがとうございます、アロイス様」


 望みが叶って嬉しくて、ついはしゃいでしまうと、イザベラ様に笑まれてしまった。……うん、すごい美人だ。


「よかったわね、ソフィア。私も一緒に行こうかしら」

「はい……。イザベラ様とソフィア様が行くんですから、エストも行くんですよ?」

「俺もかよー……」


 文句を言いつつも、断らないでくれたエストに感謝した。

 大丈夫、ルディアス様にばれなきゃいいんだから。

 補佐役の二人に改めてお礼を言ってお別れした後、イザベラ様と明日のことを話し合いながら寮に戻った。


 ◇◆◇


 翌日、手を繋いで歩く二人の後を私達は四人で隠れながら追うことになった。


 二人は買い物が終わったようで、女の子向けのお店から出てきた所だった。そのお店は、可愛い小物の品揃えが豊富で、少し値段ははるけれど女生徒からは人気だと評判の店だった。


 きょろきょろとしながら歩くアイリスに、始終にこやかに手を引くルディアス様。

 学院内では兄妹のようにも見える二人なのに、今日はどこから見ても恋人同士にしか見えなかった。


「なんかさ、見つからないようにするのって結構面白いな!」

「これも何かの鍛錬になるかしら。ねえ、アロイス……」

「い、嫌ですよ? イザベラ様、今日は魔法は休みですからね……!」

「こら! 皆さん、静かにして下さい!」

「ソフィアの声もでかいと思うぞー?」


 エストの言葉に、少し大きかったかもしれないと私は口をつぐんだ。

 でも、そんなことはお構いなしでエストとアロイス様は話を続けている。


「しっかし……変わったよなー」

「何がです?」

「あのルディアスがアイリスに合わせてるだろ?」

「まあ……ルディアスがエスコートできるか不安でしたけれど杞憂でしたね」

「そうだよな。ここまで違うと本当に同じやつなのかって思うよな?」

「確かにそうですね。今もずっと笑顔ですし、ルディアスは見目が整ってるだけあって笑うと目を惹きますね……」

「それをアロイスに言われてもな……」


 二人の話を聞きながら、心の中で私も頷く。

 エストの言うとおり、アロイス様は女生徒の憧れだ。学院で仲良くなった女の子達も、素敵だとみんなが口を揃えて言う。

 アロイス様の金の髪は、風で揺れるとキラキラと輝いて、碧い瞳は優しさに満ちている。爽やかな笑顔には思わず溜め息が出るほどだ。

 最近はイザベラ様に付き従っているからか顔色があまり良くないようだけど、その憂いのある表情も素敵だと人気だ。


 だけど……。

 今日のルディアス様は普段の恐い彼を知っている私でさえ、学院内での彼が嘘だと思ってしまうくらい素敵だった。

 それほど、私の知ってるいつものルディアス様とは違う。


 ルディアス様が着ている黒で統一された服は、彼のために(あつら)えたんじゃないかと、錯覚しそうな程似合っている。

それに、優しく穏やかな笑みを浮かべる彼は、すごく格好いい。いつも周りに向ける機嫌の悪そうな顔も、無表情も嘘のようだった。


 その証拠に道行く女の人達が、ルディアス様を振り返って見ている。

きっと、ルディアス様が学院でも今のようだったら……アロイス様と同じか、それ以上に人気になっているだろうと思う。


 アイリスだって、そう……。華奢な身体に、この国では珍しい銀の髪。

アイリスが微笑むと花が咲いたように周りが明るくなる。今日のような服装をすると、大人っぽく見えるし、可憐な女の子だ。

 二人で合わせて着たようなお揃いの黒い服は、街の中で一際目立っている。

 そこには、最初に見た自信がなさそうなアイリスはいなかった。


『アイリスはずるい』


 ――そう……ずるい。私だって魔法が得意なわけじゃないのに。


 何……今の。違う、私はそんなこと思ってない。

 身体の中から出てくるモヤモヤとした何かが、心をぐちゃぐちゃにする。


『アイリスは恵まれている』


 ――そうだ。アイリスは強い魔法だって使えるじゃない。なのに……


 誰からも優秀だと認められるルディアス様に、補佐役として名乗り出られて、女王様に心配されて、イザベラ様もアロイス様も、アイリスはすごいって言ってる。

 珍しい髪の色。華奢な身体。大きな力もなにもかも。


 ――私にはないものを、アイリスはたくさん持ってるじゃない……!



「ルディアス、デレデレだなー」


 エストの声に、はっとして顔を上げた。

 ルディアス様がアイリスの頬に手を添えている。ルディアス様の顔は朱に染まり、瞳には熱がこもっているようだった。


「ルディアスは本当にアイリス様のことが好きなんですね」

「そうだな、この調子だったら大丈夫じゃないか?」


 ――羨ましい。私だって、アイリスみたいになりたかった。


 嘘、違う。そんなこと……思ってない。


『本当に?』


 本当に……。そう思って……な、い?

 自信がなさそうだったアイリスが使った、圧倒的な魔法。室内に銀の花が咲き乱れたあの瞬間、私は敵わないって思った。火の授業だって、私の魔法は簡単に消された。

 私はイザベラ様みたいに魔法が好きなわけじゃない。アイリスみたいにクリスタルの力が強いわけじゃない。

 私には何もない。


『そう。君には何もない』


「大丈夫そうだし、帰ろうぜ」

『おいで、ソフィア』


 頭の中であの人の声が聞こえる。あの人の優しい、心地良い声。

 

 ――いや、違う。この声は……


『何も考えなくていいんですよ、ソフィア。早くおいで』


 その声で次第にエストの声が遠くなり、導かれるように私は意識を手放した。

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