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お出かけって楽しいですね!

 ――すごい! こんなの初めて……!


「可愛いですね! ルディアス様!」


 振り向くと、ルディアス様も楽しそうに笑って頷いてくれた。

 

 ルディアス様に連れてきてもらったのは、小物がたくさん置いてあるお店だった。

 店内は光量が絞られていて少し薄暗い。ほんのり赤みがかかった明かりが、小物を照らしている。

宝石のように輝くガラス細工は、少ない光の下でキラキラと眩く、木彫りには陰影がよりはっきりと感じられて不思議な空間だ。


 あれは何だろう? これは何だろう? と、ついきょろきょろとしてしまう。

 木彫りの動物や、ガラス細工で作られたアクセサリーはどれも可愛い。


 ――あ! これ……ソフィア様とイザベラ様に似合いそう。


 並べられた品物の中に、太陽と月の形を模した二つの髪飾りがあった。太陽の髪飾りは橙色の台座に赤い太陽が、月の髪飾りは青の台座に黄色の月がかたどられていて、どちらもガラス細工で作られているようだった。

 お二人には授業の時や、ルディアス様とお出かけすることになった時に、とてもお世話になった。

 お礼の品にちょうどいいかもしれない。


「気に入ったのか?」

「はい! ソフィア様とイザベラ様にお土産です」

「そうか。……アイリスはいいのか?」

「もちろんです」


 近くにいたお店の人に、「こちらをお願いします」と髪飾りを手渡す。案内されるがままついていくと、机の脇に置いてあった、漆黒のガラス細工に目を奪われた。

 思わず手に取って、明かりで透かしてみる。


 ――ルディアス様の瞳と同じ色。


 銀色の金具で縁取られたブローチは、金具の部分にも可憐な花の意匠が施されている。宵闇を切り取ったようなガラスは、まるでルディアス様の瞳のよう。


 ――でも、お金には限りがあるもの。


 学院に来るときにお母様に頂いたお金はそこまで多くなかった。多分、お母様はお父様に内緒で渡してくれたんだと思う。


 残念だけど、と諦めてブローチを元の場所に戻す。自分の物よりも、今はお二人に感謝の印として渡したい。

 私がブローチを置くのを、お店の人は待っててくれていたようだった。初めてのお買い物で、慌ててお金を払い終えると、後ろからルディアス様に「アイリス」と声をかけられる。


「他に見る物はないか?」

「はい! もう満足しました」

「それなら、俺は所用があるから外で待っていてくれ」


 その言葉に頷いて言われたとおりに外で待っていると、ルディアス様はすぐ外に出てきてくれた。


「すまない。待たせた」

「もういいんですか?」

「ああ。アイリスは疲れてないか?」

「大丈夫です! とても楽しいです」

「そうか。ならば、少し歩こう」


 今度は何処へ連れて行ってくれるのだろう?

 わくわくしながら、ルディアス様に手をひかれて街を歩く。

 学院から少し離れた街には、石畳で舗装された広場があって、そこを囲むようにお店が並んでいる。広場から四方にのびる道にも、左右にお店があるようだった。

 初めて街に来た私には、見る物全てが新鮮で、胸が高鳴った。


 今までは誰かとお出かけなんてしたことがなかった。家にいるときは外に出かけて、他の誰かに迷惑をかけるのが怖かったし、何よりも私が外に出るのをお父様が嫌がった。

 もしかしたら幼い頃に行ったのかもしれなかったけど、記憶には残っていなかった。 


 街にはたくさんの人がいるんだな、と思って見ていると、行き交う人がこちらを振り返って見ているような気がする。

 その視線を追って、私がルディアス様の方を向くと目が合った。

 先程までは、初めて見る街にはしゃいでしまって意識していなかったけど、ルディアス様はとても素敵な人だ。きっと、街の人はルディアス様を見ているんだろうと思う。

 

 ――それに、今日のルディアス様はいつもよりもかっこいい……と思う。


 今日のルディアス様は髪型が学院の時とは違っていた。髪の毛は左耳だけかけられて、右に流している。

 整えられているからか、いつもは隠れ気味の黒い瞳が片目だけはっきりと見えていた。


 服も黒で統一されていて、絵本で出てくる異国の騎士のようでルディアス様に似合っている。

 白い制服姿も王子様のようで素敵だったけど、今日のルディアス様は何だかいつも以上に大人っぽい。


「アイリス? どうした?」

「えっと……ルディアス様の雰囲気がいつもと違うなって思ってました」

「アロイスに服や髪を整えろと言われたんだ。おかしいか?」

「いいえ、とても似合ってると思います!」

「そうか」

「はい。素敵です、ルディアス様」


 私がそう言うとルディアス様は立ち止まってしまった。

 何か気になるお店でもあったのだろうか? そう思ってルディアス様を見ると顔が真っ赤になっていた。


「ルディアス様! お顔が真っ赤です。具合が悪いんですか?」

「問題ない」

「でも……」

「心配するな。……褒められ慣れていないだけだ」


 その言葉でルディアス様が照れていることに気づいて驚いてしまった。

 不貞腐れたようにしているルディアス様が、可愛らしくて思わず笑んでしまう。

 私が笑っていると、ルディアス様の右手が頬に触れる。


「アイリスも綺麗だ」

「あ、ありがとうございます」


 多分、今度は私が真っ赤になっているだろうなと思う。

 ルディアス様の手の上から、熱くなる自分の頬を私もおさえた。

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