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熱いのはどちらの手?

「うーん……やっぱり変じゃないかな?」


 支度を終えた後、鏡の前で自分の服と顔を何度も確認していた。

 いつもよりも大人っぽい服に、昨日ソフィア様に頂いた口紅を塗った自分が映る。

 ほんのり赤く染まった唇に、黒いワンピースは腕の部分がレースになっていて少し透けている。背中に大きなリボンがついていて、リボンの下からふわっと広がっている。学院に来る際に、お母様に少しでも大人っぽく見えるようにと、何着か持たされた物の一つだった。


 ソフィア様が選んでくれた物だけど、やっぱり家で着ていたフリルがたくさんついた服のほうがいいかもしれない。

 もう一度、ソフィア様に教えてもらいに行こうかと悩んだけど、昨日のことを思い出して踏みとどまった。



 昨日の朝、私はイザベラ様の部屋へ伺った。突然の訪問にイザベラ様は嫌な顔一つせず迎え入れてくれた。


「アイリスじゃない。どうかしたのかしら?」

「イザベラ様、こんにちは。突然すみません。実は……」


 ルディアス様に休日を一緒に過ごそうと言われ、どうしたらいいかわからないと説明する私に、イザベラ様は困惑したようだった。


「ごめんなさいね、アイリス。私は男の人にはあまり詳しくなくて……。私には魔法が恋人なの」


 イザベラ様は恥ずかしそうに笑っていた。その笑みも、こちらの顔が熱くなってしまうほど色っぽく素敵だった。

 私がぽーっと見つめていると「もしかしたらソフィアだったら、詳しいのかしら?」と、イザベラ様はソフィア様の部屋まで一緒に行ってくれた。


「こんにちは、アイリス! どうしたの?」


 ソフィア様の部屋へ伺うと笑顔で出迎えてくれた。扉を開けた隙間から見えた部屋には可愛らしい色や小物で溢れている。女王候補の部屋は全て三階にあり、一つ一つの部屋はとても広いけれど、間取りはどうやら皆同じようだった。


「こ、こんにちは。ソフィア様、突然すみません」

「アイリスが明日ルディアス様と二人きりで過ごすんですって」

「え!? 本当なの? アイリス」

「は、はい」



 事情を説明すると、ソフィア様は部屋に戻ってしまった。

もしかしたら忙しかったのかもしれない。

申し訳なくて俯いていたら、扉が勢いよく開いたのが見えた。


「お待たせ! アイリス、これをあげるわ!」

「あ、あの。ソフィア様、これは?」

「これはね、口紅って言って指でつけるものなのよ? アイリスの部屋に行ったらつけてあげるわね!」


 そして、ソフィア様に促されるように自分の部屋へ戻った私は鏡の前で驚いた。


「ソフィア様、すごいです。これって唇が赤く染まるんですね!」

「そうなの! 私は色違いで二つ持ってるから、アイリスにあげる」

「そ、そんな。ソフィア様、頂くことなんてできません……」

「いいのよ、アイリス! 火の授業で迷惑かけちゃったし、そのお詫びって事で受け取って?」

「で、でも……」

「あら、いいじゃない。ソフィアの気持ちをくんであげたら?」

「そうそう! もらってあげて?」

「それに、アイリス……とても素敵よ? 似合ってるじゃない」


 イザベラ様に褒められると、恥ずかしくて照れてしまう。

 ソフィア様に、はいと言って渡された口紅は花の柄が描いてある貝殻に入っていた。


 鏡の前に置いた小さな貝を手に取る。

 ソフィア様はあの後、私が今着ている服を選んで「頑張ってね!」と応援までしてくださった。

 もう一度確認しておこうと鏡の前に立った時、扉を二回叩く音とルディアス様の声が聞こえる。


「アイリス、迎えに来た」

「は、はい。ルディアス様! 今、行きます」


 扉を開けると、私を見てルディアス様が少し驚いたような顔をしている。


 ――やっぱり変だったんだ。


 悲しくて恥ずかしくてどんどん視線が下がってしまう。


「アイリス、顔を見せてくれ」

「でも……」

「わかった」


 何がわかったんだろう?

 そう思っていると急にぐらりと視界が動いた。


 ――ルディアス様の顔が近い……!!


 一瞬何が起きたのかわからなくて焦ってしまったけれど、どうやら横抱きにされたようだった。

 膝と腰の辺りに回された腕や、ルディアス様の眼差しに身体が熱くなる。


「アイリス……」

「あ、あの。恥ずかしいです」

「すまない……アイリスの顔が見たかった。今日の服もよく似合っている。

 ……このまま俺の部屋へ連れて帰りたい」

「へ……部屋ですか?」

「ああ……」


 ルディアス様は「可愛いな……」と呟くと、私の首元に顔を埋める。さらさらとした髪が触れてくすぐったかった。


「ふふ……ルディアス様、くすぐったいです」

「すまない」


 はっとした様子で私をおろすルディアス様が、今度は私に手を差し出してくれる。

 私がルディアス様の手を取ると、甲に口付けをされた。

 

「行こう」

「は、い。ルディアス様……」


 答える声が掠れてしまった。

 ルディアス様に口付けされた手が熱い。心臓も痛いくらいに跳ねている。

繋がれたその手の熱が、私の熱なのか、それともルディアス様の熱なのか……どちらなんだろう。

 隣を歩くルディアス様の顔を窺ってもわからなかった。

今回もありがとうございます!


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