19:超魔法『ぺブルマシンガン』の習得
「ああ~……。カレー! カレーが食べたいぃぃぃ!」
翌朝、オレは完全に『カレーゾンビ』と化していた。
それほどまでに、オレの身体はカレーを欲していたのだ。
「姫ぇぇぇぇ! 怖いですよぉ!」
なぜかヒルデくんがガタガタと怯えている。
「ガァァァ! ガァァァ!」
ペン太もオレの顔を見て、心配そうに鳴いていた。
そんなに今のオレ、おかしいだろうか?
(まあ、カレーゾンビの自覚はあるけどさ……)
「おはようヨッシーちゃん! 今日もお目めが『キラキラ光ってる』ね!」
「ああ、おはよう! メルちゃんは今日も元気だなぁ!」
妙に今朝はお世辞が上手いメル。
オレの目はいつもキュートだぜ?
ん? キラキラ光ってる? 聞き間違いか?
少女漫画じゃあるまいし……。
「ああ、カレー……」
「姫ぇぇぇ……。止めましょうよ、そういうの……」
「ああ、悪いなヒルデ! ついカレー欲しさに口から出ちまったぜ!」
だが、カレーを渇望しているのは事実だ。
そのためには、切実に課金ポイントが欲しい。
「ああ、カレー……」
「姫ぇぇぇぇ……!」
「悪い! また口に出てたか?」
「ガァァァ!!」
その日、オレはふらつく足取りで冒険者ギルドを目指した。
◇◇◇
「本日、バルタザールギルド長は、緊急の用件でお出かけになっております」
「そんなぁ……。姫のことで相談しようと思っていたのに……」
オレのことで相談?
なぜだ?
冒険者ギルドに到着すると、さっそくそんなやり取りが聞こえた。
薬草採取組の子供たちは、既に揃っていていつでも出発できる状態だ。
「緊急って……何かあったんですか?」
「どうやらペルー村に、ゴブリンの大規模な群れが攻めてきたみたいなんです。ギルド長の娘さんも討伐に参加していたのですが、大怪我をなさったようで……」
ゴブリンの大規模な群れ、だと!?
――これって、魔石を大量獲得するチャンスじゃん!
大規模ってことは、100匹から数千匹規模。
(やっふぅぅーっ!!)
千匹なら最低でも50万ポイントは稼げる。
これは狩り尽くさねばならない、超・最重要案件だ!!
だが待て――。
このまま爆走しても城門で止められる可能性がある。
「ヨッシー、出発するぞ~!」
「ああ、すぐ行く!」
まずは薬草採取の列に混ざり、おとなしく都市の外に出る。
そして、準備を終えたら……。
「ふふふ……ウェッヘッヘッヘッヘ!!!」
考えただけで、笑いが止まらなくなった。
◇◇◇
薬草採取地である森の前に到着し、オレはすぐに準備を開始した。
まず取り出したのは、【ストーンバレットのスペルブック】。
【修正の羽ペン:1000p】を購入する。
残り課金ポイント:4800p
これは必要経費だ。
この先、莫大なポイントが手に入ると思えば安いもの。
今のオレには、圧倒的な「強大魔法」が必要なのだ!
「姫、薬草採取はしないんですか?」
「ガァァァ!!」
ヒルデくんとペン太が心配そうに声をかけてくる。
「ああ! 今日はお腹が痛いから中止だぜ!」
堂々と仮病を使い、オレは優々とスペルブックの書き換えに取りかかった。
2人からジト目を向けられるが、な~に構うものか。
今はカレーの方が大切だ。
通常、【ストーンバレット】は石を生成して撃ち出す初級魔法。
メリットは威力の安定性と、土属性特有の弱点を突きやすい点。
デメリットは、準備に時間がかかり、弾道が直線的で、素早い相手に回避されやすいこと。
だが――DTCの仕様には、そのデメリットを根底から覆す手段がある。
それが【修正の羽ペン】を使い、魔法の構成式を書き換えてオリジナル魔法を構築する、最凶のバグ技だ。
まずは、この最弱魔法をどう変化させるかのイメージ。
通常、ストーンバレットの石弾はでかい。
これを、あえて【1cm程度】に極小化する。
これで消費魔力を極限まで抑えたまま、無数の小石に分散できる。
さらに、小石を歪みのない綺麗な【球形】に加工。
空気抵抗を減らし、貫通力と硬度を飛躍的にハネ上げる。
この弾丸を魔法陣の中に【螺旋状】に配置し、超高速回転させ、中央の射出軸にきたものから順に撃ち出す。
これで、超絶的な連射が可能になる。
その名も――。
超魔法『ペブルマシンガン』。
その魔法はオレが前世のDTCにおいて、愛機である魔導鎧操『クロガネ』に付与して使っていた魔法の一つだ。
魔導鎧操とは、魔術師専用のパワードスーツのようなものだ。
メカのような見た目で、多くのユーザーに愛されたいた装備だ。
その装甲は非常に丈夫で、魔威次第でで運動性能が向上するため、魔術師が熟練戦士のように戦うことが出来た。
そのため、チートと呼ばれる装備だった。
もちろんクロガネには、腕に物理的な弾倉が取り付けられており、弾丸をその内部に常時生成するシステムにしていたのだが、生身の人間にはそんな構成はない。
今回は魔法陣の内部に小石を螺旋配置することで、仮想のマガジンに見立てる。
「はぁ……。いつ見てもバグだらけの冗長なコードだぜ。すぐにリファクタリングしよう」
『それ、この世界の歴史的な賢者が定めた、伝統ある魔法回路コードのはずなんですけどね……』
無機質なナビのツッコミを営業スマイルでスルーし、羽ペンを片手に作業に没頭する。
異世界の住人が後生大事に崇めているクソコードも、少し構文を書き直すだけで、威力・発射速度・弾速を限界突破させることができる。
徹底的なリファクタリングにより、最弱魔法は世界を壊す超極悪なオリジナル兵器へと昇華した。
「できたァァァァーッ!!」
その日、オレは【ペブルマシンガン】を習得した。
だが、準備はこれだけでは終わらない。
一気にアイテムを買い漁る。
• 【マナバッテリー:100p】※ホバーボード用
• 【爆裂の術符10個:300p】
• 【エクストラヒールポーション10個:600p】※部位欠損も治す最高峰
• 【身代わりの護符:1500p】※HP1000消費を肩代わり+即死回避
すでにハイヒールポーションは購入しているが、それでは腕や足がブチ切れた時に治療できない。
大戦を前に妥協はナシだ。
残り課金ポイント:2300p
「それじゃあな、ヒルデくん、ペン太! オレは今日中には帰らないかもしれないから、薬草採取が済んだら先に宿に戻っていてくれ! 昼飯と夕飯はこれで適当に!」
準備を終え、ホバーボードに乗り込む。
ヒルデくんに大銀貨、5万カレスを投げ渡した。
「あっちょ!! 姫、いったいどちらに!!」
「ガァァァ!」
慌てて追いかけてくる2人。
「止めないでくれ! 男には、負けられない戦いがあるんだぜ!!」
「姫、女の子じゃないですか!!」
「ガァァァ!!」
必死に食い下がろうとするが、申し訳ない。
これからの激戦、君たちでは足手まといになってしまう。
ホバーボードの速度を全開にし、一気に2人を引き離す。
目指すは、ゴブリンの大規模な群れがいる「ペルー村」の方角。
こうしてオレは、単独でゴブリン討伐へと向かったのだった。
ご覧いただきありがとうございます。
ついに最弱魔法が、とんでもない極悪兵器へと生まれ変わりました。
カレーを求めて暴走するヨッシー。
一体ゴブリンの群れはどうなってしまうのか……。
次回、第20話「ペルー村からの報せ」お楽しみに!




