13:オレ、10連ガチャに挑戦する(後編)
カレー……それは至高の食べ物だ。
数種類もの香辛料をブレンドした、こだわりの料理。
オレはあの前世で食べたカレーの味が忘れられない。
とくに今回狙っている【ヤシの木カレー】は、20種類以上もの香辛料をブレンドした一品だ。
なんとしても、あの【ヤシの木カレー】を引き当てたい。
だが、ガチャの残り挑戦回数はあと5回。
10回までと決めたのは、この異世界を生き抜くために自分で設けた厳しい掟。
なんとしても守らねばならない。
オレは意を決し、6回目の【GO!】ボタンをタップした。
残り課金ポイント:12800p
パパパパ~♪
『宝箱の中身は……【コーヒー20個】でした』
【コーヒー】:《睡眠》のステータス異常を解除する。
チ~ン……
「目が覚めちまうよ! 明朝いただくよこのやろう!」
早くも明朝飲むコーヒーに思いを馳せる。
豊かな香りと味わい、そしてリラックスできる深いコク。
コーヒーは最高だ。
画面に描かれたカップは、某有名企業のインスタントコーヒーの絵柄。
ご丁寧にも砂糖とミルク、小さなプラスチックスプーンがおまけに付く仕様らしい。
「次こそは……!」
オレはじゃんけんのポーズで両手をクロスさせ、念入りにこねくり回す。
「当たれ~! 当たれ~!」
これでオレの運気はアップした……に違いない。
ところが、この先の結果は惨憺たるものだった。
◇◇◇
【7回目】
残り課金ポイント:12500p
『宝箱の中身は……【ロールパン20個】でした』
【ロールパン】:体力を微弱に回復する。
チ~ン……
「ちゃくちゃくと朝ご飯の用意が整っていくよ!」
中はふわっと、生地はしっとりもっちりとした優しい口当たりのパン。
いや、美味そうだけどさ。
【8回目】
残り課金ポイント:12200p
『宝箱の中身は……【コーラ20個】でした』
【コーラ】:魔力を微弱に回復する。
チ~ン……。
「久々のコーラだ! コーラにはポテチだよな!」
強い炭酸による爽快なのどごし。
口いっぱいに広がる濃厚な甘みと、独特のスパイス感。
「けぷっ! コーラは最高だぜ!」
これを飲んでしまうと、やはりポテチが欲しくなる。
次はぜひともポテチを引き当てたい――。
【9回目】
残り課金ポイント:11900p
『宝箱の中身は……【ポテチ20個】でした』
【ポテチ】:体力を微弱に回復する。
「ポテチ出たァァァァーッ!」
この塩加減、サクサクとした心地よい食感! ポテチは美味い!
――ってか、今回の目的はこれじゃねえ!
ヤシの木カレーだ!!
【10回目】
残り課金ポイント:11600p
当たれ、ヤシの木カレー!
これが最後の正直だ!
パパパパ~♪
『宝箱の中身は……【虎猫ブローチF】でした』
【虎猫ブローチF】:怪力を引き出すブローチ。稀に「にゃ〜!」と鳴く。筋力(STR)+100、素早さ(AGL)+30、魔力(MP)+20……。
「ぎゃあァァァァァァァーッ!」
魔術師なら戦士並みの腕力になり、戦士ならさらなる超パワーを得られるチートアクセサリー。
ガチャなら大当たりの、本命中の本命アイテムだ。
だが、まさかこんな時に……最高レアが出ちまうなんて……。
これが最後の挑戦。
もう今日はガチャを回せない。
「カレー……ヤシの木カレーよぉ……なぜ出ねえんだよ」
嬉しいやら悲しいやらで、涙と鼻水が入り混じる。
「うおぉぉぉぉぉ~ん!! おいおいおい!!」
バタンーッ!!
「姫ぇぇぇぇーっ!! 何事ですか!?」
あまりのうるささに、隣室からヒルデくんが乱入してくる始末。
オレの10連ガチャは、なんとも言えない結果に終わった。
悔しさのあまり、オレはペン太を抱いたまま不貞寝するしかなかった。
えぐえぐ。
◇◇◇
「お母さんが夜は静かにしなさいって!!」
翌朝。見知らぬ少女の声で目が覚めた。
部屋に乱入してきたのは、8歳くらいのくりくりお目目の可愛い少女。
オレより頭半分くらい背が高い。
この部屋、鍵がかかっていたはずだが?
「鍵はボクが開けました」
ひょっこり顔を出したヒルデくん。
ちょっとご立腹気味だ。オレに苦情を言ってもらうために手引きしたらしい。
「それはすまなかったな……」
夜の騒音は明確な迷惑行為。
オレは二人に素直に謝罪した。
「オレはヨッシーってんだが……君は誰だい?」
「メルだよ! この宿の娘なの!」
昨日は見かけなかったが、末っ子なのだろうか。
「今から我々は朝食なんだ。悪いがその……」
出ていってくれると助かる。
そう遠回しに伝えたが、メルは首をかしげるばかりで動く気配がない。
幼いから察しが悪いのだろうか。
この宿では朝食が出ないため、各自で用意する必要がある。
オレがガチャで引いた朝食セットを並べようとした、その時。
ぐぅぅぅ~……
メルの小さなお腹が、盛大に鳴り響いた。
「メルの家、貧乏だからちゃんとした朝食はないの……」
それを聞いたオレは、いたたまれなくなってしまった。
この宿が貧乏?
確かにボロボロだが、朝食を抜くほど困窮しているのか。
「……じゃあ、朝食を一緒にどうだ?」
「うん! メルも食べる!」
つい、勢いで誘ってしまった。
勝手に朝食に誘ってしまって、後で女将さんに怒られないだろうか。
まあ、誘ってしまったものは仕方がない。
こうしてオレは、小さなお客さんであるメルを、賑やかな朝食に招待したのだった。
10連ガチャ、ここに完結。
物欲センサーの完全勝利により、狙いのカレーはかすりもしませんでした。
代わりに、まさかのチート級大当たり(虎猫ブローチ)と、完璧な朝食フルセットが完成。
そして夜騒ぎすぎた結果、可愛い乱入者・メルちゃんを朝食に巻き込むことに……。
ガチャの戦利品(ポテチ、コーラ、ロールパン)を前に、どんな朝食タイムが始まるのか?
次回、14話「小さなお客さんと優雅な朝ご飯」。
お楽しみに!。




