12:オレ、10連ガチャに挑戦する(前編)
あれから部屋に戻ったオレは、さっそくガチャに挑戦することにした。
今回の狙いは、本来ハズレであるはずの【ヤシの木カレー】だ。
某企業のキャンペーン限定アイテムだった、固形カレールー。
なぜ、そんなハズレが欲しいのか?
理由はシンプル。
前世で当たり前に食べていたカレーが、無性に恋しくなったからだ。
ほかにも【ストーンバレットのスキルブック】の書き換えという重要案件はある。
だが、今のオレの頭はカレー一色。
今夜の書き換えは無理だ。
タコ焼き、板チョコ、生姜焼きのタレ……。
これまで引いた現代日本の味は、すべて「本物」として現れた。
なら、【ヤシの木カレー】も絶対に本物で出てくるはず。
とはいえ、課金ポイントはオレの生命線だ。
無駄遣いはできない。
そこで、スマホゲームの定番にあやかり、回数は「10回まで」と心に決めた。
◇◇◇
現在、ヒルデくんとペン太は隣の護衛部屋で就寝中。
オレの不毛な物欲に付き合わせるのも心苦しい。
太陽は完全に沈み、部屋はロウソクの火で薄暗い。
これでは出たアイテムがよく見えないので、先ほど買った【カボチャランプ魔石式】を点灯させた。
ゴブリンの魔石代として大銅貨1枚。
少し張ったが、周囲を包んだオレンジ色の光は、まるでオシャレなカフェのよう。
就寝前の空間には最高だ。
……まあ、今は寝るわけにいかないが。
それではまず1回目のガチャに、挑戦するとしよう。
「ガチャ画面――オープン!!」
画面中央に宝箱。
派手な色彩の【GO!】ボタンが出現する。
オレは迷わずタップした。
残り課金ポイント:14300p
緊張感あふれるBGM。
左右に揺れる宝箱。
パカリと開いた瞬間、レインボーの光が飛び出す!
白いシルエットが晴れ、ファンファーレが鳴り響いた。
パパパパ~♪
『宝箱の中身は……【板チョコレート20個】でした』
「……まあ、最初から当たるとは思ってないさ」
見事、ハズレワースト3の板チョコ。
また生活費の足しにするか。
すぐさま2回目!
残り課金ポイント:14000p
『宝箱の中身は……【タコ焼き20個】でした』
チ~ン……
ガチャは甘くない。
だが、狙いは「よく出るハズレ」と評判のヤシの木カレーだ。
10回も回せば必ず出る!
めげずに3回目!
残り課金ポイント:13700p
『宝箱の中身は……【ベビーみかん20個】でした』
【ベビーみかん】:魔力を微弱に回復する。
「うわ、正月の定番!」
これもハズレワースト3の1つ。
さっそく剥いて、久々に口へ放り込む。
「シャク……甘い!」
とろけるジューシーな食感、程よいコクと酸味。
いくらでもいける。
これ、果物屋台で売ったら高値がつくのでは?
ハズレだけど「当たり」と認めよう。
……でも、オレはカレーが食べたいんだ!
気を取り直して4回目!
残り課金ポイント:13400p
『宝箱の中身は……【花火A20個】でした』
【花火A】:手持ちのススキ花火。お祝いにどうぞ。
チ~ン……
「見た目だけのいらねえアイテムじゃねえか!」
戦闘の役にも立たない、滅多に出ない大ハズレがなぜ今くる。
……まあ、いつか遊びで使えるか?
「ガァァァ!!」
「あ、悪いペン太。うるさかったか?」
気づけば、隣で寝ていたはずのペン太がオレの横で鳴いていた。
オレのツッコミのドタバタが騒音になっていたらしい。
「……みかん、食うか?」
「ガァァ! ガァァ!」
差し出すと、ペン太は嬉しそうに食べ始めた。
どうやら目的はこれだったらしい。
よく隣の部屋から匂いを嗅ぎつけたものだ。
癒やされたところで、折り返しの5回目!
残り課金ポイント:13100p
『宝箱の中身は……【緑茶20個】でした』
【緑茶】:500mlペットボトル。魔力を微弱に回復する。
「はぁ……。ちょうど喉が渇いてたし、飲むか」
すっきりした味と、ほのかな甘み。
ガチャのストレスがすうっと軽減していく。
やっぱり緑茶は美味い。
――って、おい!
今回はグルメ回でも飯テロ回でもねえぞ!!
5回挑んで、【ヤシの木カレー】はゼロ。
残りガチャ回数は、あと5回。
オレの無謀な挑戦は、後半戦へと続く――。
残り課金ポイント:13100p
10連ガチャ前半戦。
チョコ、タコ焼き、みかん、緑茶……。
まさかの「こたつみかんセット」が大豊作でした。
大本命のカレーを前に、じわじわと削られていく課金ポイント。
そしてちゃっかりおこぼれを貰っていくペン太。
後半戦、オレの物欲センサーは打ち破れるのか――!?
次回もよろしくお願いいたします!




