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07:ローレッタの査定と商人ギルドの登録

「次はこの黒い板と、熱々の食べ物ね? いいわ。査定してあげる」


 オレが次の商品――『板チョコレート』と『タコ焼き』を差し出す。

 ローレッタは嬉々として査定を始めた。

 その毒見のたびに、お付きのお姉さんの顔がとろけていく。


「―――っん!?」


 チョコレートを口にした瞬間、ローレッタは呼吸を忘れたかのように興奮していた。

 激動の味見を終え、彼女はコホンと取り繕ってオレに向き直る。


「はぁ……またとんでもない物を持ち込んでくれたわね……」


 その手には、板チョコレートが固く握りしめられていた。

 タコ焼きも美味いのだが、調理済みの料理は価値が落ちるらしい。

 冷めたら味が落ちるし、保存が効かないのがネックだ。


「結論から言うけれど……これは《マナニグラ》よ」


 ローレッタの言葉に、周囲の空気が凍りついた。

 【マナニグラ】……一体どれほどの価値なんだ?


「今持っているものを全部出しなさい! 一枚金貨6枚で買い取るわ!」

「残念ながら、オレが持っているのは3枚だけです」


 本当は15枚あるが、全部出す気はない。

 自分でも食べたいし、贈り物にも使いたい。

 一度に大量に売れば暴落するリスクもある。

 小出しにするのが賢明だ。


「賢明な判断ね……。でも、ちょっと残念だわ」


 ローレッタは金貨18枚を差し出しながら、不敵に眉をひそめた。

 こちらのハッタリは完全に見透かされているらしい。

 ちなみに『生姜焼きのタレ』も3つだけ売却。

 こちらは金貨9枚。

 今回の儲けは、合計で金貨27枚(810万カレス)になった。

 この世界の金銭感覚はまだピンとこないが、しばらくお金に困らないことだけは確信できた。


「そのタコ焼きは差し上げますよ」


 一通りの取引を終え、オレはタコ焼きを勧めてみた。


「あら? いいの?」

「儲けさせていただいたので、そのお礼です」


 どうせ5000カレス程度の商品だ。

 ここで恩を売っておくほうが、よほど理にかなっている。

 現に彼女はすでに半分ほど食べている。

 買い取るつもりだったのだろう。


「熱いので気をつけてください。ペン太の水もいかがですか?」

「ガァァァ!」


 オレの合図で、ペン太が目の前に水球を出現させる。


「あら……その使い魔、水の魔法も使えるの? 売る気はあるかしら?」

「いえ、ペン太はちょっと……オレの心のよりどころなので」

「ふふ、その気持ちはわからなくもないわ」


 ローレッタは水球から器用に水を汲み、毒見を終えると、ごくごくと喉を鳴らして飲み干した。

 よほどその水が美味しかったらしい。


「お礼というわけではないけれど、あなたの商人ギルド登録を無料にしてあげるわ」


 ローレッタはオレの返事も待たずに、手続きを始めてしまった。

 まあ、無料なら黙って乗っかるのが得策だ。


「ほら、商人ランクCのギルド証よ」


 彼女は手ずから、オレの首にギルド証を掛けてくれた。

 緑色の石に、異世界語で『C』と刻まれている。

 ……ん? ランクC?


「ちなみに、ランクCってどれくらいの階級なんですか?」


 冒険者ギルドではFランクが最低だった。

 商人ギルドでも、Cが一番下なのだろうか。


「Cランクは下から数えて2番目よ。最高がAランクだから、上から3番目ね」


 どうやら最低ランクを飛び越え、いきなり中堅ランクに大抜擢されたらしい。

 このお嬢様に、そこそこ気に入られたということか。


「また何かあれば、必ずここに持ち込むのよ?」


 ローレッタはひらひらと手を振りながら、受付の奥へと去っていった。

 やはり、ただの受付嬢というのは嘘だったようだ。

 お付きだったお姉さんが、その後、当然のような顔でその席に座った。


「ちなみに、彼女はどこのどなただったんでしょう?」


 オレが尋ねると、受付のお姉さんは口に手を当てて驚いた。

 どうやら彼女を知らないのは、かなりの常識外れらしい。


「あのお嬢様は……商人ギルド長であり、子爵位をお持ちのイブラヒム・サンカン様のご令嬢ですよ」


 お姉さんは少し呆れたように教えてくれた。


「あなた、あのお嬢様に相当気に入られたのですね。そうでなければ、いきなりCランクなんてあり得ませんよ」


 え、やっぱりそうなの?

 帰りがけに、お姉さんが色々と教えてくれた。

 Cランク商人になると、様々な特権があるらしい。

 ギルドの一般カウンターを優先利用できたり、地元の卸売市場への立ち入りが許可されたり。

 卸売市場といえば、競り(セリ)で商品を買い付ける場所だろうか。

 イメージとしては魚の市場が浮かぶ。

 もし新鮮な魚が手に入るなら、ぜひ参加してみたい。

 こうして大金と特権を手に入れたオレは、ホクホク顔で商人ギルドを後にした。

 小腹も空いてきたし、次はこの街の屋台にでも立ち寄ってみるか。


 ご覧いただきありがとうございました。


 チョコとタコ焼きで、まさかの大金(810万カレス)&商人ギルドの中堅ランクをゲット。

 ペン太の有能っぷりも光る一幕でした。

 ローレッタに気に入られ、順調(?)に異世界での足がかりを掴んだ主人公。

 次回は稼いだお金で異世界の屋台を巡ります。

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