05:背が届かない受付カウンター『おいぃ!!』
「冒険者ギルドの受付担当のミルランです」
カウンターへ向かうと、受付嬢が笑顔で自己紹介をしてくれた。
彼女がオレの登録を担当してくれるらしい。
その様子を、ギルド長のバルタザールのおっさんがガハハと笑いながら見ている。
ミルランの引きつった苦笑いが、最高に「うざそう」だった。
(ギルド長、お前は何もしないのかよ……)
「冒険者登録の際、ご希望であれば代筆も行いますが?」
中世ヨーロッパ風のこの世界、確かに識字率は低そうだ。
だが、オレに代筆が必要な理由は別にある。
「どの道カウンターまで背が届かないので、代筆お願いします」
オレの身長は、だいたい1m。
対するカウンターの高さは80cm。
ようやく顔を出せるレベルの幼児に、文字を書くのは物理的に困難だった。
「そちらの護衛の方はどうされますか?」
「あ、ボクは冒険者とかはちょっと……」
ヒルデくんが露骨に弱気な声を出す。
荒事は御免だよと言わんばかりだ。
「おいおい! ご主人さまが冒険者になるんだぞ! お前もしっかりついていけ!」
バルタザールのおっさんが、ヒルデくんの肩をバシバシと豪快に叩く。
「それじゃあ……自分で書きます」
観念したヒルデくんは、渡された登録証にペンを走らせ始めた。
「見かけによらず、随分と古い文字をご存じですね?」
手元を覗き込んだミルランが、意外そうに声を漏らす。
ヒルデくんは、DTCにおける「使い魔」に分類される存在だ。
もしかしたら、古い時代の記憶が文字に現れているのかもしれない。
登録用紙の項目は『名前』『性別』『年齢』『出身地』『職業』『得意な武器・魔法』『使い魔』。
名前はヨッシー。
性別は女。
(前世の癖で「男」と言いそうになったのは秘密だ)
年齢は、ステータス通りに「5歳」と答えた。
「お前さん、本当に5歳だったんだな……」
なぜかおっさんに絶句された。
中身が前世のおっさんのままだから、よほど達観して見えるのだろう。
出身地は記憶にないので空欄。
まさか「女神の塔」とは書けない。
職業は、もちろん『見習い魔術師』だ。
「その若さでもう見習い魔術師とは、優秀ですね」
「さっきのバカでかい腕は、その魔法だったわけか」
感心するミルランさんと、妙に納得するおっさん。
どうやら、5歳での魔術師就職は天才の部類らしい。
「得意な魔法は何ですか?」
「今のところ、土属性です」
(まさか、見習いが使えるはずのない『ゴーレムメイカー』とは言えない)
「では、そう記述しておきますね。……得意な武器は?」
「持ち上げられる杖がなさそうなので、素手でお願いします」
どうせ『ストーンアーム』で殴るのだ。
武器なんていらない。
実質、格闘家だ。
「使い魔は……そちらのペン太さんですね」
「ガァァァ!!」
名前を呼ばれたペン太が、元気よく鳴き声を上げた。
実はヒルデくんも使い魔だが、さすがにそれを書くわけにはいかない。
彼を使い魔と言ったところで、誰が信じるだろうか?
オレは横でカリカリと、登録用紙と格闘するヒルデくんを見た。
「登録は以上です。これがFランクのギルド証になります」
手渡されたのは、異世界語で「F」と刻まれた鉄のプレートだった。
首から下げられる紐付きで、裏面には『ヨッシー』の名がある。
もし死んだ時の、本人確認用でもあるらしい。
物騒だな。
ペン太の首には、従魔登録証としてギルドのマークが刺繍された赤い布が巻かれた。
ちなみに、登録料の合計は10,000カレス。
所持金が90万以上あるオレには端数だが、一般的には結構な大金だ。
「これでお前たちも冒険者の仲間入りだ。おめでとう!」
おっさんが凶悪な笑顔で歓迎してくれる。
ヒルデくんは引きつった笑いを浮かべ、ペン太はやる気満々で雄たけびを上げた。
少しはペン太を見習ってほしいものである。
「Fランクで3ヶ月活動すると、Eランクの昇格試験が受けられます。実戦試験になりますが、冒険者の推薦が必要ですのでお忘れなく」
「その時は俺が直々に相手してやるから、楽しみにしとけ!」
ガハハと笑うおっさんの笑顔が、最高に凶悪でちょっと怖い。
まあ、受けるのがいつになるかは分からないが。
「明朝、Fランクの子供たちが集まって薬草採取に向かいます。参加するなら遅れないでくださいね」
ミルランにそう見送られ、手続きは無事に完了した。
明朝の薬草採取か、寝坊しないようにしないと。
さて、次は商人ギルドにでも向かうか。
そのあと、今夜の宿探しだな。
ご一読いただきありがとうございました。
無事に(?)冒険者登録を終えたヨッシー。
TS幼女ヨッシーの異世界スローライフ(?)は、ここから本格的に始まります。
次回は商人ギルド編、そして初めての宿探しへ。
面白いと思っていただけたら、評価やブクマで応援していただけると励みになります!
それでは、また次話でお会いしましょう。




