02:課金アイテムを購入するぜ!
「さて……まずは何を買うべきか……」
眼前に展開された課金ショップの画面をスワイプする。
この買い物の一つ一つが、オレの『リアルな生き死に』に直結している。
絶対にぬかりは許されない。
──残り課金ポイント:3000p
ゲームの知識から言えば、最高峰の戦力が眠っているのは間違いなく『ガチャ』だ。
だが、ガチャは非情な運任せ。
リスポーン不可の現実を不確定要素に委ねるわけにはいかない。
もし爆死したらその時点で完全なチェックメイトだ。
オレは誘惑を断ち切り、光り輝くガチャ画面をそっと閉じた。
確実性を取るなら、定額のショップ一択。
ラインナップには強力な武器がズラリと並んでいるが、オレのステータスをもう一度見る
。
【筋力(STR):10(年齢補正により減少)】
……悲しいかな、どれ一つとして装備条件を満たしていない。
鉄の剣を持った瞬間に自重で潰れるレベルだ。
「あれ? ……待てよ。これならいけるか?」
画面の隅で見つけた、かつてのエイプリルフール限定ネタ装備──『工事用ヘルム』。
見た目は完全に不審者だが背に腹は代えられない。
一応、候補に入れておく。
「次は……前衛を任せられる使い魔だな」
非力なオレの代わりに戦ってくれる相棒。
これはサバイバルの王道だ。
現在の資金とレベルで雇えそうなのは主に3体。
1体目、【たまごひよこ】。
丸々太って癒やし効果は高そうだが、愛玩用は今はいらん。
2体目、【お札マン】。
一万円札の束に手足が生えたような姿。
戦闘力はミジンコ。
見た目も可愛くないので却下。
3体目、【騎士ヒルデくん】。
12歳の超美形な男の娘騎士。
回復魔法が使えてポニーも呼べる。
性能は大当たり……だがメンタルが壊滅的。
臆病で最初は逃げ回るだけの大器晩成型だ。
一から育てる余裕はない。
「……使い魔はどれも駄目かよ」
思わずため息が漏れる。
この薄暗い塔で一人なのは心細いが、貴重な初期資金をドブに捨てるわけにはいかない。
「次は消費アイテム、いや……『術符』だな」
レベル1のミジンコ幼女でも、使った瞬間に最上位魔法を発動できる魔法の紙。
在庫のラインナップはこうだ。
・花火の術符10個(観賞用。論外)
・断罪の術符15個(雷魔法。単体攻撃)
・業火の術符3個(火魔法。広範囲攻撃)
・流星の術符3個(隕石魔法。広範囲攻撃)
・爆裂の術符10個(爆発魔法。範囲攻撃)
どれも一律300ポイント。
閉鎖空間で広範囲魔法(業火・流星)を使えば自分まで消し炭になる。
単体攻撃(断罪)もいいが、入り口付近のザコは群れで攻めてくることが多い。
となると、小規模な範囲を吹き飛ばせる【爆裂の術符】がベストだ。
ただ、天井が崩落したらオレの命はない。
「ナビ、爆発による崩落の危険性は?」
『女神の塔は高密度の魔素で自己構築されているため、物理的な崩落の危険性は極めて低いです』
「よし、購入一択だ!」
迷わず【爆裂の術符:10個】の購入を確定。
──残り課金ポイント:2700p。
『──ただ、猛烈な余波で岩の破片が飛んでくる危険性はあります』
「そういうことは購入する前に言え!」
『最後まで話を聞かないマスターが悪いのです』
(相変わらず口の減らないナビだ。リアル化して自我でも芽生えたか?)
最悪、破片が直撃しただけでも即死しかねない。
生存率を上げるため、さっきの【工事用ヘルム:300p】を追加購入した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【工事用ヘルム】
・性能:防御力+20 / 要求筋力:5
・説明:圧倒的な軽さゆえ、要求筋力は5と非常に低い。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
──残り課金ポイント:2400p
「あとは万が一の回復手段だな」
ショップにあるのは2つ。
・【ハイヒールポーション】20個:300p(大回復)
・【エクストラヒールポーション】10個:600p(完全回復・欠損再生)
欠損再生は魅力的だが、オレの最大HPはたったの40だ。
ハイヒール1本で余裕でお釣りがくる。
ここはコスパ重視で【ハイヒールポーション20個:300p】をポチった。
──残り課金ポイント:2100p
「次は……移動用の乗り物か」
ビークルコーナーを覗くと、愛用していた快速移動アイテム【ホバーボード(1500p)】があった。
喉から手が出るほど欲しいが、これを買うと残りは600ポイントになってしまう。
消耗品が尽きたときに補充できなくなっては本末転倒だ。
それに、今後のために最低でも『1000ポイント』は絶対に残しておきたい理由があった。
ここはぐっと涙を呑んで見送る。
『──黄色い工事用ヘルムに、地味なワンピース。そして両手には魔法の紙の束……。随分と珍妙な姿になりましたね』
「うるさい! これが今できる最善の装備だ!」
自分の姿が間抜けなのは否定しない。
だが、これで準備は整った。
「よし……! これより、女神の塔からの脱出を開始する!」
隠し部屋の扉に手をかけ、グッと力を込める。
ズズズ……と重い音を立てて扉が開いていく。
こうして、オレの命を懸けた脱出作戦が、静かに幕を開けた。
第2話をお読みいただき、ありがとうございました。
運任せのガチャを避け、徹底的にコスパと生存率を追い求めた結果、最高に珍妙な装備が完成してしまいました。
体力40のひ弱な体、防御力20のヘルム、そして火力だけは過剰な爆裂の術符。
意思を持って喋り始めたナビを相棒に、いよいよ最弱幼女の脱出作戦が始まります。
最初のモンスター相手に、この即席の装備がどう機能するのか――。
次回、ついに隠し部屋の外へ。
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