15:二番目の使い魔、男の娘騎士ヒルデくん登場!
「――《召喚・騎士ヒルデくん》おいでませっ!!」
オレはビシッと指を突き出し、アイテムボックスから彼(?)を現実世界へと引き出した。
すると、無数の光の粒子が集まり、やがて人の形を形作っていく。
光が弾けた後、そこに現れたのは、一人の頼りなげな少年……いや、若き騎士の姿だった。
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【ステータス画面】
名前:ヒルデくん
種族: 人間(使い魔・魔導生命体)
レベル:20 年齢:12歳 性別:?
職業: 見習い騎士
【基本パラメーター】
体力(HP): 432 / 432
魔力(MP): 135 / 135
気力(SP): 162 / 162
筋力(STR): 162
耐久(VIT): 108
敏捷(AGI): 54
器用(DEX): 108
魔威(MAT): 81
幸運(LUK): 108
所持魔法: 【ヒール Lv1】【ポニー召喚 Lv3】
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ふむ、ヒルデくんのパラメーター自体は決して低くはない。
むしろレベル20の使い魔にしては、かなり高水準な数値と言えるだろう。
――が、こいつには数値化されない最大の欠点があった。
それは、壊滅的なまでにメンタル面が弱いこと。
とにかく気弱で、ちょっと何かあるとすぐに怯え、戦意を完全に喪失してしまうのだ。
このヘタレなメンタルを、主であるプレイヤーが愛の教育で少しずつ叩き直していかなければならないという、なんとも手のかかる育成型使い魔なのである。
「あ、あの……ボク、ヒルデ、です。あ、あの、精一杯がんばります……ので……」
おずおずと顔を赤らめ、上目遣いで挨拶をしてくるヒルデくん。
それはもう、見るからになよなよとした頼りない子供の騎士だった。
年齢は表記通り十二歳くらい。
しかし、その容姿は恐ろしいほどに端麗だ。
華奢な体躯に、透き通るような白い肌、サラサラの金髪。
女の子と見間違る程の無理なレベルの美少女。
……っていうか、本当にお前、男なのか?
ステータスの性別の項目が『?』なのが最高に怪しい。
「オレはヨッシーだ。これからはオレがお前のご主人様だ」
オレはそんなヒルデに向けて、威厳を示すために、これ見よがしに腕を組んで自己紹介をしてみせた。
……ちょっと強そうに見せるために、腕なんて組んでいる。
腕が短いせいで、ちょっと微妙だが、ちゃんと腕は組めているさ。
「ねえ、ヨッシーちゃん。次はその、可愛いお兄さん?を……召喚したの?」
「ヨッシー、なんだかまるで悪い『人買い』みたいにゃ……」
「あくどい顔をしてお金を払っていたにょ」
「ひとかい……ってなぁに?」
――人買いちゃうわっ!!!
確かに人は買ったが彼は使い魔なの!
特別なの!
オレはそんな猫娘たちに対し、目をひん剥いて主張した。
「ゴホン! よし、細かいことはさておきだ。さっそくだがヒルデよ! お前の魔法で『ポニー』を召喚してくれ!」
オレがこの状況でわざわざヒルデくんを指名召喚した最大の理由が、このポニーにある。
一般的にポニーといえば、普通の馬より小さくて非力なイメージがあるだろう。
だが、ヒルデくんの召喚するポニーは、少し違うらしい。
【ポニー召喚Lv3】の説明欄には、はっきりと『魔法によって具現化されるこのポニーは、ポニーのわりに少し怪力である』と記載されているのだ。
その「少し」という曖昧な表現が具体的にどれほどのパワーなのかは検証していないが、わざわざ『怪力』と明記されている以上、普通の馬車を引っ張るくらいの活躍は期待できるはず。
「わ、わかりました……っ、姫!」
……ん? 今、こいつ何て言った?
ひ……っ、姫ぇぇぇぇーーーーっ!?
中身おっさんであるオレに対して、その方はダメージが強すぎる。
この肉体が幼女なのは事実だが、これからは折を見て、こいつの『姫呼び』を絶対に矯正させねばと固く誓うオレだった。
「――出でよ! 《ポニー召喚》っ!!」
ヒルデくんが呪文を唱えると、彼の目の前に再び光の粒子が吹き荒れ、そこから白銀の美しい毛並みを持つ小柄な馬――白銀のポニーが出現した。
「ヒヒヒヒヒヒィィィィン!!」
召喚されたポニーは、その小さな体躯に似合わず、勇猛な雄たけびを上げた。
「わあ、見て! 小っちゃくて可愛いお馬さん!」
「きれいな白い毛並みにゃあ!」
「まるでおとぎ話の王子様のお馬さんだよ!」
「おうまさん、おうまさんだぁ~!」
案の定、メルヘンチックなポニーの登場に、猫娘たちは大興奮でパチパチと手を叩いた。
オレはさっそく、このポニーに先ほど召喚した《かぼちゃの馬車》を牽引させるための連結作業に入る。
まあ、ちびっ子オレには物理的に無理な作業ばかりだったので、そのほとんどをヒルデくんにやらせたわけだがな。
「よし、準備完了だ。――進め、ポニーよ!」
オレは猫娘たち(+どさくさに紛れて乗り込んだペン太)をかぼちゃの馬車の中に乗せると、さっそくポニーに発進の号令をかけてみた。
「ブルルルンっ!」
だが、ポニーは不機嫌そうに鼻を鳴らしてそっぽを向くだけで、一歩も前に進もうとしない。
……おい、こいつオレの言うことを聞く気が完全にゼロだな?
「ほら、ポニー、がんばって行って!」
「ヒヒヒンっ!」
ところが、横からヒルデくんが声をかけると、ポニーは途端に嬉しそうに歩き始めた。
――この、面食い馬め!
「やったぁ、進んだよ!」
「お野菜の馬車が動いたにゃ!」
「中もふわふわで、とってもラクチンなにょ!」
「にゃにゃにゃ~!」
車内から歓声が上がる。
これなら、もし移動中に不意の奇襲を受けても《かぼちゃの馬車》の頑丈な外壁が強固なシェルターになってくれるし、何より子供たちを疲れさせずに済む。
オレはというと、馬車の中には入らず、『ホバーボード』に乗って、馬車の斜め前を徐行しながら並走していた。
これは、いつ何時モンスターが襲いかかってきても、オレが即座に迎撃姿勢に移れるようにするためだ。
ヒルデくんはポニーのすぐ横で手綱を握り、おずおずと先導している。
移動体制としては完璧。
……だったのだが、さっそく問題が立ち塞がった。
行く先々の進路に、これでもかと転がっている巨大なモンスターの死骸の数々である。
「薙ぎ払え――ヒルデ!」
「む、無理ですよぅ~姫ぇ……! ボク、あんな大きな死体を動かす力なんてありません……っ」
オレがホバーボードの上からビシッと命じるが、ヒルデくんは半べそをかいて首を横に振る。
――ヘタレ使い魔め!
仕方がない。
本当は猫娘たちを無駄に怖がらせまいと思って封印していた、あの魔法をここで解禁せざるを得まい。
まずは彼女たちがパニックにならないよう、あらかじめ注意を促しておくか。
「あ~……みんな、今から魔法で右腕を大きくするけど、決して怖い魔法じゃないから、絶対に驚かないように」
「またヨッシーちゃんの不思議な魔法?」
「腕が大きくなる……? 一体どんな魔法にゃ?」
「どれくらい大きくなるにょ?」
「みてみた~い!」
「ガァァァ!」
馬車の窓から、猫娘たちが鈴なりになって興味津々でこちらを覗き込んできた。
「あ~……そうだな。多分、あそこに見える『山』くらいには巨大化する予定だ」
オレはフッと不敵な笑みを浮かべ、少し冗談を交えて彼女たちの期待感を煽ってやる。
オレが小さな指で指し示したのは、遥か彼方に霞んで見える広大な山脈だ。
「嘘だぁ~!」
「絶対そんなの嘘にゃあ!」
「さすがに信じられないにょ……」
「あのお山くらい大きくなるの?」
「ガガァ……?(絶対に嘘だろの目)」
よし、掴みはバッチリだ。
一人信じていそうな子はいるが大丈夫。
「――《ストーンアーム》、起動!!」
オレが短く呪文を唱えた瞬間、岩や小石が猛烈な勢いでオレの右腕へと集まり、組み上がっていく。
そしてオレの右腕に、巨大で太い石の腕が組み上がった。
「やっぱりお山は嘘だった~!」
「でもでも、魔法自体はすごいにゃあ!」
「大きな腕なのは間違いないにょ!」
「おてて大きい!」
「ガァァァ!」
ふう、あらかじめハードルを上げておいたお陰で、怖がられるどころか、むしろ「凄い凄い!」と大絶賛の嵐で済んだ。作戦大成功だな。
――ただ、馬車の外にいる唯一の身内を除いては。
「ひっ、ひぃぃぃぃ……っ! 姫の右腕がゴツゴツしてて、すっごく怖いですぅぅぅーーーっ!!!(涙目)」
お前が怖がんな――!!
「そりゃあぁぁぁーーーーっ!!!」
ドドドォォォーーン!! ドカァァンッ!!
オレはストーンアームを全力で振り回し、進路を塞いでいたワイバーンやオークの巨大な死骸を、次々と左右へと豪快に放り投げていった。
圧倒的なパワーで一瞬にして切り開かれていく即席のロード。
「さあ、道は開いたぞ! 進め、ヒルデ!」
「は、はは、はいぃぃぃ、姫ェェー!」
ヒルデくんは涙目になりながらも、ポニーを先導して歩き出した。
よし、進行状況はすこぶる上々。
このまま安全な街道まで一気に進み、猫娘たちに村まで案内してもらうとしよう!
ご覧いただきありがとうございます!
今回は新しい使い魔「ヒルデくん」と、彼が召喚する「白銀のポニー」が登場し、一気にファンタジーらしい(?)移動風景になりました。
猫娘たちが「王子様の馬だ!」とはしゃぐ姿は微笑ましいですが、そのポニーがまさかの「面食い」で、ヨッシーの命令を無視してヒルデくんにしか従わないという力関係にはクスッとさせられます。
また、進路を塞ぐ巨大なモンスターの死骸を『ストーンアーム』で文字通りゴリ押しで薙ぎ払っていくヨッシーのパワーは、やはり圧倒的ですね。
完全に主従のパワーバランスが逆転しているヨッシーとヒルデくんの掛け合いは、書いていてとても楽しいコンビです。
次回、いよいよ一行は女神の塔のエリアを抜け出し、次の目的地へと向かいます。
少しずつ世界が広がっていくヨッシーの異世界サバイバル、次回も応援よろしくお願いいたします!




