同じ校庭の下で
第7話
同じ校庭の下で
夏休みが終わり、ブチャの学校に子どもたちの声が戻ってきた。
朝の空気には、まだ夏のぬくもりが残っていた。
けれど、白樺の葉を揺らす風には、ほんの少しだけ秋の気配が混じり始めている。
校庭の土は乾いていた。
子どもたちが走るたび、靴の下から薄い砂ぼこりが舞い上がる。校舎のそばに立つ白樺の木々は、強い日差しを遮る大きな木陰を作り、その下では発表の順番を待つ子どもたちが、友達と話したり、自分の作品を何度も確かめたりしていた。
遠くから鳥の鳴き声が聞こえる。
窓を開け放った教室からは、机や椅子を動かす音が響いていた。
その日、学校では合同発表会が行われることになっていた。
夏休みに取り組んだ工作。
描いた絵。
集めた植物や石の標本。
観察日記。
歌。
踊り。
楽器の演奏。
子どもたちは、それぞれが夏のあいだに積み重ねてきた成果を持ち寄り、学年やクラスを越えて見せ合う。
教室の壁には色とりどりの絵が並べられ、廊下には粘土細工や木工品が置かれていた。
校庭の端には簡単な舞台が作られている。
楽器を演奏する子どもたちは、その前で順番を待っていた。
踊りを披露する子どもたちは、衣装の裾や髪飾りを何度も直している。
発表を楽しみにしている子もいれば、緊張で落ち着かない子もいた。
オレクサンドル・ペトレンコは、校舎一階の広い教室に用意された机の前に立っていた。
机の上には、小さなラジオが置かれている。
木製の箱。
正面につけられた二つのつまみ。
横から伸びた細いアンテナ。
小さなスピーカー。
見た目は、市場や店で売られている製品のように整ってはいなかった。
箱の角にはわずかな隙間がある。
つまみの片方は、ほんの少し斜めに取り付けられていた。
裏側を見れば、父ミハイロと何度もやり直した跡が残っている。
それでも、オレクサンドルにとっては大切な作品だった。
最初に作ったラジオをもとに、自分なりの改良を加えていた。
アンテナを少し長くする。
線の位置を変える。
接続部分を見直す。
電池を入れる場所も、以前より取り外しやすいよう工夫した。
遠くの放送を、少しでもはっきり受け取りたい。
雑音を減らしたい。
父に教えてもらいながら、何度も失敗した。
一度は、線をつなぐ位置を間違え、スイッチを入れても何も聞こえなかった。
別の日には、雑音ばかりが大きくなり、人の声がほとんど聞き取れなかった。
オレクサンドルは、そのたびにラジオを机へ置き、じっと中を見つめた。
どこが間違っているのか。
なぜ音が届かないのか。
父が言っていた。
機械は言葉を話さない。
けれど、動かないことにも理由がある。
音が出ないことにも、何かの原因がある。
よく見て、よく考えれば、機械は手を通して教えてくれる。
オレクサンドルは、線を一本ずつ確かめた。
部品の向きを見直した。
緩んでいるところを締め、締めすぎたところは少し戻した。
完成したラジオから初めて声が流れた時、彼は家中を走り回って喜んだ。
そのラジオを、今日は学校へ持ってきていた。
「本当に自分で作ったの?」
机の前に集まっていた少年の一人が、信じられないような顔で尋ねた。
「お父さんにも手伝ってもらったよ」
オレクサンドルは答えた。
「でも、前のよりたくさん自分でやった」
「ちゃんと聞こえるの?」
「聞こえるよ」
オレクサンドルはラジオのつまみへ手を伸ばした。
「少し静かにして」
周囲の子どもたちが口を閉じる。
つまみを回す。
かちり。
小さなスピーカーから、ざざっという雑音が流れた。
「音がした」
「雑音じゃない?」
「今、放送を探してるんだ」
オレクサンドルはもう一つのつまみを、ゆっくり回した。
雑音が強くなる。
弱くなる。
短く音楽が聞こえたかと思うと、すぐに消える。
横にいた子が眉をひそめた。
「壊れてるんじゃない?」
「壊れてない」
オレクサンドルは落ち着いて答えた。
「電波を合わせてるんだ」
さらに少し回す。
ざざっ。
ぴーっという高い音。
そして、その奥から人の声が現れた。
遠くの放送局から届いたニュースだった。
多少の雑音は混じっている。
それでも、話している内容は十分に聞き取れる。
集まっていた子どもたちは一斉に顔を近づけた。
「すごい」
「本当に聞こえる」
「この中に人がいるの?」
オレクサンドルは、以前の自分と同じ質問をされたことがおかしくなり、少し笑った。
「入ってないよ」
「じゃあ、どこから聞こえるの?」
「遠くの放送局から電波が来るんだ。このアンテナが受け取って、ラジオの中で音にする」
「電波って見える?」
「見えない」
「じゃあ、どうしてあるって分かるの?」
オレクサンドルは少し考えた。
「見えなくても、声が届いてるから」
質問した子どもは、まだよく分からないという顔をしていた。
オレクサンドルも、すべてを説明できるほど理解しているわけではない。
それでも、父から教わったことと、自分が作りながら感じたことを、できるだけ自分の言葉で伝えようとした。
「アンテナを前より長くしたんだ」
オレクサンドルは箱の横から伸びた細い金属を指した。
「それで、前のラジオより遠くの放送を拾えるようになった」
「長ければ長いほどいいの?」
「たぶん、長すぎても駄目だと思う」
「どうして?」
「まだ分からない」
分からないことを、知っているふりはしなかった。
父ミハイロも、分からない時には一緒に調べると言っていた。
「でも、これくらいだとよく聞こえた」
オレクサンドルは少し得意げに言った。
「夜に試したら、前は聞こえなかった放送も入ったんだ」
その時だった。
集まった子どもたちの後ろから、明るくよく通る声が聞こえた。
「ねえ」
オレクサンドルは顔を上げた。
「あなた、あの時の子でしょ?」
子どもたちが道を開ける。
そこに立っていたのは、一人の少女だった。
髪には白いリボンが結ばれていた。
明るい瞳。
少し弾むような話し方。
机の上のラジオを見つめる顔には、好奇心がはっきりと表れている。
オレーナ・シェフチェンコだった。
オレクサンドルは一瞬、誰だろうという顔をした。
見たことがある。
けれど、すぐには思い出せない。
オレーナはラジオの横へ立つと、少年の顔をのぞき込んだ。
「あのコンテストで、工業部門の優秀賞を取ったでしょう?」
オレクサンドルは、彼女の白いリボンを見た。
その瞬間、記憶がつながった。
会場の舞台。
明るい照明。
白鳥のように腕を広げて踊る少女。
途中で少しふらつきながらも、最後まで踊り切った姿。
「あ」
オレクサンドルが声を上げた。
「君も文化部門で優秀賞だったよね」
オレーナの顔がぱっと明るくなった。
「覚えてたの?」
「白いリボンを見て思い出した」
「バレエと歌で出たの」
「白鳥のやつ?」
「そう」
「見てたよ。少しだけ」
「どうだった?」
オレーナは答えを待つように身を乗り出した。
オレクサンドルは真面目に記憶をたどった。
「くるくるしてた」
オレーナの笑顔が止まった。
「くるくるだけじゃないもん」
「でも、回ってた」
「ちゃんと白鳥だったもん」
オレーナは頬をふくらませた。
周囲の子どもたちが、二人のやり取りを聞いて笑い始める。
オレクサンドルは、少女をからかおうとしたわけではなかった。
見たままを答えただけだった。
「でも、ちょっと転びそうだった」
「転ばなかったからいいの」
オレーナはきっぱりと言った。
「最後までちゃんと踊ったの」
オレクサンドルは少し考え、真面目な顔でうなずいた。
「それはすごい」
オレーナは、思っていた返事と違ったのか、わずかに目を丸くした。
「僕のラジオも、途中で音が切れそうだったけど、切れなかった」
「ラジオも転びそうだったの?」
「ラジオは転ばないよ」
「じゃあ、どういうこと?」
「配線が少し緩んでたんだ。音が小さくなったけど、最後まで聞こえた」
オレーナは一瞬きょとんとした。
それから声を上げて笑った。
「じゃあ、同じだね」
「同じ?」
「転ばなかった白鳥と、切れなかったラジオ」
オレクサンドルは、少女の言葉を頭の中で考えた。
白鳥。
ラジオ。
まったく違うものに思える。
けれど、どちらも途中で失敗しそうになりながら、最後まで続けた。
「なんか変だけど」
オレクサンドルの口元にも笑みが浮かんだ。
「同じかも」
二人は、そこで初めて一緒に笑った。
ほんの少し前まで、互いに名前すら知らなかった。
コンテストの会場で、離れた場所から姿を見ただけだった。
夏祭りの広場でも、互いの存在に気づかないまますれ違っていた。
けれど今、同じ机の前で、同じことをおかしいと思って笑っている。
それは、二人のあいだに初めて生まれた、小さな共通の時間だった。
*
周囲にいた子どもたちは、やがて別の展示へ移っていった。
教室の反対側では、木で作った小さな船を水へ浮かべる実演が始まっていた。
廊下からは、先生が次の発表者を呼ぶ声が聞こえる。
それでもオレーナは、ラジオの前から動かなかった。
机の上へ少し身をかがめる。
アンテナを見る。
つまみを見る。
箱の側面を見る。
「これ、本当に自分で作ったの?」
「うん」
「全部?」
「お父さんにも教えてもらった。でも、前よりたくさん自分でやった」
「箱も?」
「箱はお父さんと一緒に作った」
「この棒は?」
「アンテナ」
「さっき、電波を受け取るって言ってたやつ?」
「そう」
オレーナは、細いアンテナの先へ顔を近づけた。
「ここに声が飛んでくるの?」
「たぶん」
「見えないのに?」
「見えないけど来る」
オレーナは不思議そうに窓の外を見た。
青い空。
白樺の葉。
飛んでいく鳥。
その空のどこかを、たくさんの声が行き交っている。
「歌も飛ぶ?」
「ラジオで流せば届くよ」
「遠くまで?」
「放送局が送ったら」
「別の街にも?」
「たぶん」
「別の国にも?」
オレクサンドルは少し迷った。
「もっと大きなアンテナなら届くかもしれない」
オレーナの目が輝いた。
「じゃあ、私が歌ったら、遠くの人にも聞こえる?」
「放送すれば」
「すごい」
オレーナは、ラジオの中に未知の世界を見つけたようだった。
彼女にとって歌は、家族のいる部屋や、近所の集まり、小さな舞台で届けるものだった。
けれど機械を使えば、目の前にいない人へも声を届けられる。
会ったことのない人にも。
遠い街の人にも。
窓の外の、ずっと向こうにいる誰かにも。
「中を見せて」
オレーナが言った。
「中?」
「どうなってるのか見たい」
「壊さない?」
「壊さないもん」
「触らない?」
「勝手には触らない」
オレクサンドルは少し考えた。
このラジオは発表会に出す大切な作品だった。
無理に蓋を開ければ、線が外れるかもしれない。
それでも、オレーナの目は本気だった。
ただ珍しいから見たいのではない。
仕組みを知りたいと思っている。
「じゃあ、見るだけ」
「うん」
オレクサンドルはラジオの電源を切った。
背面へ回り、固定しているネジを慎重に外す。
一本目。
二本目。
外したネジは、机の上へそのまま置かず、小さな皿へ入れる。
オレーナは、その動きをじっと見ていた。
「どうしてお皿に入れるの?」
「なくさないように」
「小さいから?」
「うん。落ちたら探すのが大変だから」
「歌の楽譜も、なくしたら大変」
「楽譜はネジより大きいでしょ」
「でも、ナタリヤお母さんはよく探してる」
オレクサンドルは少し笑った。
最後のネジを外し、背面の蓋をゆっくり開く。
中には、線や小さな部品が詰まっていた。
赤。
青。
黒。
白。
細い線が基板へつながり、基板にはさまざまな形の部品が取り付けられている。
オレーナは息をのんだ。
「いっぱいある」
「ここが電池」
オレクサンドルは一つずつ指し示した。
「ここから電気が流れる」
「この赤い線?」
「赤いのも使うけど、全部つながってる」
「この小さい棒は?」
「抵抗」
「何をするの?」
「電気が流れすぎないようにする」
「流れすぎたらどうなるの?」
「部品が壊れることがある」
「じゃあ、この小さいのが守ってるの?」
オレクサンドルは少し考えた。
「そうかも」
「小さいのに、すごいね」
「機械の中では、目立たない部品も大事なんだ」
それは、父ミハイロから教えられた言葉だった。
ネジ一本にも役割がある。
細い線にも意味がある。
一つでも正しくつながっていなければ、音は出ない。
オレクサンドルは、さらに奥を指した。
「ここで電波を受け取って、こっちの部品を通って、最後にこのスピーカーから音が出る」
オレーナは小さなスピーカーをのぞき込んだ。
「ここから人の声が出るの?」
「うん」
「すごい」
「この線をちゃんとつながないと、何も聞こえない」
オレーナは基板の上を走る線を見つめた。
赤い線と青い線。
それぞれ違う場所から伸び、やがて同じ機械の中で一つの音を作っている。
「歌みたい」
「歌?」
「うん」
オレーナは、頭の中にあるものを説明しようとした。
「ピアノと声が合わないと、きれいに聞こえないでしょう」
「でも、ピアノがなくても歌えるよ」
「歌えるけど、ピアノと一緒の時は、ちゃんと音を聞かないと駄目なの」
「どうして?」
「自分だけ違う音を歌ったら、変になるから」
「機械も同じかも」
オレクサンドルは、ラジオの中を見ながら言った。
「線を違うところにつないだら、音が出ない」
「音が外れるのと似てる」
「じゃあ、機械も音楽みたいなのかな」
オレーナは少し首をかしげた。
「たぶん」
「じゃあ、音楽も機械みたい?」
「それは違うと思う」
「どうして?」
オレクサンドルは真剣だった。
機械と音楽が似ているなら、逆も同じではないのか。
オレーナは答えを探した。
「だって音楽は、心が動く感じだから」
「機械も動くよ」
「そうじゃなくて」
「じゃあ、どういうこと?」
オレーナは胸の前へ手を置いた。
言葉だけでは足りないと思ったのか、両手をふわりと広げる。
「歌ったり、音楽を聞いたりすると、胸の中がふわってなるの」
「ふわって?」
「うん」
「どうやって?」
「分からない」
「痛いの?」
「痛くない」
「くすぐったい?」
「それとも違う」
「じゃあ、何?」
オレーナは困った顔をした。
「だから、ふわってなるの」
オレクサンドルには、ますます分からなかった。
父の工具やラジオの部品なら、形がある。
電池から線へ電気が流れ、スピーカーから音が出る。
原因と結果を順番に追うことができる。
しかし、オレーナが話す「胸の中がふわっとなる」という感覚には、線も部品も見当たらない。
「ふわってなる機械は、まだ作ったことない」
オレクサンドルは言った。
オレーナは吹き出した。
「そんな機械あるの?」
「分からない」
「作れる?」
「分からない。でも、考えてみる」
「本当に?」
「うん」
オレクサンドルの表情は真剣だった。
オレーナは笑いながらも、その答えを面白いと思った。
普通なら、そんな機械は作れないと笑うところかもしれない。
けれどオレクサンドルは、作れるかどうかを考え始める。
分からないことを、すぐに無理だと決めつけない。
それが、オレーナには不思議で、少し楽しかった。
「できたら、最初に私に見せて」
「いいよ」
「歌わなくても、ふわってなる?」
「それは作ってから考える」
「じゃあ、早く作って」
「難しいから、すぐには無理」
「ラジオより難しい?」
「たぶん、ずっと難しい」
二人はまた笑った。
*
発表会は進んでいた。
校庭の簡易舞台では、低学年の子どもたちが歌を披露している。
教室の窓から、明るい歌声が風に乗って入ってきた。
その声を聞いたオレーナは、自然に耳を傾けた。
足先で小さく拍子を取る。
オレクサンドルは、ラジオの蓋を元へ戻しながら、その様子を見ていた。
「歌うの?」
「あとで」
「発表する?」
「うん。歌と踊り」
「また白鳥?」
「今日は違う歌」
「くるくるする?」
「少しは回るけど」
「転ばない?」
オレーナは再び頬をふくらませた。
「転ばない」
「前も転ばなかったもんね」
「そうだよ」
オレクサンドルはネジを締めた。
最後の一本を締め終え、ラジオを軽く揺らして異常がないか確かめる。
オレーナは、その慎重な手つきを見ていた。
「壊れるのが怖い?」
「怖いというより、発表の途中で音が出なくなったら困る」
「私も、歌の途中で声が出なくなったら困る」
「そんなことあるの?」
「緊張したら、声が小さくなることがある」
「君でも緊張するの?」
オレクサンドルは少し意外そうだった。
コンテストの舞台で見たオレーナは、堂々と踊り、歌っていた。
「するよ」
「でも、みんなの前で歌える」
「怖いけど、歌いたいから」
「怖くても?」
「うん」
「僕はラジオを見せるのは平気だけど、みんなの前で歌うのは嫌だな」
「歌えばいいのに」
「歌えない」
「声は出るでしょう?」
「出るけど、きれいじゃない」
「きれいじゃなくても歌えるよ」
「君みたいには歌えない」
オレーナは少し考えた。
「じゃあ、ラジオを作りながら歌えば?」
「どうして?」
「好きなものをしてたら、怖くないかもしれない」
「はんだごてを持ちながら歌うのは危ないよ」
「じゃあ、ネジを締めながら」
「手元が狂う」
オレーナは笑った。
「機械って大変ね」
「歌も大変でしょ」
「楽しいよ」
「機械も楽しい」
二人は同時に答えた。
少しの沈黙。
そして、また同時に笑った。
*
しばらく話したあと、二人はあることに気づいた。
最初に気づいたのはオレーナだった。
「あれ?」
「なに?」
「私たち、ずっと話してるけど」
「うん」
「名前を言ってない」
オレクサンドルは目を瞬いた。
「本当だ」
「コンテストの表彰で呼ばれてたけど、全部覚えてない」
「僕も」
オレーナは姿勢を正した。
小さな舞台へ立つ時のように、少し胸を張る。
「私はオレーナ」
それから、ゆっくりと名字まで続けた。
「オレーナ・シェフチェンコ」
「オレーナ」
オレクサンドルは、確かめるように名前を口にした。
明るく、やわらかい響きだった。
「僕はオレクサンドル。オレクサンドル・ペトレンコ」
「オレクサンドル」
オレーナも同じように繰り返した。
「長い名前だね」
「君の名前より長い」
「みんな、なんて呼ぶの?」
「家ではサーシャ」
「サーシャ?」
「うん」
「オレクサンドルなのに?」
「そういう愛称なんだ」
「じゃあ、私もサーシャって呼んでいい?」
オレクサンドルは少し考えた。
家族や親しい人に呼ばれている名前だった。
まだ会ったばかりの少女に呼ばれることが、少しくすぐったく感じられた。
「いいよ」
「サーシャ」
オレーナはすぐに呼んでみた。
「なに?」
「呼んでみただけ」
「じゃあ、僕は?」
「オレーナでいいよ」
「愛称はないの?」
「家でもオレーナ」
「じゃあ、オレーナ」
「うん」
二人は、互いの名前をもう一度呼んだ。
名前を知る前と、知ったあと。
目の前にいる相手は同じはずなのに、少しだけ近くなったように感じられた。
コンテストで見た白鳥の少女ではない。
目の前にいるのは、オレーナ。
優秀賞を取ったラジオの少年ではない。
目の前にいるのは、サーシャ。
名前を呼べることは、小さなことだった。
けれど二人にとっては、互いの世界へ初めて足を踏み入れるための扉のようなものだった。
*
「家はどの辺?」
オレーナが尋ねた。
「白樺通りの近く」
「白樺通り?」
「古いパン屋があるでしょ」
「丸いパンがたくさん並んでるところ?」
「そう。あの店の角を曲がったところ」
「知ってる」
オレーナは嬉しそうに声を上げた。
「ナタリヤお母さんと、よくパンを買いに行く」
「僕も行くよ」
「会ったことないね」
「時間が違うのかも」
「うちは市場の近く」
「どの辺?」
「赤い屋根の家が並んでる通り。角に大きな木がある」
「分かるかも」
「冬になると、その木に雪がいっぱい積もるの」
「近いね」
「うん」
オレーナは、少し不思議そうに言った。
「こんなに近くに住んでるのに、今までちゃんと話したことなかったね」
オレクサンドルはうなずいた。
「夏祭りで見た気がする」
「本当?」
「たくさん灯りがあるところにいた?」
「いたよ。踊ったり歌ったりした」
「じゃあ、見たかも」
オレーナも記憶をたどる。
夏祭りの広場。
色とりどりの飾り。
屋台。
音楽。
大人たちの笑い声。
灯りを見上げている少年がいたような気がする。
「私も、あなたを見たかも」
「どこで?」
「灯りばっかり見てた子」
オレクサンドルは否定しなかった。
「たくさんあったから」
「普通は屋台を見るよ」
「照明の線が気になった」
「お菓子より?」
「うん」
「変なの」
「君は、くるくるしてた子」
「だから、くるくるだけじゃないってば」
オレーナはオレクサンドルの腕を軽くたたいた。
オレクサンドルは笑いながら一歩下がる。
「でも、すぐ分かった」
「白いリボンで?」
「それもあるけど、よく動くから」
「サーシャだって、機械の話になると急にいっぱいしゃべる」
「いつもしゃべってるよ」
「さっきまで友達に説明してた時より、私に中を見せた時のほうがいっぱいしゃべってた」
オレクサンドルは少し言葉に詰まった。
自覚はなかった。
けれど、オレーナが何度も質問してくれたことが嬉しかったのかもしれない。
機械を知らないから退屈するのではなく、分からないことを知ろうとしてくれる。
「君がいっぱい聞いたからだよ」
「だって面白かったもん」
「歌の話も面白かった」
オレーナは一瞬、驚いた顔をした。
「ふわってなる話?」
「まだよく分からないけど」
「今度、歌を聞いたら分かるかも」
「本当に?」
「たぶん」
「じゃあ聞く」
「ちゃんと聞いてね」
「機械を直しながらでもいい?」
「駄目。私を見て聞いて」
「見る必要ある?」
「踊りもあるから」
「またくるくるする?」
「サーシャ」
オレーナが少し低い声で名前を呼んだ。
オレクサンドルは笑った。
「分かった。ちゃんと見る」
*
校庭から先生の声が響いた。
「次は、歌と踊りの発表です。準備する子は舞台の横へ集まってください」
オレーナが振り返る。
「私の番だ」
「もう?」
「うん」
さっきまで楽しそうに話していた顔に、わずかな緊張が浮かんだ。
無意識に白いリボンへ触れる。
衣装の裾を引っ張る。
オレクサンドルは、その変化に気づいた。
「緊張してる?」
「少しだけ」
「声が小さくなる?」
「ならないようにする」
「途中で転びそうになったら?」
「転ばない」
「でも、もし転んだら?」
オレーナは少し考えた。
家で何度も転んだ。
くるりと回ってソファへ倒れたこともある。
練習中に足が絡まり、泣いたこともある。
それでも、また音楽をかけてもらい、立ち上がって踊った。
オレクサンドルは、特別な意味を込めたわけではなく言った。
「転んでも、立てばいいんでしょ」
オレーナは目を丸くした。
それは、自分が家で何度も言った言葉だった。
失敗しても。
ふらついても。
転んでも。
立ち上がれば、もう一度踊れる。
オレクサンドルは、その言葉を聞いたことなどない。
ただ自然に口にしただけだった。
けれどオレーナには、舞台へ向かう直前に必要な言葉のように感じられた。
「うん」
オレーナは少し照れたように笑った。
「転んでも、立てばいい」
「ラジオも音が切れたら、またつなぐから」
「やっぱり同じだね」
「白鳥とラジオ?」
「うん」
先生がもう一度名前を呼んだ。
「行かなきゃ」
「頑張って」
「見ててね」
「うん」
「ラジオばっかり見ないでね」
「分かった」
「本当に?」
「たぶん」
「そこは本当って言って」
それは、父ミハイロや母カテリーナがよく自分に言う言葉だった。
オレクサンドルは少し笑った。
「本当に見る」
「約束ね」
オレーナは校庭の舞台へ向かって走り出した。
途中で先生から「走らないで」と注意され、慌てて歩き直す。
その後ろ姿を見ながら、オレクサンドルは机の上のラジオへ目を落とした。
アンテナ。
つまみ。
箱。
いつもなら、少しの時間でも接続を確かめたくなる。
けれど今は、ラジオの電源を切ったまま、校庭へ向かった。
*
簡易舞台の前には、多くの子どもたちと保護者が集まっていた。
白樺の葉が風に揺れ、その隙間から日差しが舞台へ落ちている。
オレーナは数人の子どもたちと並び、舞台の端で出番を待っていた。
顔には緊張が残っている。
それでも、客席の後ろにオレクサンドルの姿を見つけると、小さく手を振った。
オレクサンドルも手を上げる。
伴奏が始まった。
最初は、子どもたち全員で歌う明るい曲だった。
オレーナは深く息を吸い、声を出した。
家で歌う時より少し硬い。
けれど、二つ目の言葉を歌う頃には、いつもの透明な響きが戻っていた。
声が風へ乗る。
校庭の端まで伸びていく。
オレクサンドルは、初めてオレーナの歌を最初から聞いた。
コンテストでは、ラジオの調整に気を取られ、踊りの一部しか見ていなかった。
夏祭りでは、彼女の近くを通ったかもしれないが、声を意識して聞いたわけではない。
歌は目に見えない。
けれど、ラジオから聞こえる遠くの声とは違う。
すぐそこにいる少女から生まれ、空気を震わせ、自分のところへ届いてくる。
線もない。
アンテナもない。
それでも、確かに届く。
オレクサンドルは、オレーナが話していたことを思い出した。
胸の中が、ふわっとなる。
まだ完全には分からなかった。
けれど、少しだけ分かったような気がした。
歌声が高く伸びた瞬間、胸の奥がわずかに動いた。
機械の中で部品が動くのとは違う。
説明書には書かれていない。
手で触れることもできない。
それでも、何かが確かにあった。
「これが、ふわってなるのかな」
オレクサンドルは小さくつぶやいた。
歌が終わり、次は踊りが始まった。
オレーナは両手を広げた。
足を踏み出す。
音楽に合わせて体を回す。
コンテストの時より、動きが少しだけ滑らかになっていた。
一度、足元が危うくなる。
オレクサンドルは思わず息を止めた。
けれどオレーナは、すぐに姿勢を戻した。
最後まで転ばない。
音楽の終わりに合わせ、両腕を広げて止まる。
拍手が起きた。
オレクサンドルも大きく手を叩いた。
オレーナは客席の中から少年を探した。
目が合う。
オレクサンドルが、転ばなかったというように大きくうなずく。
オレーナは笑った。
*
発表を終えたオレーナは、舞台を降りるとすぐにオレクサンドルのもとへ向かった。
「見てた?」
「見てた」
「本当に?」
「最初から最後まで」
「どうだった?」
オレクサンドルは真剣に考えた。
くるくるしていたと言えば、また怒られる。
けれど上手だったというだけでは、何か足りない気がする。
「声が、遠くまで届いてた」
オレーナは少し意外そうな顔をした。
「遠くまで?」
「ラジオみたいに」
「また機械と同じにするの?」
「でも、ラジオよりきれいだった」
オレーナは目を瞬いた。
「雑音がなかったから」
「それ、褒めてる?」
「褒めてる」
「本当に?」
「うん」
オレーナは少し笑った。
「胸の中、ふわってなった?」
オレクサンドルはすぐには答えなかった。
自分の胸へ手を当てる。
「少しだけ」
「本当?」
「たぶん」
「また、たぶんって言った」
「初めてだから、まだ分からない」
オレーナは満足そうにうなずいた。
「じゃあ、もっと歌ったら分かるね」
「毎日?」
「毎日でもいいよ」
「ラジオを作る時間がなくなる」
「じゃあ、ラジオを作ってる横で歌う」
「集中できないかも」
「さっきは、機械を直しながら聞くって言ったのに」
「言ったけど、本当に歌われると困るかもしれない」
「じゃあ、今度試そう」
オレクサンドルは断り切れずにうなずいた。
「分かった」
「約束ね」
「うん」
*
午後の発表会が終わりに近づく頃、校庭の空は少しずつ淡い色へ変わり始めていた。
日差しの強さが弱まり、白樺の影が長く伸びる。
子どもたちは作品を片づけ、保護者とともに帰る準備を始めていた。
オレクサンドルはラジオを両手で抱えていた。
オレーナは白いリボンを外し、手首へ巻いている。
二人は校門へ向かって並んで歩いた。
「家、途中まで同じ方向だね」
オレーナが言った。
「古いパン屋のところまで」
「一緒に帰る?」
「いいよ」
ほんの短い道だった。
けれど、二人が初めて並んで歩く道だった。
校庭を出る。
石畳の道へ入る。
夏の終わりの空気が、街の中を流れていた。
「ラジオ、重くない?」
「少し」
「持とうか?」
「落としたら困る」
「落とさないもん」
「踊って回ったら落とすかも」
「歩きながら回らないよ」
「本当?」
「サーシャまで言うの?」
二人は笑った。
「今度、家でラジオを聞かせて」
オレーナが言った。
「いいよ」
「私の歌も聞いて」
「今日聞いた」
「家では違う歌も歌うの」
「白鳥がパンを食べる歌?」
オレーナは立ち止まった。
「どうして知ってるの?」
「知らないよ」
「私、本当にそういう歌を歌ったことある」
「本当?」
「白鳥がお腹すいたから、パンを食べる歌」
「変な歌」
「サーシャのふわっとする機械より変じゃないもん」
「まだ作ってないから、変かどうか分からない」
「できたら見せて」
「いつできるか分からないよ」
「大きくなってからでもいい」
オレクサンドルは少し考えた。
「覚えてたら」
「忘れないで」
「オレーナも忘れない?」
「忘れない」
二人は、子どもらしい確かさで約束した。
何年後のことかも分からない。
本当に作れるものかも分からない。
それでも今は、互いが忘れないと言えば、それだけで十分だった。
やがて古いパン屋の角へ着いた。
香ばしいパンの匂いが通りへ流れている。
「僕はこっち」
オレクサンドルが右の道を指した。
「私はまっすぐ」
オレーナは少し名残惜しそうに立っていた。
「また学校で話せるね」
「うん」
「ラジオ持ってくる?」
「毎日は持ってこないよ。重いから」
「じゃあ、何を持ってくる?」
「何も持ってこなくても話せるでしょ」
オレーナは、少し驚いたあとで笑った。
「そうだね」
「君も歌わなくても話せる」
「歌っても話せるよ」
「ずっと歌ってたら、話が分からない」
「じゃあ、半分歌って、半分話す」
「それはもっと分からない」
二人はまた笑った。
「また明日、サーシャ」
「また明日、オレーナ」
二人は別々の道へ歩き出した。
数歩進んでから、オレーナが振り返る。
「サーシャ!」
オレクサンドルも振り返った。
「なに?」
「今日はラジオ見せてくれて、ありがとう」
「歌、聞かせてくれてありがとう」
オレーナは手を振った。
オレクサンドルも、ラジオを片腕で抱え直して手を振る。
そして今度こそ、それぞれの家へ帰っていった。
*
ペトレンコ家へ帰ると、ミハイロとカテリーナが発表会の様子を尋ねた。
「ラジオはちゃんと鳴ったか?」
ミハイロが真っ先に聞いた。
「鳴ったよ」
「途中で切れなかった?」
「少し雑音はあったけど、大丈夫だった」
「質問された?」
「いっぱいされた」
「答えられた?」
「分からないことは、分からないって言った」
ミハイロは満足そうにうなずいた。
「それでいい」
カテリーナは息子の顔を見た。
「何か楽しいこともあったの?」
「どうして?」
「いつもより嬉しそうだから」
オレクサンドルは少し考えた。
「歌う子と話した」
「歌う子?」
「オレーナっていう子」
「どんな話をしたの?」
「ラジオと歌は似てるかもしれないって」
カテリーナは目を瞬いた。
「ずいぶん難しい話をしたのね」
「それから、胸の中がふわっとなる機械を作れるかって」
ミハイロの手が止まった。
「何だ、それは」
「歌を聞くと、胸の中がふわっとなるんだって」
「サーシャはなったの?」
カテリーナが尋ねる。
「少しだけ」
両親は顔を見合わせた。
ミハイロは笑いをこらえるように口元を緩めた。
「それは機械で作るものじゃないかもしれないな」
「じゃあ、何?」
「もう少し大きくなれば分かるかもしれない」
「パパも分からないの?」
「分かっていても、説明するのは難しい」
オレクサンドルは納得していない顔だった。
「じゃあ、自分で考える」
「ああ。考えてみろ」
*
同じ頃。
シェフチェンコ家では、ヴィクトルとナタリヤがオレーナの話を聞いていた。
「発表はうまくいったの?」
ナタリヤが髪のリボンをほどきながら尋ねた。
「うん。少しふらっとしたけど、転ばなかった」
「最後までよく踊れたわね」
「サーシャも見てた」
「サーシャ?」
ヴィクトルが聞き返した。
「ラジオを作った男の子」
「あのコンテストで優秀賞を取った子?」
「そう。オレクサンドル・ペトレンコ」
「今日、初めて話したの?」
「うん」
「どんな子だった?」
オレーナは少し考えた。
「機械の話をすると、いっぱいしゃべる子」
ヴィクトルが笑った。
「オレーナが歌の話をする時と同じだな」
「でも、歌のことはよく分からないみたい」
「それは仕方ないわ」
ナタリヤは微笑んだ。
「オレーナも機械のことは知らなかったでしょう」
「でも、ラジオの中を見せてもらったの」
「壊さなかった?」
「壊してないもん」
「何を話したの?」
「ラジオも歌みたいかもしれないって。それから、胸の中がふわっとなる機械を作ってってお願いした」
ヴィクトルが眉を上げた。
「そんな機械を?」
「サーシャは考えてみるって言った」
「真面目な子なのね」
ナタリヤは、娘の表情を見つめた。
オレーナは楽しそうだった。
舞台で拍手を受けたことだけではない。
自分とはまったく違うものが好きな子どもと出会い、その世界をのぞき込んだことが嬉しかったのだ。
「また話したい?」
ナタリヤが尋ねた。
「うん」
「歌を聞いてもらいたい?」
「今日、ちゃんと見ててくれたの」
「そう」
「声が遠くまで届いてたって言ってくれた」
オレーナは少し誇らしそうだった。
「ラジオよりきれいだったって」
「それは素敵な褒め方ね」
ヴィクトルが笑う。
「少し変だけど」
「サーシャらしいの」
オレーナは、もう長い付き合いの友達を語るような口調で言った。
けれど二人が言葉を交わしたのは、まだ今日が初めてだった。
*
夜。
ブチャの街に家々の明かりが灯った。
ペトレンコ家の窓辺では、オレクサンドルのラジオが静かに音楽を流していた。
少年は自分の小さな机へ座り、紙に線や丸を書いていた。
何を描いているのか、まだ本人にもよく分かっていない。
ラジオ。
スピーカー。
豆電球。
その間をつなぐ線。
胸のような形。
そして、その中に小さな音符。
「ふわってなる機械」
オレクサンドルは小さくつぶやいた。
本当に作れるとは思っていない。
けれど、考えてみると約束した。
分からないからこそ、考えてみたかった。
同じ頃。
シェフチェンコ家では、オレーナが母のピアノに合わせて歌っていた。
発表会で歌った曲。
けれど、今度は家族だけへ向けた声だった。
歌いながら、時々オレクサンドルのラジオを思い出した。
色とりどりの線。
小さな部品。
すべてが正しくつながることで生まれる音。
自分の歌も、声だけではできていない。
息。
言葉。
音程。
伴奏。
聞いてくれる人。
それらがつながって、初めて誰かの胸へ届くのかもしれない。
幼い二人は、それぞれの家で、今日出会った相手の世界を考えていた。
光をつなぐ少年。
歌って踊る少女。
二人のあいだに生まれたものは、まだ恋ではなかった。
友情と呼ぶにも、始まったばかりだった。
けれど互いの名前を知った。
互いの好きなものを知った。
また話したいと思った。
それだけで、昨日までとは少し違う世界になっていた。
ブチャの夜空には、雲の切れ間から星が見えていた。
同じ街。
同じ学校。
同じ空の下。
二人は別々の家で眠りにつく。
明日になれば、また校庭で会う。
今度は作品がなくても。
ラジオを持っていなくても。
白いリボンをつけていなくても。
互いの名前を呼べる。
世界はまだ、やさしく見えていた。
白樺の葉を揺らす風も。
校庭に残る夏の匂いも。
遠くから届く歌声も。
小さなラジオから聞こえる音楽も。
すべてが二人の未来を祝福しているようだった。
やがて、この街の空を恐ろしい音が覆う日が来る。
家々の明かりが消え、歌が途切れ、人々が離れ離れになる日が来る。
けれど、それはまだ遠い未来だった。
今のオレクサンドルとオレーナにあるのは、小さな出会いと、明日への約束だけだった。
転んでも、立てばいい。
音が途切れても、もう一度つなげばいい。
二人が初めて言葉を交わしたこの日、その二つの思いは、まだ本人たちも知らないまま、同じ場所で結びついていた。
同じ校庭の下で。
青い空の下で。
白樺の葉が揺れる、穏やかな午後の中で。
次回予告
黒海沿岸で不穏な動きがで始める.ロシアがクリミアに侵攻する前の事前準備とも取れる行動を起こす.ウクライナはNATOとEU加盟に向けた動きを見せていて、ロシアはそれを阻止したい思惑が見え隠れする. 一方でオレクサンドルは、両親と一緒に買い物に出掛けて、オレーナとオレーナ家族と会う.そして近くの喫茶店でランチを一緒に楽しむことに.そして、オレクサンドルに、オレーナが今度遊びにウチに来てねと話す.




