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光は息をしている  作者: リンダ


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44/60

もう一度、劇場へ

第44話


「もう一度、劇場へ」


 復興途中の小さな劇場に、明かりが戻った。


 オレクサンドルが調整した照明が、傷だらけの舞台をやわらかく照らす。


 客席には、まだ修理の跡が残っている。

 壁には新しい塗装と古い傷が混じっている。

 けれど、人々は戻ってきた。


 その再開の日。


 ソフィーアは、配信企画としてディズニー映画『アナと雪の女王』の名曲、「Let It Go ~ありのままで~」を歌った。


 歌詞は載せない。

 けれど、その歌に込めた思いは、誰の胸にも届いた。


 自分を偽らないこと。

 恐れに閉じ込められないこと。

 傷ついた過去を抱えながら、それでも前へ進むこと。


 ソフィーアの声は、まだ少女の透明さを残していた。

 けれど、そこには戦争を越えてきた家族の記憶があった。


 配信を見た人々は、次々にコメントを寄せた。


「この歌が、ウクライナの空にこんなふうに響くなんて」

「ありのままで、という言葉がこんなに重く聞こえたのは初めて」

「ソフィーアの声は、傷ついた街を少しずつ溶かしていくみたいだ」


 オレーナは舞台袖で涙を拭いた。


「この子、もう自分の歌にしてる」


 オレクサンドルは照明卓の前で、小さくうなずいた。


「うん。もう、誰かの真似じゃない」


 ソフィーアは歌い終えると、深くお辞儀をした。


 劇場に拍手が戻った。


 戦争で閉じられていた場所に、もう一度、音と光と人の呼吸が戻ってきた。


⸻


次回予告


 ソフィーアの歌声はさらに注目を集める。


 だが、オレーナは娘に伝える。


 有名になることより大切なのは、なぜ歌うのかを忘れないこと。


 そしてオレクサンドルは、劇場再開の明かりを見つめながら、ようやく自分の手が戻ってきた意味を受け止め始める。


 次回、

 第45話

 「ありのままの声」


 歌は飾るものではない。

 本当の自分を、誰かに届けるものだ。

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