68話 武装強化
「来たか」
大柄な男――戦闘用具店の店主が優斗に気づき、こっちに来いと手招きをする。反対側の手には、優斗の付けているエレクトリックバングルと見た目はほとんど変わらない物が握られていた。
「これが完成品だ。ちょっと付けてみろ」
店主から完成品を手渡される。未完成品を右腕から外して付け替えてみるが、特に何かが変わった感じはしない。多少だが、軽くなったようには思える。
「……未完成品とは、どんな変化が?」
「そうだな。試しに、俺と手合わせでもしようか」
優斗が戸惑う様子を見て、店主は笑う。
「冗談だ。性能のテストなら、そこら中にいい獲物が居るからな」
辺りを指差しながら、店主は言う。補給班を囲うように戦闘員が居るが、その隙間からは相当な数のイーターが居る。
「性能の変化は、大きく分けて三つだな」
店主は指を三本立て、優斗に突きつける。一度指を戻したかと思うと、一本目の指を立てながら説明を始めた。
「一つ目は、力の効率化だ。少ないエネルギーで戦えるようにしなけりゃ、長期戦は辛いからな。お前のエネルギー循環でも、大技を使えば必ず隙ができる。基本的には、それのカバーが目的だ」
確かに、大技の後には大きな隙ができてしまう。少しエネルギーを残しておくだけで隙をカバー出来るならば、今までより圧倒的に戦いやすく、大技を出し惜しみせずにすむだろう。
店主は二本目の指を立てながら、説明の続きをする。
「二つ目は、性質の変化だ。今まではそのまま雷を実体化させていたが、完成品だとエネルギーを吸収、変換してから剣を形成する。その分、今までより応用が利くようになるだろう」
使い勝手が良くなるということだろうか。こればかりは、実践で試さなければわからない。
店主は三本目の指を立てながら、最後の説明に入る。
「三つ目は、遠隔操作だ。今までのように剣を出すだけでなく、広い範囲に性質の変化を施した雷を発生させられる。能力の壁に縛られなくなるってことだな」
遠隔操作か。そうなると、雷爆のような技以外にも遠距離技を使えるということだ。利便性は抜群だろう。
「この三つだ。どうだ?」
店主が問いかける。今までより圧倒的に戦いやすくなっており、良い点しか見当たらないくらいだ。むしろ悪い点を探す方が難しいだろう。
店主は満足そうに頷き、優斗に手渡す。「お代は?」と問うが、店主は即座に「要らん」とだけ返した。
優斗は店主にお礼を言い、戦闘班に戻る。
戦闘班では、サラディンが指示を出して人々の救出にあたっていた。慌ただしく動く戦闘員たちの間をくぐり抜け、サラディンと合流する。
「サラディン、状況は?」
「かなりまずいね。イーターが実体化したらしくてね、彼らの姿が人々の視界に入っているから、混乱は大きい」
「そうか……」
戦う力を持っているデッドガーディアンズですら、恐怖を感じるような相手だ。力を持たない一般人に対して、どれだけの恐怖を与えるかは計り知れない。
「同時に、僕たちの姿も可視化されているみたいだ」
そうなると、会話も可能ということだろうか。そんな暇はないかもしれないが、親友や幼なじみと久しぶりに会話してみたいと思った。
「それと、優斗君も救出に向かってほしいんだ。人手が足りないから、行ってくれると助かるんだけど」
「了解」
サラディンに返事をして、周囲の生き残りを探しに向かう。




