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死後生活―アフターデッド・ライフ―  作者: 黒肯倫理教団
第六章

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69話 合流

 進めば進むほど、赤色が景色を侵食していく。あまりの惨状に、言葉が出なかった。

 恐ろしいのは、少し前まで感じていた気持ち悪さが消えたこと。今はその方がいいのかもしれないが、人として、この景色を見て何も感じないのはあってはならない。慣れてはいけない光景なのだ。

 先ほどまでは、優斗と同様に救出に当たっていたものがちらほらと居たが、今は自分以外に人が居る気配がない。少し、遠くまで来過ぎただろうか。

 歩みを止めて、ナビを確認する。足音が消えたせいか、辺りが静寂に包まれた。

 レーダーには、少し離れたところに仲間の反応が多数あった。自分を挟んで反対側には、大小の差はあれど、赤い点が多数ある。戦って負けるような相手ではないだろう。

 優斗は右手首を見る。店主から受け取った腕輪――エレクトリックバングルは、見た目は変わらないが以前より圧倒的に性能を高めている。

 使い勝手を試したいという衝動に駆られ、優斗は走り出す。

 数秒と経たずに最高速に達し、体そのものが雷になったかのような錯覚に囚われる。事実、今の優斗の速さは音速とまではいかずとも、そこらへんの戦闘機よりは数段速いだろう。

 敵の中心に到達すると同時に、雷爆を生成する。以前までの雷爆は、ただ雷が弾けるだけ。しかし、エレクトリックバングルの性質変化によって、雷爆と言う名前に相応しい性能を発揮する。

 時計の盤のように十二個の雷爆を生成し、それぞれの方角へ放つ。雷とは思えない破裂音を上げて、雷爆は弾けた。

 口元が緩むのがわかる。あまりの威力に驚き、同時に喜びを感じたのだ。初心に還ったと言うべきか、戦いを楽しんでいるようだ。

 次は、剣。エレクトリックバングルに雷を流し込むと、それに反応して輝く。頭の中でイメージを浮かべ、そのイメージをエレクトリックバングルに投影する。

 轟音と共に、電磁剣が生成された。刃は小刻みに振動しており、それが切れ味を増加させる。

 「はっ!」

 軽く息を吐き、ステップを踏む。敵の動きが遅く感じるのは、自分が今、ハイになっているからだろうか。

 敵の分厚い装甲も、素早い動きも、長いリーチも、今の優斗には障害には成り得ない。エレクトリックバングルの強化だけで、これほどまでに戦いやすくなるものなのか。

 いつの間にか敵はいなくなり、救出班もこの辺りまで進行してきた。

 優斗の戦いを見ていたらしく、サラディンが賞賛する。

 「すごい戦いだったね。あんなに速く動ける人なんて、優斗君以外には見たことがないよ」

 「そうか?」

 若干照れつつも、平然を装って返答する。

 「とりあえず、近くにある生存反応は全て回った。あともう一つ。何か、他とは違う反応があるみたいなんだ」

 「反応?」

 不思議に思い、ナビを開いて確認する。赤でもなく、青でもなく、黄色でもない。白い点がこちらに接近してきている。

 速い。少なくとも、車等の乗り物ではない。それよりも明らかに速い速度で、白い点は接近してくる。

 白い点の主が視認できる距離に来たとき、優斗はその正体に驚愕した。生身の人間ではあり得ないはずの速さで、知っている人物が現れたからだ。

 「浩介……?」

 白い点の主は、自分の親友と言えるほどの中である、赤城浩介だった。




 「浩介……?」

 浩介は優斗の姿を視認すると、更に速さを増して接近してきた。

 「優斗!」

 浩介は優斗の名前を呼ぶ。百メートルほど手前に来て、ようやく減速を始め、優斗の目の前で止まった。

 「やっと見つけた。探すのに苦労したんだぞ?」

 「浩介。お前、今のは何だ?」

 久しぶりの再開だというのに、最初の言葉が疑問符付きだったことに肩を落としつつ、浩介はそれに答える。

 「俺にも、力があるってことだ」

 その通りなのだが、足りない。なぜ死んでもいない浩介が、能力を持っているのだろうか。

 その疑問を優斗が口に出す前に、浩介は答える。

 「確かに、死んでから能力を手に入れた優斗には不思議かもしれないな。俺は、異世界の人間だ」

 その言葉に固まる。予想を大きく外れた返答に、言葉が出ない。

 「不思議なことじゃないだろ? 死後の世界があるんだ、異世界の存在だって十分に考えられるはずだ」

 「確かにそうなんだけどな……」

 なぜ、浩介はこの世界に来たのか。物語のように召喚されるには、あまりにも平和すぎた。イーターの存在が知られてないのだから、異世界から人を召喚しようとする人間はいないだろう。

 「なぜこの世界に来たか、そう思ってるだろ?」

 浩介は軽く肩を落としつつ、優斗の疑問に答える。

 「俺は、異世界から追放された」

 「追放された?」

 予想とは真逆だった。召喚されたのではなく、追放された。理由は、すぐに浩介が教えてくれた。

 「俺は、生まれつき時間と空間の操作魔法が使えた。性能こそ高くはないが、世界の理に反するような能力だった。そのせいで、俺は追放された」

 時間と空間の操作。それがどれだけ恐ろしいものかは、いろいろなゲームで見てきた。過去に戻れれば、いくらでもやり直せる。未来に行けば、結果を事前に知ることが出来る。

 浩介曰く、そこまで便利なものではないらしい。

 時間操作にしろ、他の人間と自分の時間の流れを変え、加速、減速する程度の効果だ。自分の速さを上げて宿題を片付ける位にしか使い道はないらしい。

 空間操作にしろ、小距離を移動する程度の効果だ。空間そのものには干渉できず、何かしらの変化を与えることもできない。

 二つを併わせれば、多少なりと戦闘では戦いやすいらしい。だが、世界を追放されるほどの能力かと聞かれれば、断定は難しい。

 「あの世界の人間は、少しイレギュラーなだけで恐れる。すでに、俺だけでなく、数十人くらいの人間が異世界に追放されている」

 浩介の世界はどうなっているのか。多少珍しいというだけで、人を追放して良い訳がない。

 優斗はその事実に納得していないが、浩介はそのまま話を進める。

 「まあ、それはそれとして。優斗、お前に渡したいものがある」

 浩介は拳を突き出す。グーの形に握られた手の中からは、何かが光っている。

 優斗は手を伸ばし、それを受けとる。それに実体はなく、何かが体の中に入ったような感覚だけが残った。

 「これは?」

 「いずれわかる。今は、気にしなくていい」

 そう言われ、とりあえず頷く。

 浩介は優斗に背中を見せたかと思うと、遠くの方を指差した。

 「あっちの方で敵と交戦した。まだ転移の痕が残っているだろうから、急げば黒幕のもとへ行けるはずだ」

 「敵の正体は何だ?」

 「この世界の創造主だとさ」

 その言葉を聞いて絶句する。危惧していた事象が現実となったのだから、驚かないわけがない。

 「勝ち目はあるのか?」

 「さあな」

 浩介は素っ気なく返事する。相手が創造主だとするならば、実力は計り知れない。

 「サラディン。主力のメンバーを集めてくれ」

 「わかった」

 サラディンがナビを開き、剛力に通信を入れる。数回ほど会話を交わし、サラディンは通信を切った。




 数分後。優斗を始め、剛力、サラディン、奏、アイカ、京也、鈴佳の7人が集まった。

 「創造主とは、また大きな相手だね」

 剛力が言う。

 藤堂と比べ物にならないくらい、創造主は強いだろう。こちらを管理しているならば、能力なども知られているはずだ。

 浩介は一歩前に出ると、皆に説明を始める。

 「俺が知っている限りでは、敵は主に三人。創造主と、配下二人だ。イーターもいるかもしれない。逆に言えば、それだけだ。創造主の所に辿り着くには苦はないだろう」

 浩介は言う。

 「何か、質問はあるか?」

 理解したらしく、質問はない。

 「優斗」

 そう言いながら、浩介が背中を押す。

 優斗は深呼吸をしてから、一言。

 「行くぞ!」

 皆が走り出す。創造主に勝てるか、不安は大きいが、立ち止まってはいられない。

 戦いは、今回で最後だろう。


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