62話 開戦
タイトル通りです。
本部。剛力の召集で、優斗たちは会議室に集まっていた。
「皆、揃ったようだね」
優斗をはじめ、奏とアイカ、サラディンといったメンバーだ。京也は未だに本部に帰って来ていない。
「本日、藤堂を倒しに行く」
剛力が告げる。正面から乗り込み、敵を殲滅しながら進んでいく。最終的には藤堂一人に対して五人で戦い、誰も死なないように出来る限り安全を確保しながら戦う。
藤堂以外の敵に関しては、小倉を隊長として上級戦闘員が戦う。その他の戦闘員は物資の運搬や救護に当たらせるため、かなり大規模な戦いになるだろう。それこそ、優斗たちがこの世界に来る前に起きた戦争のように。
前回剛力が調査隊を率いて行ったとき、転送用の機材を設置し、光学迷彩処置をやってきた。短時間で多くの人間や物資を転送できるため、すぐに戦闘体勢を展開できるだろう。
「前衛は私と優斗君。後衛はサラディンとアイカ君。サラディン。君はアイカ君を守るように警戒しつつ皆に指示を出してくれ。奏君は中衛として、オールマイティーに動いてくれ」
「「「「了解!」」」」
転送室へ向かう。すでに戦闘員たちの用意は整っているらしい。優斗たちが到着すると、皆が道を開けた。
これから戦争をする。そう聞かされたためか、体を震わせる者や、何も考えまいと目を閉じる者。神に祈りを捧げる者もいれば、諦めたように項垂れる者もいた。
転送陣の前に立つと、剛力は後ろに振り返る。戦闘員たちを見回してから口を開いた。
「私たちはこれより、敵の本拠地へ乗り込む。この戦いには多くの死が伴うだろう。しかし、私たちには守るべき故郷がある。各自、尽力してくれ!」
剛力の言葉を聞き、皆が歓声を上げる。これほどまで皆を率いることが出来るのは、剛力の器がそれだけ大きいということだろう。彼が前に立つだけで皆の士気が上がるのだ。デッドガーディアンズに加わる人間が多いのも頷ける。
「行くぞ!」
剛力が転送陣に飛び込んでいく。それに続くように優斗たちも後を追う。視界が白い光に包まれた。その光が消えると同時に、一面が黒で埋め尽くされた。
「これは……」
辺り一面が黒かった。自分や仲間たちの服や肌の色が場違いかと思えるほどに黒一色で統一されていた。
隣では剛力が状況を把握している。
「……どうやら、敵の罠に掛かってしまったようだ」
剛力は続ける。
「敵の本拠地には間違いないが、私たちは少しばかり厄介な場所に飛ばされたようだ」
「どういうことですか?」
奏が訊ねる。剛力は多少考えるそぶりを見せてから、奏の質問に答える。
「ここは能力無効化空間だ。範囲はそう広くはない。急いで突破しなければならないね」
能力無効化空間。名前の通り、能力が使えない空間だ。そんな状態で敵に襲われてしまったら、成す術がないだろう。
剛力は前方を見据える。優斗もそれにならうが、視認できる距離には何もいない。
何かと思い、ナビのレーダーを起動する。表示範囲を最大まで広げると、画面は赤色で染まっていた。
「急ぐんだ! 能力無効化空間には敵の出入りのするための脱出口が必ずあるはずだ!」
サラディンが声を上げる。能力が使えない以上、逃げ回りながら出口を探すしかない。
敵に囲まれてしまっているため、下手に動くことは出来ない。まだこちらには気付いていないが、もし気付かれた絶望的だ。
皆が一斉に走り出す。出口も分からないまま、ただひたすらに走り続ける。イーターに気付かれつつも、間一髪でかわしていく。
次第に、仲間たちの悲鳴が聞こえてきた。相当な勢いで数が減っている。皆がバラバラに拡散しながら脱出口を探していると、一人の戦闘員が声を上げる。
「こっちに出口があるぞ!」
皆が声の方向に駆け出す。悲鳴は鳴り止まないが、一人、また一人と出口から脱出する。
優斗が脱出すると同時に、聞こえていた悲鳴が嘘かのように音が消えた。中に生き残りはいないのだろう。
脱出に成功したものの数を剛力が数える。奏やアイカ、サラディンも脱出に成功したようだ。
「……脱出に成功したのは全体の三割か」
剛力が呟く。能力無効化空間によって、これだけの数を失ってしまった。戦力の激減と共に、皆の気分も落ち込む。
「ここで立ち止まっていては、死んだものたちが報われない。……行くぞ」
剛力が皆に言い聞かせる。しかし、その彼の表情は悲しみに溢れていた。
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