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死後生活―アフターデッド・ライフ―  作者: 黒肯倫理教団
第三章

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39話 解放

ついに希望のフラグメントの出番です。

 「ようこそいらっしゃいました。私はミスティ。あなたのお名前をお聞かせください」

 現れた女性はミスティと名乗る。咲は緊張しつつも名前を名乗ると、ミスティが優しく微笑みながら椅子に座るように誘導する。咲は緊張しているのか、辺りをキョロキョロと見回す。

 「あなたは、どの幽霊に会いたいのですか?」

 「私は、幼馴染みに会いたいです」

 「幼馴染みですか。それなら、今あなたの横に立っていますよ」

 それを聞いて、優斗は驚く。今、優斗がいる位置は咲の真横だからだ。

 「そんなに驚かなくても大丈夫ですよ」

 その言葉は、咲に対してではなく優斗に対してだ。彼女の顔はこちらを向いており、優斗が少し移動しても、それを追うように顔を動かす。どうやら、優斗のことが見えているようだ。

 本物の霊能者なんていないと思っていたが、これは間違いなく本物だ。まあ、自分が能力を使えるようになったことを考えれば当然だろう。

 「優斗が、ここにいるんですか?」

 「はい。あなたを救うために、ずっと戦い続けているようですよ」

 「戦い?」

 確かに今の優斗はコンバットスーツを着ており、戦闘体勢に入っている。なぜ戦っているのかわからない咲は、ミスティに聞き返す。

 「咲さん。あなたは、幼馴染みを失ってとても悲しんでいますね?」

 「はい」

 「あなたのその感情は、人間には見えない何かに狙われています。それからあなたを守るために、彼は戦っているのです」

 「この感情が? でも、悲しまないなんて私には無理です。大切な幼馴染みなんですよ?」

 「だからこそ、私がいるのです。私なら彼の言葉を聞くことが出来る。あなたが望むのなら、彼と会話することも出来ますよ」

 「出来るんですか?」

 「私は霊能者ですから」

 ミスティは優斗に手招きをする。優斗が移動すると、彼女は始めましょうと言った。

 「優斗は、なんで私を庇ってくれたの?」

 「大切な幼馴染みなんだから、当たり前だ」

 ミスティはそれを咲に伝える。咲は若干嬉しそうに口を緩めるが、すぐに次の質問をする。

 「優斗は、後悔してないの? すごく痛い思いをしただろうし、なにより人生が終わっちゃったから……」

 これが、咲が一番気にかけていることだろう。自分のせいで優斗が死んでしまったと思い詰め、絶望に囚われる。

 「俺は後悔なんてしていない。咲を守れた、それだけで満足だ」

 咲は、質問の返答を聞く度に少しずつだが明るさを取り戻していく。タイミングを見計らって、希望のフラグメントを使えば絶望から解放されるだろう。優斗は、必ず来るであろう質問の答えを考える。そして、10分ほど会話をした後その質問が来た。

 「優斗。私はずっと前から優斗が好きだったんだよ? 優斗は、私のことをどう思っていたの?」

 「俺は、咲のことが好きだ。ずっと前から、そしてこれからもその思いは変わらない」

 ありふれた言葉かもしれないが、これほど表現しやすい言葉はないだろう。その言葉を聞くと、咲の頬を涙が伝う。それは、先ほどまでの悲しみではなく、喜びや嬉しさといった感じだ。

 「嬉しいよ、優斗……」

 使うならば今しかない。優斗は希望のフラグメントを取り出すと、それを咲に向ける。希望のフラグメントから暖かい光が放出され、それが咲の体を包み込む。体が光に包まれて咲は戸惑うが、その暖かさを感じて身を委ねる。

 「暖かい……」

 咲は最後に一滴だけ涙を流すと、泣き止んだ。その顔には、生前に毎日見ていた明るさが取り戻されていた。咲はミスティにお辞儀をして店を出る。その力強い足取りを見て安心した優斗は、京也たちのところへ戻った。




 「優斗君、お疲れ様。どうやら幼馴染みは救えたようだね」

 2人のもとへ戻ると、剛力が労いの言葉をかける。京也も「よくやった」とだけだったが成功を祝ってくれた。

 「これで、優斗君は目的を達成したわけだ。今の君には2つの選択肢がある」

 先ほどの笑顔から一転、剛力は突然真剣な顔になる。

 「2つの選択肢?」

 「そう。今の君はやるべきことを果たした。そうなると、選択肢は2つ。1つはこのまま戦いを続ける。もう1つは、成仏することだよ」

 「成仏?」

 「このまま戦いを続けると、相当な苦があるだろう。もう平行世界に残る必要がない以上、私はそれを強制することは出来ないからね」

 言われてみれば、確かにそうだ。平行世界に来てからずっと咲のことを考えていた。その目的がなくなった以上、この世界に残る理由はないのかもしれない。だが、まだその時ではない。まだ、この世界でやるべきことがある。

 「俺は、まだ残ります」

 「いいのかな? どんな苦があるかわからないのだよ?」

 「覚悟はできてます」

 その言葉を聞いて、剛力は満足げに頷く。剛力は次の獲物を探すためにナビのレーダーを確認すると、歩きだす。優斗は来るべき日に備え、修行を再開した。


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