33話 狂気の男
今回は残酷描写ありです。
執筆し終えてから読み返したらゾッとしました~
『準備が整ったから、収容するよ』
サラディンがそう言うと、優斗たちの体が光に包まれる。健仁はいきなり発光したことに驚いていたが、すぐに落ち着きを取り戻す。視界が光で埋め尽くされ、優斗たちは本部へと帰還した。
「ここがデッドガーディアンズの本部なのか」
転送室を出たところで、健仁が呟く。落ち着きのない様子で辺りを見回す様は、まるで子どものようだ。優斗も初めてきたときは驚いた。こんな理想的な世界が、施設が、基地があるのかと感心したものだ。
少しして、隣の転送準備室からサラディンが出てきた。内容はわからないが、たくさんの資料を持っている。
「こんにちは健仁君。僕はサラディン・ルース。デッドガーディアンズで戦闘司令官をしている」
「よ、よろしく」
サラディンが手を差し出すと、健仁がぎこちなく握り返す。
「それじゃあ、まずは君の能力が見たいからついてきてくれるかな」
「おう、わかったぜ」
レーダーでの動き方を見るとかなりの力はあるだろう。実際に見てはいないため能力についてはわからないが、敵を倒すことに関しては相当慣れているように見える。
健仁が優斗たちに手を振って去っていく。やることがなくなってしまった優斗たちは、それぞれの能力を活かした連携を話し合うことにした。
アリアは現在バイクに乗って移動をしていた。向かう場所は近くの廃墟だ。剛力曰く、最近はそこでイーターの行動が活発になっているため調査してほしいとのことだ。僅かな変動に対してでも敏感に行動しなくては、イーターを操る男に近づくことは出来ない。
一時間ほど走り続けると、目的地の廃墟に到着した。もともとは教会があったのだろう、崩れた聖像が転がっている。瓦礫にはツタが絡み付いており、不気味さを感じさせる。
ナビを開き、レーダーを起動する。大きな反応がいくつかあり、その中で高ランクのイーターは少なくとも5、6体はいると考えるべきだろう。視認できる範囲にはいないが、警戒を怠らないようにしなくてはならない。「ストラグルモード!」と言い、万全の状態にしておく。
瓦礫は散乱しているが、一部分だけ整備されたかのように道ができている。これを辿れ、ということなのだろう。道なりに歩いていくとイーターが姿を現す。が、こちらを眺めるだけで攻撃はしてこない。近づくと、道をあけるようにその場から移動する。
やはり、ここで間違いないだろう。監視役に高ランクのイーターを何体も配置しているならば、少なくとも何らかの収穫を得られるはずだ。罠だろうが、アリアは関係なく進んでいく。
しばらく歩くと、大きな女神像を見つけた。手入れをされているのだろう、傷一つなく輝きを放つ様は、廃墟では目立つ。周囲が荒んでいるために、その女神像は異様さを感じさせる。調べようと手を伸ばしたとき、アリアは背後から気配を感じとりその場から飛び退く。瞬間、アリアが立っていたところに闇が降り注いだ。再び来るだろうと身構えていると、笑い声が聞こえた。
「ははは、さすがは凍てつく氷の女王といったところか。不意打ちは効かないみたいだ」
「……誰だ?」
アリアが問うと、目の前に闇が広がる。そしてその中から黒いローブを纏った男が姿を現した。アリアはデータを集めるために、ナビのデータ解析をオンにする。
「名乗る必要はないだろう。私を探していたのだろう?」
男は不気味な笑みをフードの隙間から覗かせる。凍りつくようなその笑みは、アリアでさえ恐怖を覚える。
「ならば話は早いな。お前の目的はなんだ? イーターを操ってまで何をする気だ?」
「決まっているだろう。あの腐った世界、向こうの世界を破滅に追いやるためだ」
「なぜそんなことをする必要がある? 理由もなしにやるわけではないだろうな?」
男は一度表情を変えるが、すぐにもとに戻す。何か言いたげに口が動いていたが、言葉は発せられなかった。
「それを聞く必要はないさ。――君には死んでもらう!」
男がローブを脱ぎ捨てると、彼のコンバットスーツが姿を現す。ギラギラと怪しく輝く闇は男の理想なのだろうか。人間とは思えないような禍々しさを感じさせる。顔はやつれ病んでいるように肌は白い。しかし、その鋭い目からは強烈な殺気を感じさせる。
勝ち目はないと判断したアリアは、逃走を試みる。が、辺りを黒い闇が包み込んでしまい逃げ道を塞がれてしまう。
「逃がさないよ」
いつの間にか男は横に立っていた。わき腹に回し蹴りをくらい弾き飛ばされる。地面に水のクッションを作り出して衝撃を緩和する。態勢を建て直すと、両手に氷の刃を作り出す。
「なんだ? その玩具で私と戦うつもりかな?」
男が嘲笑うように言う。己の理想を嘲笑われたアリアは、怒りに身を任せて突進を試みる。男はそれに対して片手を突き出すのみ。アリアが振りかざす氷の刃を、男は片手で止めて見せた。掴まれた右手を必死に抜こうとするが、力の差が大きすぎるために振り払えない。
「それで全力なのか?」
男はそう言うと、掴んでいる方の手に禍々しいオーラを纏わせる。そしてその手は、まるでアリアの手がないかのように閉じられた。握り潰されたのだ。
「――ッ!」
骨を砕かれてしまい、言いようもない激痛が走る。右手はかろうじて繋がっているが、その手はだらんと垂れ下がっていて力が入らない。
「なんだ、右手を失ってもそれしか反応しないのか」
男は血に染まる手を不満そうに見つめながらもう片方の手に禍々しいオーラを纏わせる。そしてその手を、アリアの胸元に突き刺した。男が手を引き抜くと、ドクドクと脈打つ心臓が握られていた。
体の損傷と大量の流血により、アリアは意識を手放す。男は心臓を握りつぶすと、結界を解除する。瞬間、アリアはポリゴンとなって体を爆散させた。男はしばらくの間、狂ったように笑っていた。
感想や評価などしていただけると嬉しいです。




