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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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第93話: ゴブタロウ、進化する

翌日。

俺たちは青梅ダンジョン管理所に集まった。

昨日、黒鉄装備を持たせた1045匹を12階層へ送り出した。

今日はその結果確認である。


「今日は黒鉄装備の本番結果だな」


「昨日、損害を100匹以内に抑えろって言ってたよな」


ブタオが思い出したように言った。


「言った」


「あれ、結構むちゃじゃね?」


「目標は高く持たないと」


俺たちは管理所を抜け、青梅ダンジョンへ入った。

見慣れた通路を進み、大部屋へ向かう。

入口に近づくにつれて、ざわざわした声と、台車のごろごろいう音が混ざって聞こえてきた。


大部屋に入ると、まず秋田鉱山組が見えた。

台車に黒鉄鉱石を積んで運ぶハイゴブリン。

壁際で座り込んで休んでいるファイター。

その横を、別のゴブリンが台車を押して通っていく。

休憩組を踏まないように、微妙に進路をずらしていた。


「お、ちゃんと交代してる」


「ゴブリン、休憩を覚えたな」


「末長く働いてほしいっスね」


昨日まで目をぐるぐるさせながら掘っていた連中が、今日は休憩を挟んでいる。

労務改善だ。


そして大部屋の反対側。

そこには、黒鉄装備を持ったゴブリンたちがいた。

ヘロヘロそう。


だが、立っている数は思ったより多い。

床には魔石の入ったエナメルバッグも積まれていた。


「これは勝ったな」


「早いっス」


「いや、見ろよ。結構いるぞ」


黒鉄装備のゴブリンたちは疲れていた。

疲れてはいるが、妙に得意げだった。


盾を抱えたファイターが胸を張り、マジシャンは杖を抱えたまま座り込んでいる。

ハイゴブリンたちも、黒い剣や槍を床に置いて、どこかやり切った顔をしていた。


「チアキ、数えてくれ」


<確認します>


チアキがスマホを構え、俺も飼育スキルで状態を確認する。

昨日送り出した探索組は1045匹。

ハイゴブリンオス833匹。

ゴブリンファイター105匹。

ゴブリンマジシャン107匹。


帰ってきた数は、


<帰還数は812匹です>


「八割弱っスね」


「前回よりかなりいいな」


前回の12階層は523匹帰還。

今回は812匹帰還。

同じ12階層なら、黒鉄装備はかなり効いている。

それともファイターやマジシャンの数が効いているのかな?

まぁどっちもだろう。


「内訳は?」


<ハイゴブリンオス653匹、ゴブリンファイター77匹、ゴブリンマジシャン82匹です>


ハイゴブリンオスが180匹減り。

ファイターが28匹減り。

マジシャンが25匹減り。

合計233匹。


やはり削られているのはハイゴブリン中心だ。

ファイターとマジシャンも減っているが、前回よりはだいぶ軽い。


「やっぱ装備って大事だな」


「秋田ダンジョンも、もっと下の階層の発掘したいっスね」


「様子見しながらかな」


続いて装備を確認する。

黒鉄盾は、ファイター105匹に持たせていた。

戻ってきたファイターは77匹。

つまり盾は28個戻っていない。

黒鉄剣と黒鉄槍は、ハイゴブリンに持たせていた。

死んだ180匹のうち、黒鉄武器持ちは128匹。

剣64本、槍64本が戻らなかった。


残った黒鉄装備は、盾272個、剣230本、槍230本。

数だけ見ると、まだ戦える。

ただし、次になっつんが来るまでにどれだけ減るかは分からない。


『隊長! ただいまっス!』


『隊長、12階層は突破したっス!』


『そのまま下に階段があったんで、ちょっと13階層も見てきたっス!』


なんだと!?


「命令は12階層までだったよな?」


『はいっス! だから12階層は終わらせたっス!』


「なんで13階層行ったんだ? いや、怒ってるわけじゃないんだけど」


『いける感じがしたっす!』


『俺らにかかれば余裕っすよ!』


『すみません、有給ください』


最後のやつはゆっくり休んでくれ。

自分たちで考えて行動する。


素晴らしい!

これが優秀な社員を持つ社長の気持ちか!

報酬(メスゴブリン)を与えたくなってしまうな。


「13階層はどんな感じだった?」


『ファイターが多かったっす!』


『マジシャンも多かったっす!』


『ハイゴブリンも速かったっす!』


『袋叩きにしてやったっす!』


やっぱ数は力だな。

他の探索者も数人とかじゃなくて数でゴリ押せばいいのでは?


報告をまとめると、13階層は12階層よりさらに前衛が重いらしい。

ファイターが増え、ハイゴブリンも硬く速い。

マジシャンの火球も相変わらず飛んでくる。

黒鉄盾はかなり役に立ったが、盾を持っていないハイゴブリンが削られたようだ。


やっぱり装備が重要っぽいなぁ。

ファイターには盾だけじゃなくて鎧とか配りたいな。

重戦士の軍団とか憧れちゃう。


ひとまず帰還確認は終わった。

次は昨日の赤ちゃんたちだ。

檻Bにいた赤ちゃん585匹は、もう成体になっていた。


ハイゴブリンオス470匹。

ゴブリンファイター57匹。

ゴブリンマジシャン58匹。


「減った分以上に増えてるな」


「ゴブリンの損益分岐点超えてるぜ」


「ブタオさんがなんか知的なことをしゃべってびっくりしてるっス」


「っふ、俺は学ぶブタなのさ」


<ちょっと何言ってるかわからないです>


ブタオのくせに生意気だぞ!


母檻側のハイメス赤ちゃん63匹も成体化していた。

ゴブタロウ檻のハイメスは546匹。

スカー檻は41匹。

チビ檻も41匹。

ヤリ檻は55匹。


そして、今日の出産チェックである。

メスゴブリンたちは、いつものように赤ちゃんを抱え上げ、ブタオ製の土の滑り台トンネルへ運んでいく。

ころころ。

ぎゃあぎゃあ。

ずるずる。

この音にも、だいぶ慣れてしまった。


コハルは赤ちゃんには触らず、魔石バッグと回収装備を端へ寄せている。

赤ちゃん回収は、もうメスゴブリンの仕事として固まっている。

牧場にも作業分担があるのだ。

かなり嫌な分担ではある。


<集計します>


チアキが淡々と数字を拾っていく。


<ゴブタロウ檻、ハイメス赤ちゃん55匹、ハイゴブリンオス赤ちゃん518匹です>


「ゴブタロウ、相変わらずだな」


ゴブタロウは檻の奥で寝ていた。

こいつはいつ見ても寝ているか、偉そうにしている。

働き方だけ見ると、一番の勝ち組かもしれない。


<スカー檻、ハイメス赤ちゃん4匹、ファイター赤ちゃん34匹です>


<チビ檻、ハイメス赤ちゃん4匹、マジシャン赤ちゃん34匹です>


<ヤリ檻、ハイメス赤ちゃん6匹、ファイター赤ちゃん26匹、マジシャン赤ちゃん29匹です>


チアキが少し間を置いて、合計を出した。


<本日の赤ちゃんは710匹です。内訳は、ハイメス赤ちゃん69匹、ハイゴブリンオス赤ちゃん518匹、ファイター赤ちゃん60匹、マジシャン赤ちゃん63匹です>


「700超えたか」


「別に探索しなくてもこいつらの魔石だけで稼げるな」


「でも探索させたらもっと稼げるっス!」


コハルさんも随分鬼畜になってきたじゃないか。

まだ借金があるもんな。


「で、今日はどうする?」


ブタオが聞いた。

ゴブリンたちは、期待したような顔でこちらを見ている。

ん?休みはないよ?


「んー、ゴブリンがさらに増えたし14階層目指しちゃうか?」


「まぁその選択肢しかないだろ」


「世界一探索スピードが早い気がするっス」


<このペースで行くと今年中に日本一探索が進むダンジョンになりますね>


それほどですかチアキ先生。

ゴブリン一匹から始めたこのスキームがここまで成長してくれたとは、感無量です!!


ゴブリンに指示を出そうとしたところ、ゴブタロウが大きな声でうめき声をあげるのが聞こえた。

全員で急いでゴブタロウの檻の近くにいく。


「どうしたゴブタロウ!?」


『き、キタァァぁぁぁぁあぁああああ!!!!』


「何が来た!? ついにテクノブレイクなのか!? そうなのか!?」


『うぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!』


ゴブタロウの体が、檻の中でぶくりと膨らんだ。

いや、膨らんだというより、密度が変わった。

筋肉が盛り上がり、背が伸び、肩幅がさらに広くなる。

緑色の皮膚の上に、黒っぽい硬い模様が浮かんでいく。

鎧を着たわけでもないのに、胸元や腕のあたりが金属みたいに光った。


「おいおいおい」


「でかくなってね?」


「なんか、ボス感が出てるっス」


檻の中のハイメスたちが、ぎゃあぎゃあと騒ぎながら後ろへ下がる。

いつも偉そうにしているゴブタロウが、今日は本当に偉そうに見えた。


『ウ、ウオオオオオオオオ!!』


ゴブタロウが叫ぶ。

大部屋のゴブリンたちが一斉にざわついた。


俺は飼育スキルでゴブタロウを見る。

いつものように、ぼんやりとした情報が頭に浮かんだ。


ゴブタロウ。

種族、ゴブリンナイト。


「ゴブリンナイト?」


「騎士っスか?」


「ゴブリンに騎士とかいう概念があるのか?」


<ゴブリンナイト。ゴブリンの中でも上位個体ですね。かなり厄介な魔物として知られています>


まじか。

ゴブタロウ、お前ただヤってるだけなのにまた進化したのか。


あざーっス!

これでさらに儲けられますあざーっス!


「ゴブタロウ、お前……すごいな」


『フンッ』


ゴブタロウは腕を組んで、鼻を鳴らし、ニヤリと笑った。

その態度がもう腹立つ。

でも、今のこいつは腹立つだけでは済まない。

見た目が完全に上位種だ。

ハイゴブリンの時点でも大きかったが、今はさらに一段違う。


「これ、やばくないか?」


「金の匂いがぷんぷんするぜ」


「明日の出産が楽しみっスね!」


ゴブタロウがハイゴブリンに進化した時も衝撃だったが、今回はそれを超えた衝撃だ。

こんな強そうな魔物がバンバン生まれたら探索も一気に進むだろう。


ゴブタロウの進化に圧倒されながらも、ゴブリンたちに14階層の探索を命じた。


俺たちは魔石バッグを回収して管理所へ戻り、魔石を換金してもらう。

ゆきちゃんはいつも通りスマホを見ながら処理し、液晶の数字をちらっと見た。


「よし」


「さらっと4000万超えたっス」


「反応薄くね?」


「ゴブタロウの進化で頭がいっぱいなんだよ」


今日は、魔石よりもゴブタロウの進化の方が大事件だった。

いや、4876万5000円も十分大事件なんだけど。

慣れって怖い。


現在のゴブリン牧場の状況(3784匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ/ゴブリンナイト + ハイメス546匹 + ハイメス赤ちゃん55匹)

ゴブタロウ(ゴブリンナイト)1匹

ハイメス546匹

ハイメス赤ちゃん55匹

・スカー檻(スカー + ハイメス41匹 + ハイメス赤ちゃん4匹)

スカー1匹

ハイメス41匹

ハイメス赤ちゃん4匹

・チビ檻(チビ + ハイメス41匹 + ハイメス赤ちゃん4匹)

チビ1匹

ハイメス41匹

ハイメス赤ちゃん4匹

・ヤリ檻(86匹)

マジシャン13匹

ファイター12匹

ハイメス55匹

ハイメス赤ちゃん6匹

・檻B(641匹)

ハイゴブリンオス赤ちゃん518匹

ファイター赤ちゃん60匹

マジシャン赤ちゃん63匹


・秋田鉱山組(966匹)

ハイゴブリンオス711匹

ゴブリンマジシャン109匹

ゴブリンファイター146匹


・青梅帰還組(812匹)

ハイゴブリンオス653匹

ゴブリンファイター77匹

ゴブリンマジシャン82匹


・檻B成体組(585匹)

ハイゴブリンオス470匹

ゴブリンファイター57匹

ゴブリンマジシャン58匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻


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