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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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86/99

第86話: ゴブリンさん、帰ってくる

翌日。

俺たちは青梅ダンジョン管理所へ向かった。

昨日はタワマンの最上階を見て、申し込み用紙に名前まで書いた。

家賃350万円。

初期費用1200万円。

普通なら、夢から覚めた瞬間に正気へ戻る金額である。


だが、俺はまだ少し浮いていた。

余裕で払えますけど?


「ボン、顔がまだタワマンだぞ」


「顔がタワマンってなんだよ」


「いけすかない顔っス」


「何言ってるかわからん」


コハルは朝から元気だった。

ブタオも妙に機嫌がいい。

たぶん、昨日のキッチンをもう自分のものとして考えている。

あの男、俺の内見で炊飯器の位置を決めていたからな。

食い意地しかないやつめ。


<本日は、10階層探索組の帰還確認ですね>


チアキのチャットで、ふわふわしていた頭が少し戻る。

そうだ。

今日はゴブリンたちが帰ってくる日だ。


俺たちは最上階タワマンに浮かれていたが、ゴブリンたちはその間、7階層から10階層を歩いていた。

7階層ゲートから潜り、7階、8階、9階、そして10階。


「どのくらい帰ってきてるかな」


「5割くらい戻ってきてたら上出来じゃね?」


「ファイターがどれだけ残ってるかだな」


盾を持たせたファイター。

今回の要はそこだ。

なっつんに頼んだアイアンタートルの盾を、ファイターたちに持たせた。


ガタイのいいファイターが構えるのにちょうどいいサイズの盾。

あれが仕事をしていれば、10階層でも次が見える。


していなければ、ゴブリンに装備は勿体無いだけだ。

もう装備なんて買ってやらん。


管理所を抜け、青梅ダンジョンへ入る。

見慣れた通路を進み、大部屋へ向かった。

入口に近づくにつれて、ざわざわした気配が増える。


ゴブリンの声。

足音。

革袋が床へ置かれる重い音。


「……帰ってきてるな」


大部屋に入った瞬間、まず目に入ったのは魔石の入ったエナメルバッグだった。

積まれている。

金の匂いがぷんぷんすっぞ。


「うわ、多いっス」


「これは過去最高額待ったなしだな」


「素晴らしい。これこそがゴブリン牧場」


<ありがたいことです>


床には帰還したゴブリンたちが並んでいた。

ボロボロのやつもいる。

盾に焦げ跡があるファイターもいる。

マジシャンは杖を抱えたまま座り込み、ハイゴブリンたちは疲れた顔で壁に寄りかかっていた。


ううむ。

お疲れさーん。


「チアキ、数えてくれ」


<確認します>


チアキがスマホを構え、俺も飼育スキルで状態を確認する。


出発した探索組は829匹。

ハイゴブリンオス580匹。

ゴブリンマジシャン129匹。

ゴブリンファイター120匹。


そして、帰ってきた数。


<帰還数は663匹です>


「663」


「だいたい8割っスね」


8割。

思ったより悪くない。


ただ、10階層である。

9階層の時点でマジシャンの火球が面倒だったらしい。


その先へ829匹を突っ込ませて、8割戻ってきた。

これは、運用としてはかなり前に進んでいる。

俺たちは安全な大部屋で数字を見ているだけだが、数字の向こう側ではゴブリンがかなり頑張っている。


頑張れ。

めっちゃ頑張れ。

俺は頑張らない。


「内訳は?」


<帰還は、ハイゴブリンオス450匹、ゴブリンマジシャン103匹、ゴブリンファイター110匹です>


「ファイター110?」


「出したの120匹だったよな」


「じゃあ、ファイターの未帰還は10匹だけか」


思わず盾の方を見る。

焦げている。

傷も入っている。

でも壊れきってはいない。

盾を持ったファイターが、ぼろぼろになりながら座っていた。

こいつらが前に立ったおかげで、ファイターの損耗は10匹で済んだ。

カッケェじゃないか。


ハイゴブリンは130匹。

マジシャンは26匹。

合計166匹の死亡。


南無南無。


「なっつんの盾、ちゃんと仕事してるな」


「盾すげぇっス」


「費用対効果は悪くなさそうだな」


うむ。

装備に金をかける。

ゴブリンが帰ってくる。

帰ってきたゴブリンがまた魔石を持ってくる。

金が増える。

また装備に金をかける。

もっと稼げる。

素晴らしいサイクル。


そうか、これが投資というものだったか。

俺、投資家になれたよ父ちゃん。


帰還組の確認を終えたところで、ついでに出産チェックも済ませる。


「チアキ、檻の方も数だけ見よう」


<はい>


ゴブタロウ檻は、昨日のハイメス赤ちゃん32匹が成体になり、ハイメス成体329匹。

そこから今日の赤ちゃんは、ハイメス35匹、ハイゴブリンオス315匹。

スカー檻はハイメス成体24匹で、ハイメス3匹、ファイター23匹。

チビ檻もハイメス成体24匹で、ハイメス3匹、マジシャン23匹。

ヤリ檻はハイメス成体33匹で、ハイメス4匹、ファイター15匹、マジシャン17匹。


「合計は?」


<本日の赤ちゃんは438匹です。内訳は、ハイメス45匹、ハイゴブリンオス315匹、ファイター38匹、マジシャン40匹です>


「増え方が仕事熱心すぎる」


帰還したファイターの一匹が、盾を床に置いて胸を張った。


『隊長、盾、硬かったっス!』


「そりゃよかった」


『あと報告なんすけど、やたらつえーゴブリンがいたっす!』


「うーん? ファイターかハイゴブリンか?」


『いや、今まで見たこともないゴブリンっすね。死んだ仲間はほとんどそいつにやられたっす』


「ふーん、新種か」


『まぁ俺らにかかれば数の暴力で袋叩きっすけどね!』


「素晴らしい」


強いゴブリンねぇ。

ゴブリンキングとか出てくるのかな?

その前にゴブリンジェネラル?

ゴブリンの生態がよくわからんぞ



「まぁ次は11階層だな」


「ゴブリンたちボロボロだぞ?」


「また生まれるから」


「鬼畜っス」


11階層を探索してうまくいけばよし。

うまくいかなかったら装備を整えるか、数を揃えるかだな。

やることは単純。


魔石バッグの確認に移る。

今回は7階層ゲートから潜っている。

つまり、10階層だけではない。


7階層、8階層、9階層、10階層。

この4層分の魔石がある。


3階層、4階層、5階層分の魔石がないので、魔石回収の効率がいいかは換金次第だな。


コハルが念力でバッグを浮かせる。

重い袋がふわりと浮き、チアキの前へ並ぶ。

チアキは順番に収納へ入れていく。

バッグの数が多いので、収納に入れるだけでも少し時間がかかった。

そのあいだ、ゴブリンたちは床に座り込んでいた。


今日はさすがに流石に休ませてやろうかな?

うーん……


「よし、お前ら。探索行ってこい」


『隊長! 俺ら流石に疲れてるっす!』


「お前らの限界はこんなもんか? いや違う! お前らはできるやつだ!」


『た、隊長! 俺らのこと……信じてくれてるんすか!?』


「そうさ。本当に無理ならこんなことは言わない。限界を超えろ! 今度は11階層を突破するんだ!」


『『『う、ウラーラーラー!!!!』』』


成体になったばかりのゴブリンたちは生き生きと、探索してきたゴブリンたちはヨロヨロと7階層へのゲートを潜っていった。


「ボン、お前……最高だな」


「いや、最低っス」


<借金が早く返せそうですねぇ>


俺たちは管理所へ戻った。

受付には、いつものようにゆきがいた。

スマホを見ている。

俺たちが近づくと、視線だけを上げた。


「おかえり。戻ったんだ」


「あいあい。換金お願いします」


チアキが魔石バッグを出し、コハルが念力で品質チェック機械の近くへ並べる。

魔石が機械へ流れていく。

カチャカチャ、カチャカチャと音が鳴る。

液晶パネルに数字が積み上がっていく。


ゴブリン魔石。

ホブゴブリン魔石。

ハイゴブリン魔石。

ゴブリンマジシャン魔石。


単価の違う魔石が次々に判定され、金額が跳ねる。

通常ゴブリンの1000円が、かわいく見えてきた。


ありがたいのだが、ハイゴブリンの3万円を見たあとだと、どうしても小銭に見えてしまう。

金銭感覚がまた一段壊れている。


その途中で、機械の音が一度だけ止まった。

カチャ、ではなく、カチ、と短く詰まるような音。

ゆきがスマホから目を離し、流れてきた魔石をひとつ摘まんだ。

色は濃い。

いつものハイゴブリン魔石より、奥の方で赤黒く光っている。


「これ、どうしたの?」


「どうしたのって、ゴブリンたちが持って帰ってきた魔石ですけど?」


「うん。それはそうなんだけど。これだけ品質がかなりいいね」


ゆきが魔石を指先で転がす。

受付嬢の顔ではなく、元探索者の顔になっていた。

少しだけ目が細い。


「なんだろ……あ、強いゴブリンがいたらしいっス!」


コハルが思い出したように言った。


「強かったけど数の暴力でボコボコにしたそうっス」


ゆきは魔石を機械にかざし、表示を見て、少しだけ眉を寄せた。


「うーん。これ、15階層くらいの品質っぽいなぁ」


「15階層!?」


「俺たち、10階層までしか行かせてないよな?」


「行かせてないっス」


<7階層から10階層までの探索です>


チアキの確認が入る。

つまり、予定通りなら15階層級の魔石が混ざる理由はない。


「前にも言ったけど、下層から魔物が上がってきてるかもしれないって話、覚えてる?」


ゆきが魔石を手遊びしながら言った。


「それかもね。断定はできないけど、10階層でこれが出るなら一応警戒しといて」


「気をつけるのはゴブリンですけどね」


「じゃあ、ゴブリンに気をつけさせて」


「おす」


下層の魔物が上がってくるってやばくないか?

チアキにゲート設置させるのは控えようかな。


ゴブリンは……

いつも通りでいっか


最終的に、表示された金額は、


【24,100,000円】


だった。


「にせんよんひゃくじゅうまん」


ブタオが変な声で復唱した。

コハルが両手を上げる。


「タワマン代っス!」


「初期費用払って、家賃三ヶ月払っても残るな」


「計算がもう住む前提っス」


「住むだろ」


「住むっスね」


俺の城は、正式に共同拠点になりつつある。

まあいい。

払える。

そこが一番気持ちいい。


ゆきが端末を操作しながら、いつもの調子で言う。


「私の取り分は引いとくねー」


「はい」


10%。

241万円。

普通なら十分大金だ。


まぁ俺らから見たら端金さ。

うん、そう思おうとしたけどやっぱ高いってぇ!!!

10%は高いよゆきさぁぁぁぁん!


現在のゴブリン牧場の状況(1901匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + ハイメス329匹 + ハイメス赤ちゃん35匹)

ゴブタロウ1匹

ハイメス329匹

ハイメス赤ちゃん35匹

・スカー檻(スカー + ハイメス24匹 + ハイメス赤ちゃん3匹)

スカー1匹

ハイメス24匹

ハイメス赤ちゃん3匹

・チビ檻(チビ + ハイメス24匹 + ハイメス赤ちゃん3匹)

チビ1匹

ハイメス24匹

ハイメス赤ちゃん3匹

・ヤリ檻(62匹)

マジシャン13匹

ファイター12匹

ハイメス33匹

ハイメス赤ちゃん4匹

・檻B(393匹)

ハイゴブリンオス赤ちゃん315匹

マジシャン赤ちゃん40匹

ファイター赤ちゃん38匹


・探索組(1025匹)

ハイゴブリンオス738匹

ゴブリンマジシャン141匹

ゴブリンファイター146匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻



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