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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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81/98

第81話: ゴブリンさん、今日は温存です

「ゲッヘッヘ」


大部屋の隅に積まれたエナメルバッグを前に、俺は思わず笑っていた。


バッグは全部で30個。

どれもぱんぱんに膨らんでいて、ちょっと持ち上げるだけで中の魔石がじゃらじゃらと重たい音を立てる。


10階層、めちゃくちゃ危なかったらしい。

ハイゴブリンもマジシャンもファイターもかなり減っていた。


でも、魔石はちゃんと持って帰ってきた。


偉い。

偉すぎる。


「いや、でも笑ってる場合じゃねぇな」


俺は頬を叩き、改めて整列しているゴブリンたちを見る。


生き残った探索部隊は、


・ハイゴブリン:98匹

・ゴブリンマジシャン:31匹

・ゴブリンファイター:25匹


昨日までと比べると、かなり寂しい。

特にハイゴブリンの減り方がえぐい。


「10階層、やっぱ今の装備だときついな」


「盾が来るまではやめといた方がよさそうだな」


「なっつん、明日作るって言ってたっスよね?」


<はい。明日作成、受け取りは明日以降になるとのことでした>


つまり、少なくとも今日は盾なし。

追加装備なしで10階層に突っ込ませるのは、さすがに危ない。


「今日は温存だな」


俺が言うと、ブタオが首を傾げた。


「温存ってことは、今日は探索なし?」


「いや、探索はする」


「するんかい」


「9階層までな」


10階層は無理。

でも9階層までなら、こいつらはもう何度か稼いできた。


控えめにいって、1000万前後。


……控えめとは?


「今日は10階層禁止。9階層までで安全に稼いで、明日は探索を休ませる。明日、盾を受け取って配る準備をして、明後日もう一回10階層だ」


「明後日リベンジか」


「盾ありなら、だいぶ違いそうっスね」


<方針賛成です>


よし。


「その前に、赤ちゃん回収だな」


俺たちは母檻の方へ向かった。


まずはゴブタロウ檻。


ハイメスたちの足元には、昨日生まれていた赤ちゃんたちがちょこちょこと動き回っている。

もう何度も見た光景だが、数が増えるとやっぱり圧がある。


「メスどもー! 赤ちゃんをこっちに流してくれー!」


俺が声をかけると、ハイメスたちが慣れた動きで赤ちゃんを抱え上げた。


昔はコハルの念力で一匹ずつ浮かせていたが、今は違う。


ブタオ製の土の滑り台トンネルに、メスたちが赤ちゃんを順番に流し込む。


ぎゃあぎゃあと騒ぐ赤ちゃんたちが、するする滑って仕分け用の小部屋へ転がり込んでいく。


その出口で、チアキが無言で数えていく。


<ゴブタロウ檻、ハイメス赤ちゃん38匹です>


「お、やっぱ増えてるな」


さらに、滑り台トンネルの先にある檻Bにも、次々と赤ちゃんが流れ込んでいた。


ゴブタロウ檻から出るのは、基本的にハイゴブリン系だ。


今回は、前回のハイメス赤ちゃんも成体化して、ゴブタロウ檻のハイメスは214匹になっている。


そりゃ増える。


むしろ増えなきゃおかしい。


檻Bに落ちた赤ちゃんたちは、見た目からしてほとんどハイゴブリン系。


小さいくせに、すでに肩幅が生意気だ。


チアキが黙々と数をメモしていく。


「よし。次、スカー檻」


スカー檻では、ハイメスの足元に赤ちゃんが1匹。

こちらもメスが抱えて、短い滑り台トンネルへ流し込む。


<スカー檻、ハイメス赤ちゃん1匹です>


そのあとに続いて、がっしりした赤ちゃんたちがごろごろと檻Bへ滑っていく。


「うわ、もう腕が太い」


「スカーの子っスねぇ」


ファイターだ。


赤ちゃんなのに、なんか体育会系の匂いがする。


「次、チビ檻」


チビ檻も同じく1匹。


こちらも同じように、メスが赤ちゃんを運び、トンネルを滑らせて回収した。


<チビ檻、ハイメス赤ちゃん1匹です>


最後に、チビ檻から小柄な赤ちゃんたちがころころと流れてくる。


体は小さいが、目だけは妙に鋭い。


「こっちはマジシャンか」


「ちっちゃいのに賢そうっス」


いや、ゴブリンなので顔は普通にゴブリンだ。


でも、チビの血統だと思うと妙に期待してしまう。


チアキがメモをまとめる。


<集計できました。ハイメス赤ちゃん40匹、ハイゴブリンオス赤ちゃん161匹、ファイター赤ちゃん32匹、マジシャン赤ちゃん33匹。合計266匹です>


「266匹か。まあ、今の規模ならそんなもんか」


「昨日の赤ちゃん198匹が今日の補充になって、次の赤ちゃんが266匹っスね」


<ゴブタロウ檻だけでなく、スカー檻とチビ檻も安定して出産していますので、むしろ自然な増加かと>


数字だけ見ると相変わらずおかしいが、牧場運用としてはもう通常営業である。


「ハイメス40匹か。戦力というより、繁殖力が増えたな」


「ゴブタロウさん、ますます忙しくなるっスね」


ゴブタロウを見ると、どこか誇らしげに腕を組んでいた。


やめろ。

その顔は腹立つ。


続いて檻Bを確認する。


昨日まで赤ちゃんだった連中は、すでに成体化していた。

ダンジョンの成長速度、相変わらずバグってる。


内訳は、


・ハイゴブリンオス:137匹

・ゴブリンマジシャン:31匹

・ゴブリンファイター:30匹


合計198匹。


これは昨日の赤ちゃん組が成体化した分だ。


そして、今日新しく生まれた檻B行きの赤ちゃんは226匹。


こっちは明日以降の補充になる。


「おお……補充としては十分だな」


「昨日の損耗がだいぶ戻ったな」


うむ。


俺たちは一度、全体の数を整理した。


現在、探索に回せる戦力はこうだ。


・ハイゴブリンオス:235匹

・ゴブリンマジシャン:62匹

・ゴブリンファイター:55匹


内訳は、生還組がハイ98、マジシャン31、ファイター25。

成体化した補充組がハイ137、マジシャン31、ファイター30。


合計352匹。


10階層へ送り出す前は、探索部隊が486匹いた。


そこから見ると、134匹減っている。


補充込みでこれなら、やっぱり10階層はまだ重い。


けど、9階層まで回すには十分な数だ。


「今日は成体組を全員、9階層まで出す」


俺は地面にざっくりと線を引きながら、チーム編成を考える。


「前回と同じで、ファイターを軸にチームを作るか」


「ファイターは55匹。だから55チームだな」


「全チームにファイター1匹っスね」


「マジシャンも55チームに1匹ずつ入れる。余った7匹は、人数が少ないところに追加で入れよう」


使う数は、成体全員。


・ハイゴブリン235匹

・ゴブリンマジシャン62匹

・ゴブリンファイター55匹


合計352匹。


1チームあたり、ファイター1匹、マジシャン1匹、ハイゴブリン4匹前後。


余ったマジシャン7匹は、ハイゴブリンが少ないチームの後衛に追加。


10階層へ行かせなければ、これで十分温存になる。


「お前ら、今日は9階層までだ! 10階層には絶対に行くな!」


俺の声に、ゴブリンたちが一斉にこちらを向いた。


『えー?』


『昨日のリベンジは?』


『隊長、俺らまだいけるっスよ?』


こいつら、意外とやる気だ。

いや、嬉しいけど。

昨日あれだけ減ってるんだから、少しは怖がってくれ。


「ダメだ。盾がまだない。なっつんが明日作る。受け取れるのは明日以降だ」


『盾!』


『あの硬いやつっスか!』


『肉壁卒業っスか!?』


ファイターたちがざわついた。


肉壁って言葉、定着してるの嫌だな。


「そうだ。明日、盾を受け取る。配って、持ち方を覚えさせて、明後日もう一回10階層だ」


その瞬間、ゴブリンたちの目が輝いた。


『盾だ!』


『肉壁卒業っス!』


『今日は温存!』


「そうだ。今日は10階層禁止だ。9階層までで魔石を回収して、無理せず帰ってこい。深追い禁止。疲れたら帰還。魔石回収係は必ず守れ」


『了解っス、隊長!』


『9階までっスね!』


「よし、行ってこい!」


55チーム、合計352匹。

ゴブリンたちは列を組み、ゲートへ向かって走っていく。


緑の背中が次々と消えていくのを見送りながら、俺は大きく息を吐いた。


「……これでいいよな」


「いいんじゃね? 全力で突っ込ませるだけが運用じゃないしな」


「なんか経営者っぽいっス」


<戦力を残す判断は重要です。特に明後日の10階層再挑戦を考えるなら、今日の損耗は抑えるべきです>


そう。

今日は減らさない日。


でも魔石は売る。


俺たちは大部屋の隅に積まれた30個のエナメルバッグを見た。


「じゃあ、昨日の分を換金しに行くか」


「ゲッヘッヘ」


「ゲッヘッヘっス」


<笑い方が悪役です>


失礼な。

善良な牧場主です。


たぶん。


⸻


管理所に戻ると、ゆきちゃんはいつものようにカウンターでスマホを見ていた。


「魔石、お願いします」


「はいはい。今日はどれくらい?」


俺たちは30個のエナメルバッグをカウンター前に並べていく。


ゆきちゃんの指が止まった。


「また多いね」


「昨日の10階層組が持って帰ってきた分です」


「きつかった量じゃないんだけど」


ゆきちゃんは呆れたように言いながらも、手際よく魔石を計測機に流し込んでいく。


カラカラカラ、と魔石の転がる音が続く。

液晶に数字が積み上がっていく。


しばらくして、計測が終わった。


「3186個。換金額は、1846万2000円」


一瞬、誰も声を出さなかった。


「……」

「……」

「……」

<……>


沈黙。


そして、


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「1800万!? 1800万!?」


「温存前に大勝利っスーー!!」


爆発した。


どこぞの外資系なんかよりも圧倒的である。

前職でここまで稼ぐのに何年かかることか。


俺たちは安全な管理所で数字を見ているだけ。


なのに、口座の残高だけがとんでもない速度で増えていく。


ゴブリンたちは命がけ。


俺たちはカウンター前で歓声。


この構図、冷静に考えるとだいぶひどい。


でも儲かる。


ゆきちゃんが半眼でこちらを見る。


「で、今日はまた行かせるの?」


「今日は9階層までです。10階層は行かせません」


「へえ。慎重じゃん」


「盾が明日できるんで。明日は準備にします」


「ふうん」


ゆきちゃんはそれだけ言って、スマホへ視線を戻した。


相変わらず淡泊である。


「はい。今日は温存です」


俺はそう答えて、換金を終えた。


上納金を差し引いても、とんでもない金額が残る。

だが今日は、金額よりも戦力だ。


明日、盾を受け取る。

明後日、10階層へもう一度行かせる。


そのために、今日は減らさない。


「よし、帰るか」


「明日は盾っスね」


「明日は配って、持ち方覚えさせて終わりだな」


<明後日の再挑戦に備えましょう>


チアキのチャットに、俺たちは揃って頷いた。


俺たちは管理所を出て、夕方の空気を吸い込んだ。


今日の稼ぎは1846万2000円。

今日の方針は温存。


明日は盾の配布と休養。


明後日、10階層に再挑戦する。


⸻


現在のゴブリン牧場の状況(930匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + ハイメス252匹)

ハイメス214匹

ハイメス赤ちゃん38匹

・スカー檻(スカー + ハイメス21匹)

ハイメス20匹

ハイメス赤ちゃん1匹

・チビ檻(チビ + ハイメス21匹)

ハイメス20匹

ハイメス赤ちゃん1匹

・ヤリ檻(55匹)

マジシャン13匹

ファイター12匹

ハイメス30匹

・檻B(226匹)

ハイゴブリンオス赤ちゃん161匹

マジシャン赤ちゃん33匹

ファイター赤ちゃん32匹

・9階層探索部隊(352匹)

ハイゴブリンオス235匹

マジシャン62匹

ファイター55匹


今回回収した赤ちゃん

ハイメス赤ちゃん40匹

ハイゴブリンオス赤ちゃん161匹

マジシャン赤ちゃん33匹

ファイター赤ちゃん32匹

合計266匹


今回成体化した補充組

ハイゴブリンオス137匹

マジシャン31匹

ファイター30匹


⸻⸻⸻⸻⸻⸻





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