第80話: ゴブリンさん、10階層で苦戦する
ナツミの工房に着いた俺たちは、入口でボンヤリと座っている警備員を横目に、でかい倉庫のような建物の中へと入っていく。
「おーい、ナツミさんやーい!」
俺が大声で呼ぶと、奥の方から返事があった。
「ほいほーい。渋谷ダンジョンに行ってきた?」
「行ってきたぜ。チアキ、例のブツを出してくれ」
<わかりました>
チアキがすっと手をかざすと、空間魔法で収容していたアイアンタートルの巨大な死骸が地面に現れた。
「おー、久しぶりにアイアンタートルを見たよ。で、あと何体分あるの?」
「……はい?」
「はい?」
俺とナツミの声が同時に重なった。
え、何体も狩ってくるとでも思ってたと?
あいつめっちゃ強かったぞ? 文字通り命がけだったんだが?
「え? 一匹だけ狩ってきて帰ってきたの? まじで?」
「あのー、一匹だけなんですけど……」
「あんたらレベルなんだっけ?」
俺とブタオとコハルが10、チアキが7だと伝えると、ナツミはあっけらかんと笑った。
「レベル10なら、小細工なしで殴る蹴るで別に勝てるでしょ」
「え、そんなことできるの?」
「そりゃできるでしょ。7層の魔物なんて、レベル10あれば余裕よ」
「怖いんで無理です」
「玉なしかよ」
……なんの玉のことかな? 男性の象徴かな?
いや、女の子がそんなこと言っちゃいけませんよ!
「で、この一匹でどれくらい盾って作れるの?」
「うーん、300くらいかな」
「どぇぇぇ!? そんな作れるの!?」
チアキの予想は多くて100個だったけど、それを遥かに超える数。しかも一匹でそれって……。
「他の安い素材と混ぜたりするから、まぁそんくらいかなー」
「お値段はいかほどで?」
「うーん、1個1万くらいかな。総額300万でどう?」
高いのか安いのか全くわからん。
でも、前に買った盾は1個3万だったし、そこと比べたらめちゃくちゃ安い。
3万×300で900万だ。えぐい。
っていうか、そんな額を余裕で稼げる俺らも結構えぐい。
「じゃあ、それで頼みます」
「おっけー。明日作るから、明後日以降にチアキちゃん、取りにきてー」
<承知しました>
これで盾の心配はしばらくしなくて済む……かな?
「よし、交渉成立だな。じゃあ、青梅ダンジョン行くかー」
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青梅のダンジョン管理所に到着した俺たちは、車を降りると、見慣れた建物をくぐり抜け、馴染み深い通路を抜けてダンジョンの入り口へと向かった。
ダンジョンに入ってすぐ、俺たちは大部屋を目指して歩を進める。
通路を抜け、大部屋の入口に立つ。
「ふー……なんだか、ここに来ると安心感があるわ」
そう呟いた俺に、ブタオがしみじみと頷いた。
「わかる。なんか落ち着くよな、ここ」
「安全っスからねぇ、この空間」
コハルも、どこか懐かしむような声で答える。
すると、檻の向こうからガヤガヤと騒がしい声が聞こえてきた。
『お、隊長がきたぞー!』
『お前ら、整列ー!』
『あいよー!』
掛け声とともに、ぞろぞろと檻から出てくるゴブリンたち。まるで点呼でも始まるかのように、すばやく整列を始めた。
「おぉ、ありがてぇ」
ヤリ部屋という報酬制度の恩恵だろうか……まぁなんでもいいか。
素直に助かる。
ざっと目を通すと、整列しているのは――
・ハイゴブリン:98匹
・ゴブリンマジシャン:31匹
・ゴブリンファイター:25匹
「あれ、結構減ったな」
思わず口にすると、近くにいたハイゴブリンの一匹がぴょこんと手を上げた。
『10階層って、やばいんスよ。同じハイゴブリンなのに、なんかこう……強さが段違いっていうか』
「へえ」
『あと、ゴブリンマジシャンが向こうにも結構いたんスよね。弾幕張ってくるから、こっちはもう大変でしたわ』
別の個体が続けた。
『うちの肉壁が頑張ってくれたから、なんとかなったっスけど』
ゴブリンファイターさんが仲間から肉壁って呼ばれている件
頑張ってるのになんか可哀想。
ちょうどブタオが近づいてきて、「そいつら、なんだって?」と尋ねてきたので、今聞いた話をそのまま伝える。
<どのダンジョンでも10階層の攻略難易度は急に上がる傾向があります。構造や魔物の強さが段違いになることが多いので、そういうものかと>
チアキの分析も相まって、現場の認識が固まった。
「えー、10階層って厳しいのか……。マジかよ……」
ふと我に返って、整列しているゴブリンたちに問いかける。
「お前ら、魔石はちゃんと持って帰ってきたのか?」
すると――
『もちろんっスよ、隊長!』
『あんまり舐めないでもらいたいぜ!』
自信たっぷりの表情で胸を張るゴブリンたち。
あれ、なんかごめん。
そんなに本気で取り組んでくれてるとは思わなかった。見くびってたわ。
大部屋の隅にまとめられていたエナメルバッグを確認すると――全部で30個。
1つあたり100個以上は確実に入っていそうだ。
「ゲッヘッヘ……」
思わず不穏な笑いが漏れる。
いくらになるんだ、これ。
おいらワクワクが止まらないぜ。
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現在のゴブリン牧場の状況(996匹?)
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・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + メス214匹?)
ハイメス182匹
ハイメス赤ちゃん32匹
・スカー檻(スカー + ハイメス20匹?)
ハイメス19匹
ハイメス赤ちゃん1匹
・チビ檻(チビ + ハイメス20匹?)
ハイメス19匹
ハイメス赤ちゃん1匹
・檻B(198匹?)
ハイゴブリンオス赤ちゃん137匹
マジシャン赤ちゃん31匹
ファイター赤ちゃん30匹
・ヤリ檻(55?匹)
マジシャン13匹
ファイター12匹
ハイメス30匹
・探索部隊(486匹)
ハイオス98匹
マジシャン31匹
ファイター25匹
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