第75話: 渋谷ダンジョンにつく
朝の渋谷は人と車と騒音で満ちていた。
通勤ラッシュを過ぎた時間帯だったが、それでも駅前の交差点は歩行者でにぎわっている。
サラリーマンたちの顔は疲れており、悲壮感が漂っている。
……おれ、もう絶対にあっち側には戻らねぇ!
そんな喧騒を抜け、俺たちは渋谷ダンジョンの管理所の前に立っていた。
【渋谷ダンジョンゲートビル】
税金を注ぎ込んだんだろうなーと思うような巨大な建物だ。
青梅ダンジョンの管理所と違い過ぎだろ。
「着いたな」
「あー、疲れた。やっぱ車でくればよかった。」
ブタオが軽く汗を拭きながら呟く。
デブに歩きはしんどかったようだ。
建物に入ると、コハルとチアキが近づいてきた。
「おはようっスー!」
<おはようございます>
コハルはいつも通りジャージ姿だった。
渋谷という街でもブレないその心意気、素晴らしい。
でも俺だったら恥ずかしくて無理です。
チアキも同じく私服だった。
こちらは涼しげなワンピースにカーディガンという可愛らしい格好だった。
「……あれ? お前ら、あの白いローブは?」
俺は思わず聞いてしまった。
昨日、ナツミの工房で数百万円を叩いて買ったばかりの、魔法耐性ローブだ。
せっかくだから着てくるものかと思っていたのに。
コハルがケラケラと笑いながら、手をひらひらと振った。
「ここの管理所、更衣室があるんスよ。だから中で着替えるっス」
「な、なぬっ!?」
昨日の光景が脳裏をよぎる。
家から管理所のまでのこの長い道のり──。
っく、恥ずかしい思いをしながら電車に乗ったというのに!
「ちなみに装備の預かりサービスもやってるらしいっスー」
うわー、さすが大きい管理所。
ちゃんとサービスが充実してる。
でも考えてみれば、重そうな鎧を持ってくるとかしんどいよな。
いいサービスしてるぜ。
「じゃ、私たち更衣室行ってくるっスー」
<着替えたらすぐ合流するので、待っててくださいね>
そう言って、チアキとコハルは管理所の奥へと姿を消していった。
残された俺とブタオは、ロビーのベンチに腰を下ろす。
「……しかし、ナツミ来ねぇな」
「昨日の帰り際に言ってたじゃん。『あたしは潜らないよ!』って」
あー、そうだった。
そもそもあの人は基本ダンジョンに潜らないもんな。
コハルとチアキがローブを着て戻ってくる。
そしてスマホにチアキからのチャットが届いた。
<このビルの2階にゲートの部屋があるそうで、そこに7階層へのゲートが設置されているようです>
「おー、もうそんなとこまで調べてたのか」
「さっすがチアキちゃん、仕事早いっス」
「よーし、じゃあ2階に行くかー」
俺たちはローブの裾を整えながら、エスカレーターへと向かった。
ロビーを抜けた先のエスカレーターに乗り込む。
ガラス張りの壁越しに、渋谷の喧騒がぼんやりと見える。
金かかってるなぁ。
「エスカレーターでダンジョン行くって、なんかシュールっスね」
チアキが苦笑いしながら言う。
たしかに、ダンジョンってもっとこうファンタジー感あふれてるだろ。
2階に上がると、すぐ目の前に掲示板が現れた。
『2階層から10階層までのゲートはこちら →』
「お、あったあった。これだな」
「わかりやすくて助かるっス」
矢印に従って進んでいくと、やがて厚い防音ドアにぶつかる。
ドアには「2階層 〜 7階層 ゲートルーム/ Gates room」と英語と日本語で書かれていた。
おー、海外の人も来るのか。
国際的だなー。
ドアを押し開けた瞬間、ひんやりとした空気が肌を撫でる。
中は広々とした白い部屋で、左右の壁に沿ってずらりと9基のゲートが並んでいた。
それぞれのゲートは金属製の枠に囲まれていて、枠の上部には大きな数字のパネルが設置されている。
「おおお……」
「なんかかっこいいっス」
どれも似たような楕円形のゲートで、中心にはゆらゆらと波打つような空間の歪みが広がっている。
まるで水面を立てたような、不思議な輝きだ。
「2……3……4……お、あった。7階層」
「よーし、入るかー!」
俺たちが意気揚々と7と書かれたゲートに向かって歩き出した、そのとき──。
「失礼します」
突然、すぐそばから落ち着いた声がかけられた。
見ると、ゲート横の待機カウンターから、一人の男性が歩み寄ってきた。
黒縁メガネにネイビーのスーツ。
どうやらこの部屋の担当職員らしい。
「こちら、7階層のゲートになります。お間違いありませんでしょうか?」
声は低く丁寧で、まさに「優秀な受付係」といった雰囲気だった。
「はい、大丈夫ですー。7階層で合ってます」
俺が軽く会釈しながら返すと、彼はきっちりと頭を下げた。
「かしこまりました。それでは、ご安全に」
「どもっすー」
間違って入らないようにちゃんと確認してくれるんだ。
普通に死ぬかもしれないしな。
大事な確認だ。
え、ちょっと怖くなってきたんですけど。
やっぱりチアキとコハルだけで行ってくれない?
あ、ダメですか。
そうですか。
──渋谷ダンジョン・第7階層。
今、俺たちは初めて、その未知の世界へ足を踏み入れる。
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現在のゴブリン牧場の状況(996匹)
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・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + メス214匹)
ハイメス182匹
ハイメス赤ちゃん32匹
・スカー檻(スカー + ハイメス20匹)
ハイメス19匹
ハイメス赤ちゃん1匹
・チビ檻(チビ + ハイメス20匹)
ハイメス19匹
ハイメス赤ちゃん1匹
・檻B(198匹)
ハイゴブリンオス赤ちゃん137匹
マジシャン赤ちゃん31匹
ファイター赤ちゃん30匹
・ヤリ檻(55匹)
マジシャン13匹
ファイター12匹
ハイメス30匹
・探索部隊(486匹)
ハイオス335匹
マジシャン66匹
ファイター65匹
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