↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/98

第70話: 意思疎通を試してみる

昼過ぎ、管理所のロビーで俺たちはのんびりと待っていた。

昼食後のまったりとした空気が漂う中、静けさを破るように、駐車場の方からエンジンの音が響いてくる。


「おっ、来たな」


ブタオが窓の外を覗き込むと、軽トラがが見えた。

ナツミだ。軽トラの荷台には、昨日と同じく火鉱石の盾が積まれているのがチラリと見えた。


俺たちはそそくさと外に出て、彼女を迎えた。

軽トラの窓がガコンと下がり、ナツミの笑顔が覗く。


「ごめーん! 盾なんて大きいもの、何十個も一気に持ってこれないわ! 今日は10個だけ持ってきたよー!」


元気いっぱいの声に、俺は思わず笑った。


「そりゃそうだわな……軽トラで一気に全部ってのは無茶だ」


俺は肩をすくめ、ナツミに気を使わせないように手を振った。


「いや、いいよいいよ! 残りはあとで取りに行くわ。チアキが」

<!?>


即座にチアキからチャットが飛んできた。


「いやさ、俺たちが行っても意味ないかなって……運搬とかチアキの空間魔法に任せた方が効率的じゃん?」

<……それはそうですけど>


チアキの返答には微妙な困惑が滲んでいたが、俺は流すために手をパンと叩いた。


「まあまあ、細かいことは気にするな! よし、チアキ。荷台に乗ってる盾を回収してくれー!」

<了解です……>


チアキが静かに歩み寄り、手を掲げる。

淡い光が盾の周囲に灯り、シュッと空間に吸い込まれるように盾たちは消えた。

ナツミはその光景を見て、感心したようにふんふんと頷いていた。


「さて、じゃあ全員でダンジョンに入るか」

「おう!」


俺たちは勢いよく管理所を後にし、ダンジョンゲートへと向かう。


ふと、その足で歩きながら思った。


「……そういや、ゆきは特に何にも言ってこないな。新しいメンバーが増えても問題ないのか?」


ナツミが加わったことで、何か質問されるかと思ったが、ゆきはいつも通り淡々と事務をこなしているだけだった。


「……まあ、いいか」


小さくつぶやき、俺たちはそのままダンジョンの中へと歩を進めた。


ダンジョンの中、大部屋への通路を抜けると、むわっとした熱気とゴブリンたちの鳴き声が迎えてきた。薄

暗い空間に響くその声は、どこか活気に満ちていて、俺は少しだけホッとした気分になる。


「おお、結構帰ってきてるな」


大部屋を見渡すと、視界のあちこちにゴブリンたちの姿があった。

ざっと見積もっても、100匹以上はいる。


前回より随分戻りがいい。

これが盾の効果なのか、それともゴブリンマジシャンとゴブリンファイターを2匹ずつ編成したのが良かったのか……。


どっちもかな?


「よし、種族ごとに並ばせよう!」


声を張り上げると、ゴブリンたちはギャギャと鳴きながら慣れた動きで整列を始めた。

俺とブタオ、コハルが前に出て、それぞれの数を数えていく。


ハイゴブリン、83匹

マジシャン、31匹

ファイター、31匹


結構生き残ったな。


「……ってことは、ハイゴブリンは10匹減ったか。マジシャンとファイターは1匹ずつ」


ブタオがファイターたちの列に目をやり、ポンと手を叩いた。


「でもよ、盾持ってたファイターは5匹、ちゃんと戻ってきてるわ」

「……ノー装備のやつが死んだんだな。ならヨシ!」


俺は胸の中でガッツポーズし、次の作業に移る。


「魔石の入ったエナメルバッグ、持ってこーい!」


俺の号令に応え、ゴブリンたちがわらわらと動き始める。

回収係たちが列を作り、エナメルバッグを次々と俺たちの前に運び出す。その動きはもう熟練のものだ。


確認すると、エナメルバッグは16個、すべて揃っていた。


「ゲッヘッヘ……この数なら、今日も1000万は堅いなぁ……!」


俺は思わず笑みをこぼし、重さを感じさせるエナメルバッグの列を見て、心の中で小さくガッツポーズを決めた。


「さて……今日は実験をする!」


俺の突然の宣言に、ブタオが眉をひそめて聞き返す。


「なんの実験だ?」


俺はにやりと笑った。


「ゴブリンとの意思疎通だ!」

「ああ……忘れてたっス、そんなの。そういやそんなスキル手に入れてたっスね」


ブタオも「確かにあったな……」と頭をぽりぽりとかいていた。


「俺も昨日確認するのすっかり忘れてたわ……でもな、それでわかった。これは意識的にやろうとしない限りは発動しないんだ。パッシブじゃなくて助かった……!」


急にゴブリンたちの不満とかぶつけられなくてよかったぜ。


「それじゃあ……記念すべき初回はゴブタロウと意思疎通を試みる!」


俺の言葉に、ブタオが面白そうに頷いた。


「おー、確かにあいつ、何考えてんのか気になるな」

「初期からずっと檻の中っスもんね。実は外に出たいかもしれないっス」

<気になりますね……>


チアキのチャットも届く。


そのとき、ナツミが首をかしげた。


「ん? 何すんの?」

「俺のスキルでな、飼育してる魔物と意思疎通できるようになったんだ。それをこれから試してみるとこ」

「へぇー、おもしろそうじゃん! やってやって!」


ナツミの目が好奇心で輝いていた。


「うむ、行くぞ!」


俺はゴブタロウの檻の前まで歩いていき、深呼吸をひとつして話しかけた。


「ゴブタロウ! 聞こえるか!」


檻の中でゴロゴロと横になっていたゴブタロウが、面倒くさそうに上半身を起こし、眠たげな目でこちらを見た。


その瞬間、俺の頭の中に響く声。


『……昼寝してるから静かにしてくれ』

「……あ、なんか……ごめんな? 寝てていいよ」


俺はそっとその場で手を挙げ、声をかけるのをやめた。


「なんて言ったんだ? 俺には『ギャ』としか聞こえなかったぞ?」


ブタオが不思議そうに首をかしげる。コハルも「私もっス」と首を振った。


「えーと……昼寝してるから静かにしててほしいってさ……」

「……お、おう」


微妙な空気が流れたが、コハルが笑いながら言った。


「でも、意思疎通できたっスね!」

「そ、そうだな! よし、他のゴブリンにもやってみるか!」


俺は新たな期待を胸に、次のゴブリンの元へ向かうのだった。


「……よし、次はチビだな」


俺は檻の前まで歩き、鉄格子の向こうで座ってぼーっとしているチビに声をかけた。


「おーい、チビー。元気にしてるかー?」


チビはぱちくりと瞬きをし、こちらに気づくと慌てたように背筋を伸ばし、きちんと座り直した。

そして──頭の中に響く、しっかりとした声。


『お疲れ様です! 何かご用でしょうか!』


お、おお……まるで体育会系の後輩みたいな返答が返ってきた。


「いや、特に用はないんだけどさ……。なんか、ほしいものとか、要望とかないか?」


するとチビの声が驚いたように響いてくる。


『あれ!? こっちの言ってることがわかるんですか!?』

「俺のスキルでな、意思疎通できるようになったんだよ」

『それはすごいです! えっと……ほしいものですか……。特にないですね』

「ないのか」

『ないです』

「……」

『……』


無言。


「……あー、なんかあれば話しかけてくれ」

『わかりました!』


チビは真剣な表情のまま、ぺこりと頭を下げていた。


俺は檻の外に戻り、ブタオたちに報告した。


「なんか……すごい慕ってくる後輩みたいなやつだったわ。特にほしいものとかないってさ」


ブタオは「そんなもんか」と言い、コハルも「後輩とかイメージ通りっス」と頷いた。


<今度はスカーさんに話しかけてみましょう!>


チアキからのチャットが飛んでくる。


「よし……スカーだな」


スカーの檻の前に行くと、彼はあぐらをかいて落ち着いた様子で座っていた。

近寄ると、ゆっくりと目を開き、こちらを見据えてくる。


「スカー。元気かー?」

『……うむ。ご主人、我らの声が聞こえるようになったのだな。聞こえていたぞ』


……なんだこの落ち着きと威厳。まるで武士みたいな口調だ。


「あー……そうなんだよな。えっと……なんか、ほしいものとか……ある?」

『ない』


即答だった。


「あ、そう……今の生活に不満とかは?」

『ない。好きに雌と交わり、生命の安全も保障されている。これこそが幸福というものよ』


あー……要するにヤレれば幸せってことか。


「……ヤレれば幸せってこと?」

『うむ!』


スカーは堂々と胸を張り、力強く頷いた。


俺は檻を離れながらブタオに報告した。


「不満とかなくて、メスとヤレれば満足だってさ」


ブタオは思わず笑って「そりゃあ……理解できるわ」とうなずいた。


「……俺も理解できる」


そのやりとりにコハルが呆れたように眉をひそめた。


「男って……不潔っスー」

<どんな種族でも雄は雄ということですか>


チアキの冷静なチャットが飛び、ナツミはその場で腹を抱えて爆笑していた。


「……いや、ナツミさん、そんなにツボる?」


「だって! なんかゴブリンたちの生態が人間臭すぎて面白すぎるんだもん!」


俺たちはなんとなく気が抜け、場の空気がふわっと和んだのだった。


⸻


現在のゴブリン牧場の状況(470匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + メス155匹)

ハイメス131匹

ハイメス赤ちゃん24匹

・スカー檻(スカー + ハイメス17匹)

ハイメス16匹

ハイメス赤ちゃん1匹

・チビ檻(チビ + ハイメス17匹)

ハイメス16匹

ハイメス赤ちゃん1匹

・檻B(121匹)

ハイゴブリンオス赤ちゃん91匹

マジシャン赤ちゃん15匹

ファイター赤ちゃん15匹

・探索部隊(145匹)

ハイオス83匹

マジシャン31匹

ファイター31匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。