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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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第69話: なっつんにゴブリン牧場をご紹介

昼過ぎの静かな管理所に、低く唸るようなエンジン音が近づいてきた。

窓の外を覗くと、白く少し年季の入った軽トラが、駐車場にゆっくりと滑り込んでくるのが見えた。


「……軽トラとは渋いな」


ブタオが窓際でぼそりとつぶやく。俺も思わず頷いた。

若い女性で軽トラ……かっこいいじゃねぇか


荷台には、火鉱石の盾が5つ、乱雑に積まれている。

その上に光る金属の赤みが、日差しに照らされてじんわりと熱気を帯びていた。


軽トラの窓がガコンと下がり、運転席から元気そうな声が響く。


「来たよー! 在庫の盾、持ってきたよー!」


ナツミがにかっと笑って手を振っていた。相変わらず飾らない人だ。


「よっしゃ、チアキ頼むわ」


俺が言うと、チアキは無言で一歩前に出る。

その小さな手をスッと掲げると、周囲の空気がわずかに張り詰めるような感覚が走った。


次の瞬間、盾の周囲にぼんやりと淡い光が灯り──シュンッと音を立てて、その場から盾が消えた。


「……は!? 今の何!? 空間魔法!? マジで!?」


ナツミが目を丸くし、軽トラの窓から身を乗り出す勢いでこちらを凝視している。


「これも内緒だぞ?」


俺が人差し指を口元に当てると、ナツミはその様子を見て息を呑んだ。


「……すご。初めて見た。というか……空間魔法持ちが探索者やってるなんて、どんだけ特殊なんだよ……」


驚きと感心が入り混じった声だった。

その反応が少し嬉しくもあり、どこか誇らしかった。


「ささ、中に入ってさっそく契約を結びましょうか」


ナツミを促すと、彼女は軽トラのドアを開け、軽快な足取りで管理所の中へ入ってきた。

ソファに腰を下ろしたナツミに、俺は昨日準備しておいた秘密保持契約書を差し出した。


「こちらです」

「おっ、ありがとう」


ナツミは契約書を手に取り、パラパラとページをめくる。

真剣な表情で目を走らせ、途中何度か「へぇ……」と小さくつぶやく。


「しっかりした内容だね。うん、問題ないよ」


そう言うと、備え付けのペンを手に取り、その場でスラスラと署名を済ませた。


「よし、これでお互い気持ちよく進められるな!」


俺も安心して笑い、ナツミと握手を交わした。


「じゃあ、盾の使い方を見せてくれるんだろ?」


ナツミがソファから立ち上がり、わくわくした表情でこちらを見てきた。

その目の奥には、職人ならではの好奇心の炎がちらりと光っていた。


「もちろんです。じゃあ──我らが秘密基地へとご案内させていただきましょう」


俺は軽く冗談めかしながら手を広げ、ナツミを先導する形で管理所の奥、大部屋への通路を歩き始めた。

通路を進むうちに、ナツミの表情は徐々に引き締まっていく。


ダンジョンに入ったことがあまりないんだろうな。

わかる。わかるぞ。

最初は俺も怖った……


そして、大部屋に入った瞬間──


「……なっ」


目の前に広がる光景に、ナツミは思わず足を止めた。

むわっとした熱気と独特の匂いが漂う中、ゴブリンたちが動き回っている。

その数、ざっと見積もっても50匹ほど。いつもの数からすると、明らかに減っている。


「ちょ、これ……ゴブリン……? しかもこの数……すご……。え、大丈夫なの?」


ナツミは目を丸くし、無意識に一歩後ずさった。

俺は肩をすくめて小さく笑う。


「ナツミさん、それくらいで驚いてもらっちゃ困るぜ〜。本来ならもっといるんだからさ……今日は少ない方だ」


ブタオも後ろでニヤニヤしながら同意していた。


俺たちはまず、ゴブリンたちに指示を出した。


「よし、魔石回収だ。魔石を持ってこーい!」


俺の声に、ゴブリン回収係たちがギャギャと声を上げながら動き始めた。

列を作り、エナメルバッグを次々と俺たちの元へ運び込んでくる。


ナツミはその様子を目を細めて見つめ、ぽつりと小声でつぶやいた。


「……ゴブリンに探索させてるのか? これ、やばいな……」


俺はにやりと笑って、エナメルバッグの一つを開けた。

中には半分以上、魔石がぎっしりと詰まっている。どのバッグも似たようなものだった。


「チーム数が減った分、一チームの稼ぎが増えてるな……。8階層までなら、このチーム数で十分かもな……」


俺はぼそっと独り言を漏らし、次の作業へと移った。


「よし、檻Bの成体ども、外に出ろー!」


掛け声とともに、檻Bの扉が開かれ、成体となったゴブリンたちがぞろぞろと外へ出てくる。

その流れに合わせて、メスゴブリンたちがすばやく動き、オスの赤ちゃんゴブリンたちをトンネルを通して檻Bへと移し始めた。


赤ちゃんたちはギィギィと鳴きながら、トンネルをくぐり、器用に檻の中へと収まっていく。

その光景に、ナツミが思わず声を漏らした。


「……これ……何やってるの? なんかすごいシステムになってるよ、これ……」

「飼育っていうスキルを使ってまして……ゴブリンを増やして探索させてます」

「やば。こんなの最強じゃん」


ナツミは驚きと感心が入り混じったような顔で、檻の中へと流れ込んでいく赤ちゃんゴブリンたちをじっと見つめ続けていた。


「じゃあ、次は盾のテストだな」


俺は一匹のゴブリンファイターを呼び寄せ、手渡すようにして火鉱石の盾を持たせた。

ファイターは一瞬、手元の大きな盾を見つめると、意外なほど器用に持ち上げ、ずしりと重そうな盾を両手でしっかりと構えた。


「……おお、ちゃんと持てるんだ」


ナツミが感心したように声を漏らし、その姿をじっと見つめている。

職人の目で見ても、この戦士の姿はなかなか様になっていたのだろう。


「よし、じゃあ……ファイヤーボール撃たせてテストしてみようか」


俺はゴブリンマジシャンを呼び寄せ、ファイターに向けてファイヤーボールを撃つよう指示を出した。

ゴブリンマジシャンが小さく鳴き声を上げ、手を構える。

その手の先に炎が集まり、次の瞬間、火球が勢いよく放たれた。


ゴォォォッ──

火球がまっすぐに飛び、ゴブリンファイターの構える盾に直撃する。

火花が散り、炎が一瞬周囲に広がったが──盾はしっかりとその攻撃を受け止め、ファイターもほとんど動じることなく踏みとどまっていた。


「おおお……! ちゃんと防いでる……!」


俺は思わず声を上げた。

ブタオやコハルも「すげぇな……」と小声でつぶやき、ナツミはにやりと満足そうに頷いていた。


「これなら実戦でも十分使えるだろ……」


俺は気を引き締め、次の指示に移った。


「さて、探索部隊を編成するぞ!」


ゴブリンたちの数を確認する。


ハイゴブリンは93匹、ゴブリンマジシャンは32匹、ゴブリンファイターも32匹。

俺たちはこの数をもとに、マジシャンとファイターをそれぞれ2匹ずつ含む16チームを編成した。


「今日も8階層まで行ってこい! 一部のゴブリンファイターにはこの盾を持たせる! これをうまく使って生き残れよー!」

「ギャギャギャーッ!」


ゴブリンたちは気合いの入った声を上げ、3層に続くゲートへと次々と飛び込んでいった。


俺がほっと息をついたその時だった。

ナツミがこちらに向き直り、真剣な眼差しで言った。


「ねぇ、私のこと専属にしてよ」

「専属?」


思わず聞き返す俺に、ナツミは肩をすくめて笑った。


「そ。別に契約とかがっちり結ぶってわけじゃなくていい。武装堂とか他の工房と取引しないで。うちだけと取引してくれたら、ちゃんと割引くからさ」

「おおっ……願ってもない! こちらこそ、ぜひよろしくお願いします!」


俺が即答すると、ナツミはにっと笑みを浮かべた。


「OK! とりあえず今日は帰ったら残りの盾を生成しとくから、明日持ってくるね」

「ありがてぇ! あ、そうだ、料金っていくらになります?」


ナツミは腕を組んで少し考えたふうを見せると、あっさりと答えた。


「んー……1つ3万でいいよ。50個だから150万ってとこだね」


俺は内心、心の中でガッツポーズした。

武装堂で1個49800円だったのが、ここでは3万……めちゃくちゃ安くなってるじゃねぇか……!


持つべきものは人脈である!


俺たちはナツミとのやりとりを終え、その足で管理所へと戻った。


「さて、魔石を提出すっか」


管理所のカウンターに並べたエナメルバッグから、魔石を計測機に流し込む。

カチカチと機械音が響き、ゆきが真剣な顔でモニターを確認する。


「……3056個、換金額は……1034万円だね」

「んー!! 1000万! 1000万!!」


思わず俺は両手を上げて叫んだ。

ブタオとコハルも「やったな!」とガッツポーズを決め、チアキも控えめに<おめでとうございます>とチャットを飛ばしてくる。

今日は誰もが浮かれ気分だった。


ナツミはびっくりして声も出ないようだ。


「よし……ナツミさんへの支払いもしっかりと……」


俺は振り込みにしようとしたが、ふと思い立って言った。


「ゆきちゃん、悪いんですけど、150万現金でお願いできます?」


ゆきはおっけーと言い、すぐに現金で準備してくれる。


「じゃ、これ。支払いです」

「おお、ずいぶん豪快だね。気に入ったよ」


俺は受け取った現金をそのままナツミに手渡した。


「……さて、今日は小籠包食べに行くぞーーー!」

「なっつんもいくっスー!」

「な、なっつん?」

「そうだな。もう俺たちは一心同体だ。飯行くぞー!」


俺が声を上げると、全員が「おおーっ!」と笑顔になり、俺たちは心躍らせながら管理所を後にしたのだった。


⸻


現在のゴブリン牧場の状況(470匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + メス155匹)

ハイメス131匹

ハイメス赤ちゃん24匹

・スカー檻(スカー + ハイメス17匹)

ハイメス16匹

ハイメス赤ちゃん1匹

・チビ檻(チビ + ハイメス17匹)

ハイメス16匹

ハイメス赤ちゃん1匹

・檻B(121匹)

ハイゴブリンオス赤ちゃん91匹

マジシャン赤ちゃん15匹

ファイター赤ちゃん15匹

・探索部隊(157匹)

ハイオス93匹

マジシャン32匹

ファイター32匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻



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