第63話: ゴブリンさんがいたのはブラック企業だった
「ふぅー、腹いっぱいだな……」
「ラーメンは至高だわ」
「三郎ラーメンで全マシマシ食ってるやつ初めて見たわ」
「余裕すぎる」
有名ラーメン店でブタオと腹ごしらえを済ませ、俺たちはダンジョン管理所に到着した。
扉を開けると、受付にはゆきがスマホ片手に座っていた。
「おーす。……ん? コハルは?」
「来てなさそうだな」
チアキが首を傾げ、とチャットが飛んでくる。
<特に連絡は来てないですね>
「なんだと……あいつ、サボりか?」
その時、俺のスマホがピコンと音を立てた。
画面を見ると、コハルからチャットだ。
噂をすればなんとやら。
『先ほどまでネット対戦してたっス。あとは任せたっス。お休みなさい』
「……お馬鹿ー!!」
ブタオは腹を抱えて爆笑している。
「ま、いいや。あいつの報酬は今日はなしだな……」
ため息をつきつつ、俺たちはダンジョンの中へ。足を進め、大部屋を目指す。
大部屋に入った瞬間、むわっとした熱気とゴブリンたちのざわめきが耳に届いた。
俺は一歩足を踏み入れて、ざっと視線を走らせる。
「……あれ、なんか減ったな?」
ブタオが隣で同じように数を数えるように見回し、ぽつり。
「100匹くらいじゃねぇか?」
たしかに、昨日までの迫力が嘘みたいだ。150匹は確実に切ってる。
<野生のハイゴブリンって、そんなに強いのでしょうか……>
チアキのチャットが届く。
「ゴブリンファイターとゴブリンマジシャンは減ってなさそうだな。まあ……まずは魔石だな。持ってこーい!」
俺の声に反応し、魔石回収係のゴブリンたちがエナメルバッグを担いで列を作ってやってくる。
その数、30個分。
回収係は誰ひとり欠けずに帰ってきたようだ。
そこは素直に安心した。
だが、袋を開けて中を確認すると……。
「むむむ……少ないな」
バッグの中の魔石は、どれもぱっと見で100個に届いてない。
「80個……あるか、ないかくらいか……?」
ブタオがバッグを覗き込んで、目を細めた。
「昨日よりも減ってんな。30セット分だから2400個ってとこか」
「どうしてだ……」
ふと周りを見渡すと、目に入ったのは、どこか力なく座り込むゴブリンたちの姿。
中にはその場で倒れ込んで寝息を立てているやつまでいる。
「……」
その光景に、嫌な記憶がよみがえった。
ブラック企業時代、200時間残業でボロボロだった自分の姿。
5徹して変なテンションになった先輩。
帰りたいと泣きながらプログラムのバグを直し続ける後輩。
っう、頭が……
「……はっ!!」
電撃のように頭をよぎる。
「ま、まさか……! コイツら……疲れてるんだ……!」
「いや、生きてるんだから、そりゃ疲れるだろ」
ブタオが当たり前かのように答える。
<流石に労働環境、悪すぎましたね……>
チアキは優しい総務部のような感想を言ってくる。
「……反省です」
俺は心の中で手を合わせた。
生き残ったハイゴブリンたちは、何日も連続で命の駆け引きをしていたのだ。
そりゃ心身ともに限界だったのかもしれない。
そして、力尽きて倒れた仲間たち……。
すまんな。
南無ー。
「なあ、ブタオ。8階層まで行って戻るのって、どれくらいかかるんだろうな?」
「……わかんねぇ」
<他のダンジョンでは10階層まで最短距離を上位探索者が走って3時間だったと聞いたことがあります>
「おお……チアキ先生、ありがとうございます。でも……どれくらいの距離感なのか、俺の想像力じゃわかんねぇ……」
だがひとつ、確かなことがあった。
「無理させすぎてたな……これ」
俺は頭を悩ませる。
「……どうするかな……。休み入れるか? 1日おきとか」
「まあ、それが無難じゃねぇか」
<空間魔法で8階からスタートさせますか?>
「「……!!」」
なんてことだ。
俺らにはこんな便利な人材がいるじゃないか!
「それダァ!!!!」
思わず声を張り上げた。
「俺らには、空間魔法の使い手がいるんだった!!!」
チアキがぽかんとこちらを見ていた。
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現在のゴブリン牧場の状況(270匹)
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・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + メス64匹)
ハイメス64匹
ハイメス赤ちゃん13匹
・スカー檻(スカー + ハイメス13匹)
ハイメス12匹
ハイメス赤ちゃん1匹
・チビ檻(チビ + ハイメス13匹)
ハイメス12匹
ハイメス赤ちゃん1匹
・檻B(75匹)
ハイオス赤ちゃん55匹
マジシャン赤ちゃん10匹
ファイター赤ちゃん10匹
・探索部隊(102匹)
ハイオス82匹
マジシャン10匹
ファイター10匹
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