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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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第61話: ダンジョン管理所月次報告会①

彼らが帰ったあと、私は机に突っ伏すようにして深いため息をひとつついた。


そのまま立ち上がると、受付の奥にある小さな扉へと向かう。


階段を下り、地下へ──。


ひんやりとした空気が肌を撫でる中、私は奥の部屋へと進んでいく。


そこには、コンクリート打ちっぱなしの殺風景な大部屋があった。


中央には、人数にそぐわないほど大きな丸テーブル。周囲に椅子はない。

用意されているのは、テーブルのこちら側、私のためだけに置かれた一脚の椅子だけだった。


私はそこに座ると、テーブル中央に設置された円盤型の装置に手をかざす。


──起動。


低く唸るような音とともに、装置が淡く光り始めた。


これは魔石で動く投影装置だ。


自分の姿を相手の場所へ、そして相手の姿を自分の場所へと、ホログラムとして投影する特殊な機械。

ほとんど実物と変わらない精細さで、まるでその場に人が実際に現れるような錯覚すら与える。


初めて使ったときは正直、腰を抜かしそうになった。


青い光がゆっくりと天井へ向かって広がっていく。

すると、ぽつり、ぽつりと──人が現れ始めた。


スーツ姿の男、女子高生、顔を隠すように帽子を深くかぶった老人。

このうちのほとんどがダンジョンの管理者たちだ。


やがて、12人目の姿が投影され、全員がそろったところで──


「それでは、これよりダンジョン管理所月次報告会を始めます」


パンッと音がして、全員の視線がひとりの女性に向けられた。


パンツスーツにぴしっとまとめられた髪、冷徹そうな目元に無表情な口元。

まさにザ・秘書という佇まいのその女性が、一歩前に出て、そう宣言する。


パチ……パチ……と、誰が決めたわけでもないのに、まばらな拍手が部屋にこだました。


「まずは各管理所の魔石納品総額から報告いたします」


パンツスーツの女性の声が全員の耳に届く。


毎月恒例の、魔石売上報告。


これは各ダンジョンで回収された魔石が、電力会社や魔石企業に納品された総額のことである。

ダンジョン管理所は10%を手数料として受け取ると公言しており、残りが探索者に還元される仕組みだ。


つまり、ここで発表される数字は、ダンジョンそのものの稼働力──そして管理者の実力を意味する。


「おい、ゆき。青梅ダンジョンは今月も魔石0個か?」


隣から聞こえたのは、棘のある声。


ギロリと睨むような目つきでこちらを見ているのは、渋谷ダンジョンの管理者・菅原サツキだった。

鋭い目元に短く切り揃えた黒髪、いつも口が悪くて対立することもしばしばだ。


「さてね」


私は肩をすくめて、適当に流す。


「それでは、今月の納品総額──1位、銀座ダンジョン。納品総額、9987億3452万円」

「おおー」


会場の数人が、感嘆の声を上げる。


納得の数字だ。

銀座は強力な探索者集団を抱えており、名実ともにトップを維持している。


「2位、渋谷ダンジョン。納品総額、9167億8731万円」

「ックソ! また負けた!!」


隣でサツキが拳を握り締め、噛みつくように呻いた。


毎回同じことを言っている。

銀座ダンジョンに追いつくと意気込んでいる割に、結局は届かない。

それが彼女のいつも通りだ。


その後も報告は続き、次々に名前と金額が読み上げられていく。


そして──


「最後に、青梅ダンジョン。……納品総額、1795万円」

「おおー!!」


思わず全体からどよめきが上がった。


それもそのはずだ。

私が管理者になって以来、初めての納品額。

今までずっとゼロだった青梅ダンジョンに、ようやく数値がついた。


「ゆき、ついに探索する気になったのかい?」


そう言ってきたのは、銀座ダンジョンの管理者・黒木ミナミ。


スーツにメガネ、そして端正な顔立ち。まさにエリートを地で行く男だ。


──ダンジョン管理者は現役の探索者であり、管理しているダンジョンの最深部を自らの足で攻略している連中だ。


私を除いて。


「いいえ。私は探索してない。優秀な探索者が来ているだけよ」


そう、私は戦わない。けれど代わりに、戦ってくれる者が現れた。


「それは珍しい。青梅ダンジョンを探索する物好きがいるとは」

「ほっときなさい」

「……これは失礼」


ミナミがくっくと笑い、眼鏡の奥で何かを読み取るように目を細めた。


相変わらず、腹の中では何を考えているか読めない男である。


パン、パン──。


静まり返った会議室に、乾いた音が二度、響き渡った。


その音の主は、テーブルの反対側に座る白髪の老人だった。


「お主ら、今月もご苦労じゃった」


二宮ギン──ダンジョン管理所の会長である。

その存在感は、今もなお衰えを知らない。


「ただ、まだ日本は魔石のほとんどを輸入に頼っている状態じゃ。みんなのさらなる健闘を期待するぞ」

「「はい」」


一斉に、十二人のホログラムたちが頷いた。


ギンがゆっくりと椅子に腰を預けたのを確認してから、秘書風の女性が淡々と口を開く。


「それでは、続いて共有事項に移ります」


場の空気がわずかに引き締まった。


「今月、魔物が階層を上がってきているとの報告が、3件寄せられています」


ざわ、と誰かが小さく息を呑む気配がする。


「直近の例では、渋谷ダンジョンの5層に出現した魔物が、4層に現れたとのことです」


隣のサツキが、舌打ちをするように小さく鼻を鳴らした。


「この階層移動の報告は、今月に入って3件目となります。もはや単なるイレギュラーとは考えづらく、現象としての兆候が現れている可能性があります」


魔物が階層を超えて上がってくる──。


それが意味するのは、地上へ到達するリスクの高まりだ。


誰もがその意味を理解していた。表情が引き締まり、わずかに緊張が場を覆う。


「各自、ダンジョンの監視体制を再確認し、最悪のケースに備えてください」


そう言って、秘書役の女性は一礼する。


私は黙って頷いた。


うちの子たちは大丈夫だろうか。


……まぁ大丈夫か。

あいつら探索しないし。


⸻


現在のゴブリン牧場の状況(307匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + メス64匹)

ハイメス53匹

ハイメス赤ちゃん11匹

・スカー檻(スカー + ハイメス12匹)

ハイメス11匹

ハイメス赤ちゃん1匹

・チビ檻(チビ + ハイメス12匹)

ハイメス11匹

ハイメス赤ちゃん1匹

・檻B(64匹)

ハイオス赤ちゃん64匹

・探索部隊(152匹)

ハイオス152匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻




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