第58話: ゴブタロウ、やばいやつだった
俺たちの目の前に整列しているのは、檻Aから出された――つまり、処分対象となったハイゴブリン未満のメスゴブリンたち。
総勢、1014匹。
「……これ、全部処分するのか……」
「うんっス!」
やる気満々の声で答えたのは、我らが念力の人柱、コハルである。
話し合いの末、ハイゴブリン未満のメスゴブリンは処分することにした。
「じゃ、よろしくお願いします……コハル先生」
「お任せくださいっスー!」
彼女は深呼吸をひとつしたあと、腰に手を当て、目を閉じる。
念力の準備運動なのか、肩をぐるぐると回している。
特に関係ないと思うけど、多分気分的にやりたいだけだろうな。
──ぶっ飛べっスー!
次の瞬間、大気が揺れた。
バシュン! バシュン! バシュン!
メスゴブリンたちが次々と空中に舞い上がり、凄まじい勢いで壁に叩きつけられていく。
「は、速っ……!?」
以前に見たときよりも遥かに念力の出力が上がっている。
ゴブリンの身体がまるで弾丸のように跳ね返り、床に転がる。
──15分後
地獄の15分が経過した頃、大部屋の壁の片隅には、圧倒的な量のゴブリンの死体が積み上がっていた。
まるで、山。
いや、丘かもしれない。
その頂上に立つコハルの顔は、なぜかとても爽やかだった。
「よし、次っスね!」
俺はその無邪気な笑顔から目を逸らしつつ、気を取り直した。
「スカーとチビの檻に、メスを振り分けるぞー」
「3分割でいいっスかね?」
「まぁそれでいいか」
俺たちは檻Aに残ったハイゴブリンのメスたちに指示を出し、スカーとチビの檻に15匹ずつ移動させた。
すると、彼らはそれぞれの檻の前に立ち、外に5匹、檻内に10匹──という形に調整し始めた。
「……? なにしてんだ?」
スカーとチビがこちらを向いて、両手で『10』のジェスチャーをしてくる。
「まさか……」
「ギャ!」
「え、メスは10匹が限界ってこと!? お前ら、最大10匹までしか……?」
「ギャ!」
肯定のギャ。
俺は思わず遠くにいるゴブタロウへと目をやった。
あいつは、数百匹を超えるメスを相手にしていた化け物である。
今、そのゴブタロウがどんな顔をしているかというと──
勝ち誇った顔で、鼻をほじっていた。
「……あいつ、やっぱりおかしい」
「性欲の鬼っスね……」
「個体差だったんだな。ゴブリン共通の性質じゃなかったんだ」
「最初の種馬がゴブタロウで本当によかったな……」
<ゴブタロウさんってすごかったんですね……>
しみじみと語る俺たちの背後で、スカーとチビの檻に入りきらなかったハイゴブリンのメスたちは、再びゴブタロウの檻へと移動していった。
──さて。
残る作業は換金である。
「コハルー、魔石、頼むなー」
「了解っスー!」
念力で浮かび上がる大量のビニール袋。俺たちはそれを持って、ダンジョンを後にした。
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「……2240個。金額は256万4000円だね」
プレハブ管理所で、いつものように魔石を換金してくれるゆき。
「はっはっは! 上納金を抜いて、1人あたり56万か!」
「俺の借金そろそろ完済できそうだわ……」
「えぐすぎるっス……」
<……返済が現実味を帯びてきました>
今日もしっかり稼げた。
明日はもっと稼ぐぞー!
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現在のゴブリン牧場の状況(205匹)
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・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ + メス44匹)
ハイメス26匹
ハイメス赤ちゃん18匹
・スカー檻(スカー + ハイメス10匹)
・チビ檻(チビ + ハイメス10匹)
・檻B(50匹)
ハイオス赤ちゃん50匹
・探索部隊(78匹)
ハイオス78匹
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