第56話: ゴブリンさんたち、進化する
昼頃、俺たちは大量のエナメルバッグを担いで、ダンジョン管理所に到着した。
入口のドアを開けた瞬間、カウンターに座っていたゆきが目を上げる。
「……なにそれ?」
「おー、ゆきちゃん。これ全部、魔石回収用のバッグですね」
「多すぎない?」
俺たちの後ろには、ブタオとコハルが、それぞれ3〜4個ずつバッグを肩にかけていた。
まるで部活の合宿に向かう高校生たちのような出立ちだ。
「だってさ、ビニール袋もう限界なんだよ。昨日のやつとか、すぐにでも破けそうだったし」
「なるほどね。壊れたら回収できないし、持ち運びに支障出るもんね」
ゆきは納得したように頷いたが、微妙に呆れたような表情でもあった。
「じゃ、行ってきます」
「いってらー」
軽く手を振って、俺たちは大部屋へと向かった。
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大部屋の扉を開けた瞬間、むわっとした熱気とともに、ゴブリンたちのざわめきが耳に届く。
「お、帰ってきてるな」
部屋の奥には、ずらりと並ぶハイゴブリンたちの姿があった。
「数えてみて……ん? ハイゴブリン、60匹もいるぞ」
「昨日は49匹だったよな?」
「え、増えてる……?」
俺とブタオは顔を見合わせた。
それにしても、今日はホブゴブリンの姿が見当たらない。
その中に、ひときわ目立つ、顔に大きな傷のあるハイゴブリンがいた。
「まさか……お前、スカーか!?」
「ギャ!」
鋭く短い返事。間違いない。
「おおおーっ! 進化したのか!? すげぇな、お前!」
スカーは以前よりも明らかにムキムキになっていた。
筋肉の付き方がまるで違う。特に肩から腕にかけての膨らみがすさまじい。
「これで他のハイゴブリンに舐められることもないな。いやー、よかったなあ」
それにしても……もしかして、昨日の帰還組のホブたち、全員が進化したってことか?
「……チビも進化してたりしてな」
「チビー!」
ブタオが声を上げると、奥から「ギャー!」と返事が返ってきた。
その声の主を探して視線を動かすと──いた。
「あれ……お、お前……チビか!? 本当にチビか!?」
そこには、かつてのチビとは思えない、しっかりとした体格のハイゴブリンがいた。
ただ、顔の作りと、やたらキラキラした目だけは変わっていない。
「お前も……立派になったなぁ……!」
俺は感慨深げに呟いた。
「じゃあ、魔石の回収だ! みんな、持ってこーい!」
スカーが手を振ると、数匹のハイゴブリンたちが、ずしりと重たそうなビニール袋を持ってきた。
「おお……これは……」
袋の数は18袋。
「ってことは、昨日のハイゴブリン7チームと、ホブの11チーム分……」
袋の口を開けて中を覗くと──
「……重っ」
持つのも難しいほど、パンパンに詰まった魔石がそこにはあった。
一袋あたり、少なくとも100個は入っている。
「こっちは……80個くらい? ホブのチームのほうか」
どうやら、ハーフゴブリンのチームは誰も戻ってきていないらしい。
「これは……2000個超えてるな。余裕で」
驚愕していると、チビが「ぎゃぎゃぎゃ!」と興奮気味に声をあげてきた。
「お? なになに? なんか言いたいのか? HAHAHA! なに言っているわからねぇや!」
チビは必死に身振り手振りで「見てて!」という仕草を繰り返す。
「……わかった、見てるぞ?」
チビは壁の方に向き直ると、両手を前に突き出して叫んだ。
「ギャギャギャーーー!!」
バシュッ!
チビの手から放たれた赤黒い炎の塊が、一直線に壁へと走り、炸裂した。
炎の爆音とともに、壁が少しだけえぐれる。
「お、おおおお!!? なに今の!?」
「ファイヤーボールだ!! 絶対ファイヤーボールだって! まさか魔法を使えるようになったのかよ!」
「この子、多分……ゴブリンマジシャンっス! 9階層から出てくる魔物っスよ!!」
<す、すごいです……>
俺たちはしばし、チビをぽかんと見つめていた。
──ゴブリン、進化しすぎじゃない?
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現在のゴブリン牧場の状況(1097匹)
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・檻A(ゴブタロウ + メス1016匹)
メス228匹
ハーフメス565匹
ホブメス221匹
ハイメス46匹
・檻B(18匹)
ハイオス18匹
・探索部隊(62匹)
ハイオス62匹
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