第55話: ムリムリムリ
ゴブリンの数が少ないのはまあ一旦おいておこう。
「よし、まずはオスの赤ちゃんを檻Bへ移動させてくれー!」
声をかけると、メスゴブリンたちが機敏に反応し、それぞれの腕に小さな赤ん坊を抱えて動き出す。
檻Bへと繋がるトンネルへと赤ちゃんゴブリンを流していく。
なんだか流しそうめんみたいだな。
「……やっぱ少ないよな」
全部で32匹。
今まで数百匹ほど見てきたというのに、どんな落差だ。
「産んだメスは……20から25匹くらいっスかね」
「まあ、そんなもんだな」
いつものように俺たちは赤ん坊の頭数を確認しながら、ふとゴブタロウの姿を探す。
「あいつは……」
いた。
いつも通り、檻Aの端でゴロゴロと横になっていた。片手を頭の下に入れ、もう片手で腹を掻いている。
「……なんか、いつも通りっちゃいつも通りだが、仕事放棄感がすごいな」
「流石にあれだけのメスをヤれば、限界くるってもんよ」
ブタオが腕を組みながら真顔で言う。
「単純に、休憩中ってだけかもっスよ」
コハルがぽそっと補足した。
すると、チアキがスマホをポチポチしてからスタンプ付きのチャットを送ってくる。
《もしかしたら、体調がすぐれないのかもしれません……》
「……体調不良なぁ。あいつにそんな繊細な感覚あるのか?」
ブタオがぽんと手を叩く。
「なぁ、飼育スキルでさ、妊娠状況見てみねぇか?」
「お、それいいな」
久しぶりに俺は飼育スキルを起動し、目の前のメスゴブリンたちの情報を読み取っていく。
──妊娠していない
──妊娠していない
──妊娠していない……。
「……ううむ、妊娠してない奴ばっかだ」
ページをめくるように、次々とステータスを読み取っていくが、妊娠している個体は稀だ。
しかし、しばらく確認していくうちに、ある共通点が浮かび上がってきた。
「……妊娠してるのって、ほぼハイゴブリンだけじゃね?」
「マジか。ホブは?」
「ホブも数匹だけ妊娠してる。けど、通常種とハーフはゼロだ」
一瞬の静寂。
そして俺は叫ぶ。
「ゴブタロウ! お前……選り好みしてやがるな!?」
「……なんだと」
ブタオが呟いた。
「いや……でも、わかる。理由はわかるぞ」
「……うむ」
自然と全員が、ハイゴブリンのメスの方に視線を向けた。
彼女たちは──スタイルがいい。
胸は小さすぎず、大きすぎず。
腰はしっかりとくびれ。
尻は形よく上を向き、張りがある。
「顔は……まあ、ゴブリンだけど」
「顔を隠せば俺はイケる」
「むしろお願いしたいまである……」
「男子ども不潔っス」
コハルの低い声が突き刺さる。
《私、見損ないました!》
顔を赤くしたチアキのチャットが突き刺さる。
「……いや、心の声が漏れてただけなんだけど……」
仕方ない。
ここは、喝を入れるしかない。
「ゴブタロウ! お前なに選り好みしてやがる! 全員とヤれ!」
その言葉に、ゴブタロウがのそのそと起き上がった。
ゆっくりとこちらを向き、
手を胸の前で軽く上げた。
そして──
情けない、なんとも言えない表情で首を横に振った!
その目が語っていた。
『ムリムリ、ムリだって。だって俺の息子が反応しないんだもん。ムリなものはムリなのよ』
俺たちは全員、無言で納得した。
ゴブタロウにだって、好みくらいある。
俺のスキルの指示が通らないレベルなのだ。
本当にムリなのだろう。
どうしよっかねぇ。
他のオスゴブリンを当てがうか。
「今日のところは一旦帰ろうか」
俺たちはダンジョンをあとにした
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「おかえりー」
「ういーす」
ゆきがいつものように出迎えてくれる。
「魔石は?」
「これっです!」
魔石がたらふく詰まったビニール袋をいくつもカウンターの上に乗せていく。
「今日もずいぶんあるね」
ゆきは魔石の袋を軽々しく持ち上げ、機械に流し込む。
「1710個……195万2000円だね」
えぐい!!!
えぐすぎるぞゴブリン牧場!!!
1人あたり50万近くを1日で稼いでしまった。
月収が1500万かぁ。
このペースのままでも、2ヶ月で俺の借金終わるぞ?
もう借金のプレッシャーがなくなっていることに安堵するのだった。
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現在のゴブリン牧場の状況(1577匹)
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・檻A(ゴブタロウ + メス1016匹)
メス228匹
ハーフメス565匹
ホブメス221匹
ハイメス32匹
ハイメス赤ちゃん14匹
・檻B(18匹)
ハイオス赤ちゃん18匹
・探索部隊(528匹)
ハーフオス253匹
ホブオス226匹
ハイオス49匹
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