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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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35/98

第35話: スキルレベルアップ

朝。

青梅ダンジョンの管理所に到着すると、今日も静かにドアが開いた。


「おはようございまーす」


俺たち三人――ボン、ブタオ、コハルが揃って中に入ると、いつも通りカウンターの奥にはゆきちゃんの姿があった。

だが、今日はなぜかスマホをいじっていない。顔をしっかりとこちらに向けていた。


「……頑張ってねー」


その言葉に、一瞬、時が止まった気がした。


え、いま、こっち見てたよな?

え、いま、スマホ見てなかったよな?

え、いま、「頑張ってね」って言ったよな?


「上納10%の効果か……」

「払うだけの価値はあるな……」

「2人とも正直っス」


もはやカウンターの向こうに微笑むゆきちゃんが、地元神社の守り神みたいに見えてきた。

ありがたや、ありがたや。


「……よし、行くぞ」


俺たちはダンジョンに入り、通い慣れた通路を抜け、大部屋へと向かった。


通路を抜けた先の広い空間──俺たちの“牧場”に着くと、まずは昨日処分したゴブリンの死体跡に向かう。

コハルが念力で魔石を回収してくれる。


「回収完了っス!」


相変わらずの効率。

この子なしでは牧場がもう回りません。


「じゃ、檻B行こうか」

「ショットガンしたいっスー!」


コハルが早くも腕をぶんぶん振り回しながら浮かれ気味に叫んだ。


「ショットガンやりたいっスー!」


大部屋の隅、檻Bの前でコハルが両手を挙げてはしゃぐ。

すでに中には処分予定のオスゴブリンたちがギュウギュウに詰め込まれており、今か今かと震えている。


「はいはい……疲れるんだけどなー……」


ブタオがため息まじりに手をかざすと、足元の土がぐにゃりと浮かび上がり、空中で次々に固まっていく。

拳大の土塊が数十個、規則的に並んだ。


「お願いしまーす!」


コハルが両手を構える。念力が発動され、土の弾丸たちが空中で一斉に震え、次の瞬間──


「いっけぇぇええええっスーーー!!」


土のショットガン弾幕が、檻の中に向かって飛んでいった。

弾丸は音を立てて飛び、次々にゴブリンに直撃。骨が砕け、肉が裂け、次々に倒れていく。


「ぎゃぎゃっ!?」「ぎぃいっ……!」


阿鼻叫喚。まるでホラー映画のワンシーンのような殺戮劇。

それでも、コハルは容赦なく、ゴブリンに弾を撃ち込んだ。


弾が足りなかったようで、20匹程度生き残っている。


「ふぅーっ、気持ちよかったっスー!」


彼女が満足そうに息を吐いた瞬間、俺たち三人の体に──ピキン、と何かが走った。


《スキルレベルが上昇しました》


「……レベル上がった!」


「おっしゃー! レベル5っス! 念力もLv2になったっスよー!」


コハルが飛び跳ねながら手を突き出すと、近くの空間がビリビリと震えた。


「おおお……前よりも出力が上がった気がするっスー!」


そのまま、彼女は檻の中からまだ生きていた1匹のオスゴブリンを浮かせ、空中でブンブンと振り回しはじめる。


「うおお、トンボみたいっスー!」

「うわ、あれたぶん首やられてるぞ……」

「うむ、もう死んでるかもしんねぇな……」


あまりにも扱いが雑すぎて、逆に心配になる。


その横で、俺のスキルも変化していた。


《飼育Lv2:「指示」解放》


「おっ、俺もレベル上がってる……スキル『指示』って書いてあるな」

「おお、それって……ゴブリンに命令できるってことか?」

「たぶん……ちょっと試してみるか?」


──新しい力の片鱗が、少しずつ見え始めていた。


「よーし、やってみろよ」


ブタオに促され、俺は一歩前に出た。


目の前には、まだ処分されていないオスゴブリンたちが残った檻B。

自分たちも殺されてしまうのかとビクビクしている。


数はざっと20匹ほど──さて、どうなるか


「……いくぞ」


俺は息を吸い込み、胸を張って叫んだ。


「ゴブリンどもー!! さわげー!!」

「「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」」


ゴブリンたちが一斉に奇声を上げ、飛び跳ね、檻を叩き出す。見事なまでに騒いでくれる。

だが──


「うるせー!!」

「「……」」


その一言で、場が静まり返った。


全員、ぴたっと動きを止め、まるで怒られた犬のようにシュンとするゴブリンたち。


「……これ、すごくね?」

「マジで従ってんじゃん……」

「漫才ができるっスね!」


俺たちは顔を見合わせ、驚きと期待が混じった表情を浮かべた。


「……じゃ、次行こうか」


檻の鍵を開け、残ったオスゴブリンを外に出す。

どの個体も、おとなしく俺たちの前に並んでしゃがみ込み、無言で待機している。


「えーと、暴れ出すかもしれないから、もしもの時は頼むぞ、コハル」

「ラジャーっス!」


コハルが構える中、俺はもう一度スキルを発動してみた。


「全員──その場でジャンプ!」

「「ぎゃっ!ぎゃっ!」」


まるで体操選手のように揃って跳ね始めるオスゴブリンたち。


「おおお……」

「すげぇな、こりゃ……」

「もうちょいムチャな命令も試してみるっス?」


「だな……えーと、お前だ」


俺は一匹のゴブリンを指さし、命じた。


「自殺しろ!」


するとそのゴブリン、ピクリとも動かず、こちらを睨みつけてくるだけ。


「……無理っぽいな」

「じゃあ、戦え。周りと喧嘩しろ!」


再び命じるが、今度も反応なし。


「……なんでも命令できるわけじゃねーんだな」

「指示だからっスからね?」


そのとき、ブタオがぽつりとつぶやいた。


「……なあ、野良のゴブリンと戦わせるのはどうだ?」

「それめちゃくちゃ面白そうっスー!」

「あー、野良のゴブリンとは戦うのかね?」


ブタオがなかなかいい案を出してくれた。

もしもこれがうまくいった場合、生まれたゴブリンをただ処分するだけでなく、探索させて野良ゴブリンの魔石を回収できるかもしれない。


これはワクワクが止まりませんなぁ?


俺たちは檻の外に並ぶゴブリンの中から、やや大柄で元気そうな5匹を選び出し、ほかの残りはコハルの念力でまとめて処分した。


さて、残った5匹にダンジョンを探索してもらいましょうか。


現在のゴブリン牧場の状況(134匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・檻A(ゴブタロウ + メス133匹)

ゴブタロウ

メス89匹

ハーフメス40匹

ホブメス4匹

メス赤ちゃん?匹

ハーフメス赤ちゃん?匹

ホブメス赤ちゃん?匹

・檻B

0匹

・処分済み

0匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻


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