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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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33/98

第33話: ゴブリンさん、月収100万ですって

ダンジョンの入口ゲートを抜け、俺たちは今日も無言のまま大部屋へと進んでいく。すっかり日課になった作業だが、相変わらず湿っぽくて陰気な通路は好きになれない。


「……あった」


昨日処分したオスたちの魔石が、大部屋の隅にきっちり48個、黒く輝いていた。


「ナイス! じゃ、コハル、いつもどおり──」

「はいっスー!」


コハルが指を鳴らすと、魔石がふわりと宙に浮かび、ビニール袋の中へひとつずつ丁寧に収納されていく。すでに安定の職人技。


「よし、じゃあ次──檻Bだな」


俺たちは魔石入りの袋を手に、例の檻へ向かう。


檻Bには、昨日生まれたオスゴブリンたち──48匹がぎゅうぎゅう詰めにされていた。ぎゃあぎゃあと喚くその様は、もう完全に処分待ち。


「よし、いくっスかー!」


いつものようにコハルが両手を構え──たその時、


「待った!!」


ドン! と地響きのような声とともに、ブタオが片手を前に差し出した。


「お、おう?」

「お前らには黙っていたがな……昨日のレベルアップで、俺の土魔法がLv2になったのだ……!」

「は?」

「刮目せよ! 我が初級土魔法Lv2の力を!!」


得意げに両足を開き、手を前に構えたブタオ。

ふんぬぅぅぅぅぅぅ!!!と全力で気合いを入れると──


ズゴゴゴゴ!!


空中に拳大の土の弾丸がずらりと数十発、列を成して現れた。しかも、すべてが先端鋭く尖っている。威力は見た目以上だ。


「うぉぉぉぉ!?」

「やっば! なんか超強そうっスー!」


……10秒ほど待ったが、ブタオは何もしない。


「……で、これをどうするんだ?」

「うむ、コハルちゃん。これを念力で─飛ばしてくれ!」

「お前が飛ばせないんかい!!!」


即ツッコミ。

空中に出せるようになっただけかい!

いや、すごいけども!


「……俺にはまだここまでのようだ」

「初級の名は伊達じゃないってことか」


それでもコハルは構える。ずらりと並んだ土の弾丸を、念力で一斉に浮かせ──


「そいやっス!!」


バシュンッ!!!


まるでショットガン。鋭い土弾が一斉に檻Bに突き刺さり、悲鳴を上げる間もなく、オスゴブリンたちが吹き飛ぶ。


ズガァァァン!!


地鳴りとともに処分完了。土と血と肉片が壁に張りつき、しばしの静寂。


「……終わった?」

「うん、きれいに片付いたっス」

「ふぅ……つ、疲れた。……やっぱり明日からはコハルちゃん、頼むわ」

「だと思ったっスー!」


ふたりが笑い、俺は苦笑い。


「じゃ、次は……檻Aっスね!」


いつものように意気揚々とコハルが先導し、俺たちは檻Aへと向かった。扉を開けると、ゴブタロウが丸くなってスヤスヤ眠っており、その周囲ではメスたちがせっせと赤ちゃんの世話をしていた。


「よし、出産チェック開始だ」


俺の合図に、コハルが目を輝かせながら檻の上部に手をかざす。


「いっけぇーっス!」


ずらりと宙に浮かぶ、小さな赤ちゃんゴブリンたち。ふわふわと浮かぶその数は……尋常じゃない。


「ちょ、待って待って……これ……」

「めっちゃ多いっスよ!数えるっスー!」


コハルと俺とブタオ、3人で必死に性別と種別を確認していく。


「オス、ゴブリンが33……ハーフが35……え、ホブいるぞ!? 1匹だけど!」


「マジかよ!? えーと、メスは……ゴブリン10、ハーフ9、ホブが1……って、合計……」


「99匹!!?」


コハルが指を突き上げて叫ぶ。


「ハーフだけで44匹……どういうこと!?」

「これ……一気に10万超えたっスよね!? ていうかさ、月の収入が……300万超えたってことじゃないっスか!?」

「月収100万プレイヤー……」


俺が呆然と呟いたそのとき、


「俺が!! 年収1000万超えの男だーーー!!!」


ブタオが両手を突き上げて絶叫する。


「わー! やったっスー! 金持ちっスー!」


3人で小躍りしながら、テンション爆上がりのままぐるぐるとその場で回った。ゴブタロウがちょっとだけ目を開けてこっちを見たが、また眠りに戻った。


「……よし、じゃあ赤ちゃんたちを分けようか」

「了解っス!」


俺たちは赤ちゃんを丁寧に種類と性別ごとに分類し、オスは檻Bへ、メスは檻Aへと分けて収容していく。


──ゴブリン牧場、絶好調。


このままいけば、もしかして来月には……。


「ウチら、ほんとにヤバいとこまで来てないっスか?」

「ヤバい。ヤバいが、これはまだ序章だ」

「うむ。月100万ごときで俺らは止まらんぞ」

「な、なんかカッケェっス!」


コハルちゃん、惚れてくれてもいいんだぜ?


---


「ふぅ……今日もよう働いたなぁ」


管理所のカウンターに、俺たちはビニール袋いっぱいの魔石をドサッと置いた。全部で48個。赤く、青く、時に淡く光る魔石たちが、ビニール越しでもしっかり存在感を放っている。


「……」

「……」

「……」


受付嬢・ゆきちゃんは、無言でその魔石たちを見つめていた。


目が細められているわけでもなく、眉が動いているわけでもない。ただただ無表情で、ガン見。


(えっ、なんか……空気ヤバくね?)

(あれっ……? そんな変な量か?)

(え……これ普通の量じゃなかったっスか? いや、昨日よりは増えてるっスけど……!)


俺たち三人は、顔を見合わせ、無言のテレパシーで「おい誰か何とかしろよ!」と押し付け合う。


ゆきちゃんは無言のまま、端末を取り出してパパッと何かを操作し、言った。


「……すごく順調に増えてるね。順調すぎるくらい」


その声はまるで機械のように抑揚がなく、感情の一切を排除したようなテンポだった。


「じゃあ、3分割で振り込んどくね」


そう言うと、またスマホの画面に視線を戻し、指先をスッスと滑らせていく。


「い、いや、あの! コハルさんのスキルがもう、めちゃくちゃ強くてですね! 処理速度とか、その、はい、スキル性能がぶっ壊れてて!」


俺が慌てて弁解を始めると、ゆきちゃんはスマホをいじりながら、「ふーん」とだけ言った。


その一言に、言い訳が喉で詰まる。


(……あれ? これもう、完全に疑われてるやつ……?)

(明日、さらに数増える予定なんだけど……)

(これ、マジでヤバいやつっス……?)


三人の間に、沈黙が落ちた。


──現金だけが、静かに口座に振り込まれていく。



現在のゴブリン牧場の状況(171匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・檻A(ゴブタロウ + メス101匹)

ゴブタロウ

メス65匹

ハーフメス15匹

ホブメス1匹

メス赤ちゃん10匹

ハーフメス赤ちゃん9匹

ホブメス赤ちゃん1匹

・檻B(オス69匹)

オス33匹

ハーフ35匹

ホブ1匹

・処分済み

オス43匹

ハーフ15匹

ホブ1匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻




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