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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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32/98

第32話: ゴブリンさん、さらに大きい赤ちゃんですよ!

「おっはよーございまーすっス!」


コハルの快活な声が、朝のダンジョン管理所に響き渡る。

プレハブのドアを開けると、ゆきがいつものようにスマホをいじりながら片手を上げた。


「おはよー。……今日も元気だね」

「もちろんっス! 今日もバッチリ働くっスよー!」


俺とブタオも軽く会釈をして「行ってきまーす」と言い残し、ダンジョンへと向かった。


──


ダンジョンゲートをくぐり、湿った空気に包まれる。

いつもの通路を抜け、大部屋へと向かうと──昨日、処分したゴブリンの死体を積んでいたあの隅に立つ。


「おっ、あるある」


ブタオが声を上げる。


地面には、昨日までゴブリンだった存在の残滓──黒く輝く魔石が、ずらりと並んでいた。

数えると、ちょうど42個。


「おおお……! これは気持ちいいやつっス!」


コハルが両手を広げて、にっこりと笑う。


「じゃあ、回収お願いね」

「任せるっス!」


コハルが構えた指先から、ふわっと空気が揺れる。

魔石がゆるやかに浮き上がり、まるで列車のようにビニール袋へと吸い込まれていく。


「ぽいっ、ぽいっ、ぽいっス〜……はい、回収完了っス!」


器用に念力で42個をすべて袋に収めたコハルが、満足そうに腰に手を当てる。


「……ところでさ」


俺がふと思いついて呟いた。


「ハーフの魔石って、いくらなんだろうな?」

「うーん、普通のゴブリンが1000円っスからね。ハーフなら……同じくらいっスかね?」

「ホブの半分として1500円くらいだったら嬉しいんだけどな」

「でもまあ、42個あれば1000円でも一人14000円は確定だぞ」

「よっしゃ! もうやる気しかないっスー!!」


気合いを入れ直した俺たちは、魔石の袋を手に、大部屋の奥──今日もぎっしり詰まっているであろう檻Bへと向かっていった。


檻Bに着くと、そこにはぎゅうぎゅうに詰まったオスゴブリンたちが、相変わらず喧しくうごめいていた。


「今日は……48匹っスね」


コハルが肩を回しながら数を確認する。


「じゃ、殺処分お願いします」


俺がビニール袋を置いてから合図を出すと、コハルが両手を掲げる。


「よっしゃ、まとめて行くっスよー!」


ビュン、と空気が唸った瞬間、オスゴブリンたちが一斉に宙に浮かび──


「発射っスー!」


──ドゴォォォォン!


バゴォン、グシャア、ズザァッ!


壁に激突し、音を立てて崩れ落ちていくオスゴブリンたち。

見事に大部屋の隅に重なるように落ちていくその様子は、もはや処分芸の域だった。


「お見事……!」

「ありがとっスー!」


その瞬間、頭の中にビリリとした感覚が走る。


「……あっ、レベル上がった」

「俺も」

「自分もっス!」


3人同時にレベル4に到達したのだった。


「うおおっ! なんか体が軽いぞ!?」


突然、ブタオが勢いよく地面を蹴って──


「見よ! 我が奥義!!」


ズババババッ!!


デブにしてはものすごいスピードで、反復横跳びを決めるブタオ。


「ちょ、おまっ……動き早っ!?」

「うおおお、これが動けるデブっスか!!」


俺とコハルが目を丸くして見つめる中、ブタオは満面の笑みで動き回る。無駄に躍動していた。

うん、すごくどうでもいい。


「さて、次は檻Aだな……」


浮かれすぎるブタオを連れて、俺たちはメスの檻Aへ向かう。


ゴブタロウは今日もどっしりとした体で、檻の奥で昼寝中だった。


「じゃ、いつも通りいくっスねー!」


コハルが開口部に手をかざすと、赤ちゃんゴブリンたちがふわりと浮かび上がる。


「わぁー……今日は多いな……」


空中にずらりと浮かんだ赤ちゃんの数、全部で74匹。


「じゃ、性別チェック行きまーすっス!」


くるりと指を回すと、赤ちゃんたちが整列して、股間をこちらに向けてくる。


「オス、オス、オス、……メス、メス、でかっ!」

「あ、これもデカい」


次々と確認していくうちに、コハルの表情が変わっていく。


「オス59匹、メス15匹──で、そのうちオスで16匹、メスで8匹が、ちょっと大きめっスね」

「ハーフさんのご入場でーす!」

「でも、さらにその中に、ひときわデカいやつが1匹ずつ、オスとメスにいるっス!」

「これ……ホブじゃね?」

「マジでか」


浮かんだ2体は、他のハーフよりも明らかに一回り大きい。


「これはもう、確定でいい気がするな……」

「ホブゴブリン、こいつだけで3000円……じゅるり」

「じゃ、とりあえず振り分けるか」

「オスは檻Bへ、メスは檻Aに戻すっス!」


コハルが丁寧に浮かんだ赤ちゃんたちを仕分けていく。

ホブと思われる個体も、他と同様に慎重に檻へ移されていく。


すべての作業を終えた俺たちは、魔石がパンパンに詰まったビニール袋を手に、ダンジョンをあとにした。


「今日も……いや、全然働いてる気がしないわ」

「1日1時間の簡単なお仕事です」

「これが勝ち組ってやつっスね!」


管理所のプレハブへ戻ると、いつものようにカウンター越しでスマホをいじっているゆきが、ちらりと俺たちを見る。


「おかえりー。今日も稼いだ?」

「任せてください。今日は42個!」


ビニール袋をドンとカウンターに置くと、ゆきがスマホを置き、ゆっくりと立ち上がる。


「ふむ……」


手際よく中の魔石を一つひとつ確認しながら、数を数えていく。


「……40、41、42。たしかにあるね」


ここまではいつも通り──だったのだが。


「……あら?」


ゆきの手がふと止まり、眉をひそめた。


「これ、ちょっと品質がいいやつが混ざってるわ」


そう言って、2つの魔石を他と並べて比べて見せてくる。


確かに、わずかに大きくて、光り方が微妙に違う。

色も少しだけ深い黒というか、艶が強い感じだ。


「この2個、普通のゴブリンじゃないわね。ホブよりは下だけど……その間くらいかな」

「ま、まじっスか……?」


コハルがわざとらしく反応する。


「……で? これ、どこで拾ったの?」


ゆきの問いに、俺とブタオが思わず目を合わせた。

隠すか、言うか──一瞬悩んだ末に、ブタオが先に口を開いた。


「に、2階です! ちょっと大きめのがいて……たぶん、そいつのかと!」


コハルも慌てて頷く。


「そ、そうっス! なんかちょっとデカいやつだったっス!」


ゆきはしばらく俺たちをじーっと見つめた後、ふっと肩をすくめた。


「……ふーん。まあ、気をつけなよ。質がいいってことは、それだけ強いってことだからさ」

「は、はいっス!」


コハルがピシッと姿勢を正す。なぜか俺たちもつられて姿勢が正された。


「この品質だと、1個2000円かな。他は1000円として──」


ゆきが電卓を叩いく。


「合計、44000円ね」

「よっしゃーー!!」


俺たち3人がガッツポーズ。

ハーフさん、ごちです!


「3人で割って……14000円ずつ。で、残りの2000円は……」

「じゃんけんっスね!」


ジャンケンは俺だけ負けた。

いつ勝てるんだろう。

ぐすん。


「じゃ、振り込んでおくから」

「あざっスー!」


そうなのだ。

今日から現金で渡すのをやめて振り込みにしてもらう。

銀行アプリで残高を見るのが趣味になっちまうなぁ?


明日もいっちょ稼いだろう!



現在のゴブリン牧場の状況(141匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・檻A

ゴブタロウ

メス58匹

ハーフメス8匹

メス赤ちゃん7匹

ハーフメス赤ちゃん7匹

ホブメス1赤ちゃん匹

・檻B

オス43匹

ハーフ15匹

ホブ1匹

・処分済み

オス44匹

ハーフ4匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻




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