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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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第26話: 妹ちゃん、ゴブリン牧場を見学する

「おっはよーございまーすっス!」


朝から全力のテンションで、プレハブのドアを開けるコハル。

その後ろで、俺とブタオがついていくように建物に入る。


中では、いつも通りゆきがスマホをいじっていた。

俺たちを見て、軽く片手を上げる。


「おはよー」

「今日は昨日よりも働くっスよー!」

「いや、無理しなくていいからね」


ゆきはそう言いつつも、少しだけ口元がゆるんでいた。


「……じゃあ、今日も行ってきまーす」

「死なないでねー」


俺にはスマホを見ながらの空返事。

いいんだけどね。

いいんだけど、妹ちゃんとの差があってちょっと寂しいです。


今日は、俺たちのゴブリン牧場を見せる。

その覚悟とともに、俺たちはゲートへと向かった。


「今日はどこに行くんスか?」

「ま、ちょっと奥まで案内しようかと思っててな」

「ほうっス! なんかワクワクするっスねー!」


俺とブタオは小声で顔を寄せ合う。


「……なあ、なんて説明する?」

「んー……もう、普通に見せちまえばいいんじゃね?」

「警戒されたら終わりなんだぞ。ここまできたら、なるべくナチュラルに持っていきたい」

「だな。まずは普通の探索っぽくしながら、徐々に空気をつくる感じでいこう」

「何をひそひそ話してるっスか?」


コハルが不思議そうに覗き込んでくる。

俺はとっさに笑ってごまかした。


「いやー、今日は特別な体験してもらおうって話だよ」

「おー! テンション上がってきたっスー! 稼ぐっスー!」


にっこりと笑う彼女に、なんとなく背筋が伸びる。


ダンジョンの通路を歩きながら、俺とブタオは小声でひそひそと相談を続けていた。


「どうする? もうそろそろ“例の場所”だぞ」

「いきなり『実はゴブリン牧場やってました』って言ったら絶対びっくりするよな」

「でも引っ張りすぎても、変に怪しまれるしなぁ……」


悩みながら歩く俺たちのすぐ後ろでは、スキップ混じりの足取りでコハルがついてきていた。


「先輩たち、今日はちょっとテンション低めっスね? 夜更かしでもしたっスかー?」

「いや、そんなことないぞー!」

「ちょっとお腹の調子がな……!」


我ながら苦しい言い訳だったが、コハルは気にせずスルーしてくれた。


──だがその直後。


「ギャッギャッ!」


通路の先から、ゴブリンの雄叫び。

バタバタと小さな足音とともに、1匹の野良ゴブリンが飛び出してきた。


「おっ、カモっスね!」


コハルがさっと構え──


「ふんっス!」


空気がビリリと揺れるような感覚。

ゴブリンの体が宙に浮かび、そのまま……


「行けっス!」


──ズドォォォォンッ!


ゴブリンが、大部屋の入り口を隠していた土の偽装壁に思いきり叩きつけられた。

壁が崩れる。

ブワァッと土煙が舞い、奥の空間がむき出しになる。


「おいおいおいおいおいおいおいっ!!!?」

「まじかよぉ!? 俺の土魔法が負けたぁぁぁ!!!」


土埃の向こう、開いた大部屋の奥がくっきりと見える。

檻の中、ずらりと並ぶゴブリンたち。

檻Aでは、メスゴブリンたちがのんびりと床に座り、赤ちゃんゴブリンがうろちょろしていた。

檻Bでは、オスたちが無表情でぎゅうぎゅうに詰まってる。


そして、その全てを見たコハルが──


「……え? え? あれ……なんスか?」


一瞬、ぽかんと口を開けて固まったかと思うと──


「大量のゴブリンっスー!! ぶっ殺っス!!」

「わー! 待て待てー!!」

「コハルちゃーん!! ちょっとストップー!!」


俺とブタオが慌てて両腕を広げて止めにかかる。

コハルはすでに石を浮かせており、秒で撃ちかねない状態だった。


「ちょちょちょ!! 違うんだって! ここはその……牧場!」

「ゴブリン牧場っスか!? ……いや、余計意味わからんっス!!」

「俺たちがこの子たちの保護者なんですー!!!」

「殺さないでー!!」


はちゃめちゃな騒ぎの中、コハルがようやく動きを止めた。


「……えーっと。とりあえず、話を聞くっス」


石をふわりと地面に下ろし、コハルがこちらをジト目で見つめていた。


俺とブタオは、汗をぬぐいながら顔を見合わせる。


──観念の時間である。


「……まずは、深呼吸しようか」

「……はいっス」


3人で、すぅ〜、はぁ〜と深呼吸。


「よし」


俺はブタオの背中をポンと叩き、視線を正面に戻す。


「コハル。これは俺たちが育ててるゴブリンたちだ」

「育ててる、って……?」


眉をひそめながら檻Aを見つめるコハル。

その視線の先では、ゴブタロウがのんびりと欠伸していた。


「最初にダンジョンに入った時、飼育っていうスキルを手に入れてさ。正直、なんの役にも立たないって思ってたんだよ」


俺は、あの日のことを思い出すように語る。


「でも、試しにゴブリンを檻に閉じ込めてみたら……なんか、飼育スキルが発動しまして……」

「んで、メス入れたら……子供できて……」

「子供また育てたら……またできて……」

「そしたら魔石がたくさん手に入って……」

「つまり、ゴブリン牧場っスね」

「「そう、それ!」」


俺たちは声を揃えて肯定する。


「……うわぁ、正直ちょっと引くっスね」


コハルが引き気味の顔で言った。


「でも……ぶっちゃけ、めちゃくちゃ稼げそうっス」

「いやほんとそれな」


気づけば、コハルの表情が少しずつ柔らかくなっていた。


「ていうか、これ、違法じゃないんスよね?」

「いや、一応……誰にもバレてないってだけで……」

「じゃあアウトじゃないっスか!」

「しーっ! 声がでかい!」


俺があわてて口に指を当てると、コハルは照れくさそうに口を閉じた。


「でも……正直、ちょっと感動したっス」

「へ?」

「こういう、泥臭くて、誰にも知られずに頑張ってる感じ、好きっスよ」

「そ、そう?」

「うちの借金も、これで返せたりするんスかね……?」


ふと真剣な顔で、コハルがつぶやいた。


「いや、実際……念力があれば作業めっちゃ楽になる、はず。助けてもらえたら……正直、ありがたい」

「マジっスか!? わー、うれしいっスー!」


飛び跳ねて喜ぶコハルを見て、俺はひとつだけ念を押す。


「でも、誰にも言っちゃダメだぞ? 絶対な?」

「わかってるっスよー!」

「……姉ちゃんにも?」

「絶対にムリっス……! バレたらマジで殺されるっス……!」


まさかの全力拒否。

でもまあ、それくらいでちょうどいい。


「じゃあ……正式に、仲間として迎えよう」

「やったーっスー!! ゴブリン牧場バイト、始めまーす!」


両手を挙げてぴょんぴょん跳ねるコハルを見て、俺とブタオは顔を見合わせる。


「……本当に大丈夫か?」

「まあ、勢いで突き進むタイプだろ。なんとかなるって」

「じゃ、まずは今いるオスの処分からだな」

「処分っスか!? やっちゃっていいんスか!?」

「落ち着け、まずはやり方教えるから」

「はいっス! 師匠!」

「いや、別に弟子取った覚えはないけど……」


喧騒の中、ゴブタロウが「ギャ」と鳴いた気がした。


牧場は新たな戦力を得て、さらなる賑わいを見せようとしていた。



現在のゴブリン牧場の状況(47匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・檻A(ゴブタロウ、メス26匹(赤ちゃん4匹))

・檻B(オス20匹)

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