第25話: 妹さん、一緒に天下取らない?
「ギャギャギャーッ!!」
ダンジョンの広場に鳴り響くゴブリンの雄叫び。そして──
「ふんっス!」
宙に浮いた石が一瞬でゴブリンのこめかみに直撃し、壁に叩きつけられた。
──ドゴッ!
「はいっ、8匹目っスー!」
両手を広げて満面の笑みで振り返るコハル。
「……強いな」
「これがチートか」
俺とブタオは、後ろからついていって見守るだけ。
あと魔石を取る作業だけこちらで対応する。
「これでレベルアップは余裕っスかねー?」
そう言いながら、コハルはスキップ気味にゴブリンの死体を飛び越えていく。
「この子、探索者の才能しかないな。むしろ他の生き方ができない気がする」
「なあ、ボン。ちょっと小声でいいか」
「ん?」
ブタオがひそひそ声で言った。
「ぶっちゃけ、あの子……牧場手伝ってくれたら作業効率めっちゃ上がると思わない?」
「……それな」
ナイフ要らずの念力、処分も楽、回収も楽。
言われてみれば、うちの牧場との相性が良すぎる。
「でもなぁ……秘密守れるかって問題がな」
「隠し事とかできなさそうだよな……」
そう話していると、コハルがこちらにトコトコと戻ってくる。
「もう一匹倒したら、なんかレベル上がったっス! 体の中ポカポカするっス!」
「お、上がったんだ」
「はいっス! なんかレベル2になったっスって聞こえたっス!」
「え、そこまでっス語なのか」
達成感に満ちた顔でピースサインを決めてくる。
そのままダンジョンの入り口方向へ歩き始めた俺たちは、帰り道で軽く話を切り出す。
「なあ、コハル。将来的にさ……ダンジョン攻略って、本格的に続けてくつもり?」
「うーん……正直、怪我とか怖いっスし、あんまりやりたくないっスけど……」
一瞬、声が小さくなる。
「……借金があるっスから、稼がないとなんスよね」
「借金?」
俺とブタオが同時に首を傾げると、コハルはあっけらかんと答えた。
「元カレの連帯保証人になったら、一億円借金背負ったっス!」
「えっっっ!?!?」
思わず声が裏返る。
「え、なにそれ? なにその昭和の詐欺事件みたいなやつ?」
「自分でもビビったっスけど、書類にハンコ押してたみたいなんスよね〜!」
「アホすぎる……」
「えへへっ、褒め言葉として受け取っとくっス!」
あっけらかんと笑ってる場合じゃない。
でも、そのおかげで俺の中にひとつの可能性が芽生えた。
──コハル、この子……俺たちと一緒に牧場やれるんじゃないか?
口には出さないが、ブタオと一瞬だけ目が合った。
同じ考えだったようで、こくりと頷く。
「なあ、コハル」
「なんスかー?」
俺は立ち止まり、真顔になる。
「もしさ、ダンジョンで、危なくなくて、楽にお金が稼げる方法があるとしたら……どうする?」
「うわっ、それ絶対怪しい勧誘っスね! 私はもう騙されないっス!」
軽口を叩くコハル。
だが、顔は真剣だった。
「……でも。秘密にできることなら、話は聞くっスよ?」
「ほんとに?」
「一億あるっスからね」
コハルは右手を人差し指だけ立てて、くるくる回しながら言った。
「秘密は守れるっス! 口、堅いっスから!」
「いや、軽そうにしか見えない」
「大丈夫っス! 姉ちゃんの大事にしてたプリン食べたのバレてないっス!」
「お、おう」
「で、稼げる方法って何っス?」
すっごい迷う
迷うが、ゴブリンが何百と増えた時、手作業でやるのはかなり大変だ
そうなると念力スキル、絶対に欲しいっス
「ダンジョンの同行はレベルアップするまでって話だったけど、明日ももう1度ダンジョン潜ろうか。その時に話すよ」
「わかったっス。楽しみにしてるっス。」
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コハルを連れてダンジョンゲートを抜けると、昼過ぎの陽射しが肌にじりっと差し込んだ。
「ただいま戻りましたっス!」
プレハブの扉を開けると、カウンター奥ではいつものようにゆきがスマホをいじっていた。
「おかえりー。レベル上がった?」
「上がったっス! やったっスよー!」
「よかったじゃん。ありがとね君たち」
ゆきが軽く手を振ると、コハルも満面の笑みでガッツポーズを返した。
「マジで感謝っス!」
「お、おう。俺らなんもしてねぇけど」
「じゃあ、集合時間は今日と同じでいいっスか?」
「ああ、同じで」
「了解っスー! そんじゃ、また明日っス!」
プレハブを出ていくコハルの背中を見送りながら、俺とブタオはしばらく黙っていた。
「……で、どうする?」
「行くしかないだろ。処分と出産確認」
「だよな」
俺たちはそのまま何事もなかったかのように再びゲートに入り、ダンジョンの奥──自分たちだけの秘密の牧場へと戻っていった。
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「……じゃ、いつものやるか」
「サクッと片付けて帰ろうぜ」
まずは、今日成体化したオスゴブリン17匹を小型檻から処分。
ちょっと筋肉痛になりそうです。
「はい、17体目完了。魔石も回収して、っと」
「日給8500円、ありがたし」
そのあとは、檻Aの出産チェック。
すでにぐったりしているメスたちの周囲には、新たな赤ちゃんたちの姿が。
「うお……また多いな」
数をざっと確認し、物干し竿で一匹ずつ引き出して性別判定。
「オス……オス……メス!」
「おおっ!」
今日は24匹中4匹がメス。
これでメスは26匹に到達した。
「ボン、明日はもう1人1万円だな!」
「いや、コハルが入ったら6000円だ」
「そうだったぁ!」
「まあすぐに増えるから問題ないさ」
飼育でゴブリンを増産する俺。
土魔法でゴブリンを管理するブタオ。
念力でゴブリンを処分するコハル。
これは完璧な布陣なのではないだろうか。
ナイフでの処分と魔石回収で腕がちょっとプルプルする。
明日から楽になると思うとニヤニヤしてしまう。
未来をちょっとだけ想像しながら、赤ちゃんたちを新しい土檻に収容する。
牧場作業を終えた俺たちは、静かにダンジョンをあとにした。
現在のゴブリン牧場の状況(47匹)
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・檻A(ゴブタロウ、メス26匹(赤ちゃん4匹))
・檻B(オス20匹)
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