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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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第19話: ゴブリンさんでレベルアップする

「さて、今日も出勤しますかぁ〜」


朝12時すぎ。

昼飯を食べてからの集合である。

ゴブリンの出産タイミングを考えるとこれくらいの集合で問題がない。


これだけでも探索者になった価値があるなとひしひしと感じている。

満員電車なんて人間の乗る乗り物じゃねぇ。


ブタオの白い軽バンに乗り込むと、助手席のシートが妙に体に馴染んだ。

もうここは俺の専用席だな。


「なあボン、今うちってメス何匹だっけ?」

「7匹だな。昨日1匹追加されて、合計7」

「ってことは日給7000円かー!」

「月で21万か……」


車内に沈黙が落ちる。

そして、同時に笑った。


「21万!? 俺の先月の月給じゃん!?」

「合計だからな。1人10万ちょい」

「あー、まだ微妙だ」

「でもすぐに増えるから」

「へっへっへ。今日はメスが何匹生まれるかなぁ。2匹産まれちゃったりして」

「1匹でも産まれれば御の字よ」


ブタオが笑いながらウィンカーを出す。

見慣れた道。見慣れたカーブ。

そして、見慣れたプレハブ。


【青梅ダンジョンゲート管理所】


軽口を交わしながら、俺たちは車を降りた。

今日も牧場の業務が始まる。


プレハブのドアを開けると、いつもの空気が俺たちを包んだ。


無骨な机。冷たい蛍光灯。

そして、カウンター奥──スマホをいじる女。


青梅ダンジョンの受付嬢。

我々の数少ない社会との接点だ。


今日も彼女は無言で、俺たちを一瞥しただけで視線をスマホに戻した。

……と思いきや、ペンを握った手が一瞬止まった。


「……最近さ」

「はい?」

「……あんたら、なんか……多くない?」


その言葉に、俺とブタオはピクリと動きを止めた。

まるで目撃者に気づいた犯人のような、微妙な間。


「た、たまたまです!」

「いやもう、本当にたまたまなんです!」

「ゴブリンがなんか可愛く思えてきちゃってるんです!」

「いや、もうあなたに会いにきてると言っても過言ではないです!」


わざとらしいくらいに明るく返す俺たち。

受付嬢はスマホをじっと見つめたまま、ふぅと鼻で笑った。


「ふーん……」


空気がちょっとだけ、重い。

だが、黙っているわけにはいかない。


「そういえば」


俺は思い出したように声をかけた。


「お名前って、なんて言うんですか?」

「……」


彼女の手が止まり、スマホの画面から視線をこちらに戻す。


「……ゆき、だけど」

「ゆきちゃん! いい名前だね!」

「ゆきたそ! 推せる!!」

「はいはい、さっさと行きなー」


呆れたようにため息をついて、ボールペンをノートにカリカリと走らせる。


そのツンとした横顔が、ほんの少しだけ赤く見えたのは──

きっと気のせいだ。


俺たちは笑いながら、ゲートへ向かう。


「……バレてないよな?」

「セーフ、セーフ。まだ大丈夫」


目の前に広がる、湿った空気の迷宮。

よし、行くか。


青梅ダンジョンの空気はいつもと変わらず、湿っていて、ほんのり鉄の匂いがする。

通路を進むこと約15分。いつもの大部屋へとたどり着く。


檻Aの中には、我らが性獣様ゴブタロウと、そのハーレムことメスゴブリン7匹。

昨日まで赤ちゃんだった個体も、飼育スキルのおかげで今はすっかり立派なメスになっている。


「おはようございまーす、みなさーん」


ブタオが妙に甲高い声で挨拶すると、檻の中のゴブリンたちは無反応だった。

まあ、そうだよな。返事されても困る。


「先に……処分だな」


視線を向けるのは、檻B。

昨日分離しておいたオスの赤ちゃんたちが、きっちり4匹、整列して成体化していた。


「成体4匹、処分対象……ブタオ、いきまーす!」

「よろしくー」

「ちょっとチクっとしますからねー。痛いのは最初だけですからねー」

「次はないけどな」


小型土檻は優秀だった。

動けないサイズに調整されたゴブリンたちは、まるで自販機の缶コーヒーのように順番待ちしている。


ブタオは無言で、1体目の頭にナイフを突き刺した。

呻き声が漏れる。


他のゴブリンたちがちょっとパニックになってる。

これが自分だったらと思うとやばいな。


「……はい、次」


ブタオが淡々とゴブリンの頭に突き刺していく。

まるで流れ作業のような殺処分。

しかし──


4体目を倒した瞬間だった。


【レベルが2に上がりました】


頭の中に、機械音のようなアナウンスが響いた。


「……ん?」


「うえぇぇ!? レベルアップした!?」

「俺も俺も! 俺も今きた!」


ゴブリンを殺してない俺にも経験値が入ってるのか。


「なんか、ちょっと体が軽いというか……パワー上がった?」

「リスクゼロで……これ、経験値を稼げるのか」

「これ、マジでゴブリン牧場やってるだけで強くなるの……?」


──戦闘しなくても、痛い思いせずに、強くなれる。

その現実に、背筋がゾッとした。

だが同時に、ゾッとするほどの旨みも感じていた。


「これが……現代型レベル上げか」

「真面目に冒険してる連中、ぶちギレそう」


レベル。

ダンジョンで魔物を殺すとレベルが上がるのだ。

レベルが上がると体は強くなるし、見た目も若くなる。


50歳で20代のような見た目をしてる探索者だっている。

一部の女性は狂ったようにダンジョンに潜ってレベル上げをしている。


これが本当のかわいいは作れる、である。

探索者のほとんどはレベルを上げることなく探索者を辞めるか、死ぬかが多い中、俺たちは収穫作業をしているだけでレベル上げができる。


これ、本当にバレてはいけない案件です。

バレたらとんでもないことになりそう。


よりいっそう気をつけなければ。


処分を終えた俺たちは、檻を解除し、魔石4個をビニール袋に入れた。

檻Aに戻って出産確認に入る。


──いた。


赤ちゃんゴブリンが、床にぞろぞろと10匹。


「マジか……今日も豊作かよ」


1匹ずつ確認していく。


1、2、3……全部オス。


4、5、6……オス。


7体目──オス。


「うわああああああああ!!」


だが8体目──


「メスだぁああ!!」


9体目も──メス!


そして10体目──まさかの、メス!!


「トリプルメス!!」

「今日はお祭りです!!」

「うらーーらーーらーー!」

「ピーヒャラピーヒャラぱっぱぱらぱー!」


俺とブタオのテンションは限界突破した。

汗も吹き飛ぶ勢いで盛り上がった。


これで、メスは合計──十匹。


「やべぇ……1日1万……!」


俺たちは赤ちゃんメス3匹を丁寧に檻Aへ、

オス7匹は、再び処分待ちとして新設した小型檻に入れた。


「これゴブタロウ一匹でさばけるのかなぁ」

「うーむ、ちょっとスキルで妊娠状況確認するわ」


飼育スキルでメスゴブリンの状態を確認する。

すると、全員しっかり妊娠していた。


ゴブタロウさん、テクノブレイクしないか心配です。




現在のゴブリン牧場の状況(十七匹)

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・檻A(ゴブタロウ、メス十匹(赤ちゃん三匹))

・檻B(オス七匹)

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