第14話: ゴブリンさん、ご新規2名様ご案内
「……なあ、ボン。行くよな?」
ブタオが言った。
ウキウキとした表情を浮かべている。
「ああ、行くしかない。」
メスゴブリンの妊娠を確認したばかり。
飼育スキルの反応があるたびに、俺の中で手応えが確かになっていく。
「今のうちに数を増やせば、明日には一気に生まれるってことだよな?」
「そう。今日のうちにもう2匹くらい追加で捕まえて、妊娠させておけば……」
「「──牧場、回るぞ」」
2人で同時に言い切った。
声が重なると、ちょっとカッコよく感じるから不思議だ。
「よっしゃ、行くか! 今ならメスがポロポロ出てくる気がする!」
「お前、それフラグじゃねぇだろうな?」
「違う違う、これは未来予知。俺の第六感が言ってる!」
そう言いながら、ブタオは檻の補強をもう一度確認した。
中には妊娠したばかりのメスゴブリン1体と、すやすや寝ているオスゴブリンがいる。
「よし、あとはよろしく頼むぞ。留守番隊長!」
「お前をハーレムの王様にしてやるからな!」
そんなやり取りをしながら、俺たちは再びダンジョンの通路へと踏み出した。
──目指すは、新たなメスゴブリン。
運命の一戦が、また始まる。
ダンジョンの通路は、相変わらずじめっとしている。
足音だけが反響するなか、俺たちは慎重に歩を進めていた。
「……いた。1体、単独行動」
曲がり角を覗いた俺が小声で告げる。
ぴょこぴょこと跳ねるような足取り。あの動き、あの耳──間違いなくゴブリン。
「よっしゃ、サクッとやるか」
ブタオが手のひらをこすり合わせながら、いつもの土魔法の構えを取る。
「せーの!」
──ボコン!
地面が盛り上がり、ゴブリンの足元がぐらついた。
その隙に俺が飛び出し、スプレー&ライターの火柱で威嚇。
怯んだところに、ブタオのバットが一直線に振り抜かれる。
「ぎゃっ!」
ゴブリンが地面に転がり、ぴくぴくと痙攣する。
「確認タイム……はい、オスー!」
「知ってた!!」
「魔石回収、じゃんけん」
「あーもう、また俺かよ!」
心臓から魔石を取り出しながら、俺たちは顔を見合わせた。
「……次、いくか」
再び進んで五分もしないうちに──また、いた。
「二匹目、発見……また単体だな」
「オスに100円賭けるわ」
「じゃあ俺オスに200円」
「賭けにならんな」
作戦は同じ。
土魔法 → 火柱 → バットの流れがすっかり板についてきた。
ゴブリンは火にビビって転げ、俺たちのコンボであっさりダウン。
「確認……オス、再び!」
もうじゃんけんしても負ける気しかしないので進んで魔石を回収する。
「もうええわ!!」
ブタオが空に向かって叫んだ。
「メスよ出てくれー!」
「メース!メース!メース!」
メスコールが止まらない。
現在は二匹のメスが妊娠中。
もう1匹増えるだけで全然違う。
「次は来る。絶対来る」
「根拠は?」
「疲れの度合い」
「ちょっと何言ってるかわからないとです」
苦笑しながら、俺たちは再び奥へと足を踏み入れた。
──次こそ、メスだ。
「……っ、あれ見ろ」
通路の奥。開けた空間の先に、三つの影がうごめいていた。
「三体……初めてだな?」
「危なくねぇか?」
「確かに。でももうちょい様子を見よう」
しゃがみ込んで様子を伺うと、明らかに様子がおかしい。
先頭のゴブリンがこちらに気づいてギャギャッと威嚇する一方、
その後ろの二体は、ぴたりと足を止めて動かない。
「守ってる……?」
「まさか」
俺とブタオは顔を見合わせて、ニヤリと笑う。
「作戦Cでいくぞ」
「おっけー」
作戦Cと言いつつノープランである。
俺がスプレーとライターを構え、ブタオは土魔法の準備。
先頭のオスと思われるゴブリンが突進してきた瞬間──
「せいっ!」
──ボコンッ!!
土の突起に足を取られ、前のめりに転倒したゴブリンに、火柱とバットの連撃。
今までで最もスムーズに撃破完了。
「確認……はいオス〜! お疲れっした〜!」
「わかってたからテンション下がらんな、今回は」
残るは2体。こちらに威嚇はしているが逃げる様子はない。
「いける。今ならイケる」
俺はダッシュで二体の方に向かい、振りかぶったバットをゴブリンの右肩に振り下ろした。
──バキ!。
骨が折れたっぽい。
転がってバタバタと暴れている。
そこにもう一体が意を決したかのように牙を剥いて俺の方に向かってきた。
「やらせるか!」
ブタオが横からバットでゴブリンの腰を強打した。
「ナイス!」
腰を強打されたゴブリンは相当痛かったのかうつ伏せに倒れてピクピクしている。
「さあ、お待ちかねの性別鑑定ターイム!」
まずは一体目──
バタバタ暴れている方は危ないのでバットで遠くから腰布をめくる。
「ぶら下がってない……!」
「メス来たーーー!!」
もう一体──
こっちもバットを使って腰布をめくる。
「……こっちもぶら下がってなーい!!」
「うぉぉぉぉぉ!!」
二人して跳び上がり、バットとスプレーで空にバツンとハイタッチ。
「神回だこれ!!」
「メス4匹! メス4匹! 大事なことだから二回言いました!」
「牧場が、爆速で回る……!」
興奮冷めやらぬまま、俺たちは二体のメスゴブリンの足にロープを引っ掛け、大部屋まで引きずっていく。
絵面がすごくひどい。
どこかの団体さんから苦情が来そうだ。
片方がすごい暴れるので、時々バットで黙らした。
やってることは完全に悪人のそれである。
大部屋に着いたらメスゴブリンの檻の前に捕まえたメスを離し、ブタオが追加で檻を作成する。
そしたら間にある部分を消せばL字型の檻の完成である。
「いっちょあがり!」
「あざーす!」
「恒例のチョコタイムですな」
「おけ」
俺はリュックサックからチョコを取り出し、ご新規様の前にチョコを投げる。
もちろん食わない。
また実演しないとと思っていたら元々いたメスが横からチョコをぶんどっていった。
「あ、盗みやがった!」
「お前のじゃないぞ!」
仕方ないのでもう一度チョコを投げる。
すると今度はすぐにチョコを拾い食べ始めた。
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【スキル『飼育』が発動しました】
【対象:ゴブリン♀】
【効果:成長促進】【妊娠状態:進行率60%】
【出産予測:10時間後(促進中)】
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【スキル『飼育』が発動しました】
【対象:ゴブリン♀】
【効果:成長促進】【妊娠状態:進行率50%】
【出産予測:12時間後(促進中)】
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「妊娠済みですありやっしたぁぁぁ!」
「チョロすぎますアザース!」
なんとまた妊娠済みとは!
オスの性欲の強さを考えれば、常時メスが妊娠中なのは不思議ではないのかもしれない。
これでメスは4匹。
一日四千円の収入です。
一ヶ月十二万円の牧場がこちらになります。
俺とブタオはニヤニヤしながらダンジョンを出る。
受付嬢に魔石を二個渡し、二千円を受け取ってこの日の作業は終了だ。




