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すごい赤ん坊認定をされた

 ある日、俺はサイドテーブルに置かれたランプに、火がつくようにとイメージしていた。

 つけ。

 つけよ。

 どう?

 ポっと、小さな火がランプにつき、それがゆっくりと広がり大きくなった。

 やった!

 成功した!

 火を発生させたぞ!

「きゃっきゃっきゃっきゃ!」

 情けないことに、喜ぶ声もかわいらしい……。

 ドアが開く。

「あらあら、ルシアン様ご機嫌でちゅねぇ」

 ちょっと離れていたマリーナが現れて、俺へとニコニコ顔で近づいてきていたが、ランプを見て足を止めた。

「あら?」

 彼女は笑顔を消し、ランプをじっと見つめる。

 ……マリーナの真剣な顔、初めて見るんだけど……やばいことしたか? いや、してるよ。赤ん坊が魔法を使ったんだから。

「まさかね……消し忘れていたのかしら?」

 彼女はそう言い、ランプに手を伸ばしかけて止めた。

 そして、俺を見る。

「昼間から……ランプは使うはずがないし……ルシアン様?」

 ……。

 目を逸らした。

 抱っこされた。

「ルシアン様、火をちゅけましたか?」

 目を逸らしつづける。

「ルシアン様?」

 覗き込まれた……。

「だぁ!」

 ごめん、と謝ったつもりだ。

「……まさかね」

 マリーナは笑い、俺を抱っこしたまま部屋の中を歩き回る。これはいつものことで、彼女はそうしながら、物語を聞かせてくれる。

 実は、赤ん坊になっている俺の唯一の楽しみがこれで、とてもおもしろい。そして、この世界の歴史、神話……つまり文化と価値観などを学べた。

 それにしても、マリーナは博識ですごいと思う。

 いろんな物語をすらすらと語れるし、歌もうまい。

 たまにしか来ない母親よりも、この人がいてくれるほうが安心できるというものだ。

 ……大人だけど、そう思う。



 - Il était appelé le Grand Mage. -



「ルシアン様、もうお腹いっぱいでちゅか?」

「うん」

「え?」

 マリーナに抱っこされたまま、彼女に見つめられて俺は「うん」と答えた。

 答えた?

 え?

 俺、少しだけど話せるぞ。

 これまで、脳内で考えるだけだったが、口と舌を動かしてはいた。だけど発音が上手にできなかったんだ。

 それが今は、短い言葉だけど、できた。

「ルシアン様?」

「うん」

「わたしの言葉、おわかりなのですか?」

「うん」

「お腹、ペコペコですか?」

「ううん」

「ううん? 違う?」

「ちがう」

「ルシアン様!」

 突然、高いたかいをされて驚く!

「すごい! まだ五カ月なのに!」

 まだ五カ月なのか……俺は。

 早く成長したいよ。

「ルシアン様、じゃ、これまでお話をした物語を、もう一度、ちゃんとお聞かせしますね」

「いや」

「……お話は、お嫌い?」

「すき」

「どうして?」

「他の」

「これまでとは違う、他のお話が聞きたいのですか?」

「うん」

「……お利口! ルシアン様はお利口です!」

 高いたかいを、され続けた。



 - Il était appelé le Grand Mage. -



 両親が、マリーナと話している。

「ルシアンは、そんなにすごいのか?」

「はい、陛下。殿下はこれまで、わたしがお聞かせした神話、戯曲、物語などを理解なさっておられます」

「この子が本当に?」

 母親が、俺の顔をのぞきこむ。

 綺麗な女の人だけど、ただそれだけだ。母親って感じはしない。それは、俺が日本人だった記憶があるからじゃなく、ほとんど現れないし、世話をしてくれたことがないからだ。

 こう言ってはなんだけど、俺はこの人よりもマリーナのことを慕っている。

 ……もちろん! 俺を育ててくれているからだ!

 べつに、抱っこをされた時におっぱいが大きいから気持ちがいい等という気持ち悪いことは考えたりしていない!

 赤ん坊として、慕っているのだ! 絶対に、そうだ!

「しかし、早すぎるのも不安ではあるな」

「陛下のご心配はごもっともでございますが、ルシアン様はとても物分かりがよく、意思疎通も最近はできるほどでございます。このまま、ご成長を見守り、天意にゆだねられてはいかがでしょうか?」

「マリーナ、頼む。宮廷魔導士から乳母になってもらったのは、君の才覚を認めているからだ。このまま、ルシアンの成長を助けてやってほしい」

「もちろんでございます、陛下」

 あんまり成長が早すぎると、大人は不安になるわけね?

 でも、たしかにそうかもしれん。

 俺だって、子供がいたらそういうふうに思ったかもしれない。

 そうか、マリーナは宮廷魔導士という役職だったのか。

 魔法、もっと教えてもらおう。

 そうだ、これからは神話や物語の時間を少し減らしてもらって、魔法の練習をさせてもらおう!


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