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薬を依頼

 ヒュドラ討伐後、明け方に町へ帰還した俺は、ユーリの計らいでコトラス子爵の屋敷に泊まれることになった。

 受付の女性は、子爵秘書のエリザ・バスケスと名乗り、薬師を紹介する約束を守ってくれた。

 風呂……最高。

 水浴びや、湯で洗う程度の日々に慣れていたけど、手足を伸ばせる浴槽、最高。

 日本人は、やっぱ風呂だよ。

 ……垢が浮かんで……毎日、ちゃんと拭いていたけどやっぱり取りきれないよなぁ。

 体中を、この時を逃さないとばかりに洗って風呂からあがる。

「あら、やっぱりちゃんと男の子ね」

 脱衣所に、エリザがいて驚いた。

「うわ!」

「着替え、これ使って」

 彼女は俺の裸を見ても、顔ひとつ変えず着替えを置いて出て行った。

 着替え……麻のシャツにパンツ。

 来客用の部屋に戻ると、エリザが扉の前に立っていて、手招きをする。

「子爵閣下が会われるので、ついてきて」

「……」

 断ると面倒そうだから、素直に従う。

 応接室に通されて、少し待つと中年の男性が現れた。

 中肉中背で、短髪でひげ面の中年男性は、俺の手をとると笑みとなる。

「ありがとう! 私がこのコトラスの町と周辺を治めるコトラス子爵のウェルゲイだ。ウェルゲイ・クリス・コトラス。ヒュドラが領内に住み着いて困り果てていたんだ」

「お役に立ててよかったです」

「エリザから聞いたが、薬が欲しいと?」

「はい、薬師を紹介してもらいたいのですが」

「エリザに手配させている。午後にここに来るので会って、どんな薬が欲しいのかを言いなさい」

「ありがとうございます」

 親切なおっさんだ。

「ところで君は、どこで魔法を?」

「母です」

「お母さまは有名な魔導士?」

「いえ……わかりません」

「そうか……いや、探るつもりはない。それよりも……ぜひこの町に住んでもらえないか?最近は物騒なことが多くてね。ユーリから聞いたよ。すばらしい魔導士だと」

「ありがとうございます……ですが、家族に薬を届けないといけません。その後でも?」

 あっさりと断ったら悪いから、そういうことにしておいた。

「そうだろうとも! 君とご家族なら大歓迎だ。ぜひ、一緒に移住してもらいたい」

 面談はそれで終わり、朝食を食べて、ふかふかの寝台でぐっすりと眠った。



- Il était appelé le Grand Mage. -



「アルス、起きて」

 誰だ?

 目を開けると、エリザが俺を見ていた。

「うわ!」

「薬師が来たの」

 ありがとうございます!

 寝ぐせを手でくしゃくしゃとしながら応接室に案内されると、老人がいた。

「薬師のギル・オズムです」

「アルスといいます」

「どんな薬を?」

 俺は、血が毒になるという病気だと言われたことを伝えた。するとギルさんは表情を曇らせ、視線を床に落とすと口を開く。

「……それはもしかしたら、血腫かもしれません……薬は恐ろしく高いですし、それで治るかどうか……」

 ……難しい病気なのか? ともかく、薬を手に入れないと始まらない。

「薬はおいくらですか? ヒュドラを倒した報奨金があります。百万リーグ」

「……一回の投与分で十万リーグ……必要かと」

「十回分、お願いします」

「……完治まで、飲み続けないといけません。一日一回……それでも?」

「足りないなら、また金を稼ぎます」

 これは、黙って村を抜け出すことが多くなりそう……。

「わかりました。作るのに十日かかります」

 そんなに!?

 ……いや、ここは待つしかない。

「お願いします」

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