表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生皇子の魔導録 ー未発見の魔導書を求めてー  作者: ビーグル犬のぽん太
第一章 アルスという名になって
14/43

ゼグスの稽古

 村に帰り、俺が狂獣バーサクを倒したことが広まると、皆が俺を称えてくれた。

 もちろん、マリーナも喜んでくれたけど、その後に叱られた。

「ゼグスに稽古を? ダメです!」

「どうして?」

「あれは本当に危険な魔族です。魔人と呼ばれる強力な種で……その中でも高位の魔将アスモデウス級なの。危険だし、魔人が人に稽古をつけるなんて聞いたことがない」

「でも、もうお願いしちゃった」

「……わたしも立ち会う」

「は?」

「稽古の時は、わたしも立ち会う。でないと、許可しません」

 許可しません……マリーナに、もしかしたら初めて言われたかもしれない。

 なんだか、微笑ましい。

「アル? 笑顔で誤魔化そうとしてもダメよ」

「わかった。じゃ、一緒に」

「約束よ」



 - Il était appelé le Grand Mage. -



 ゼグスの稽古、一言でいうと、地獄だった

「おい! どうした? もう終わりか?」

「まだです!」

「剣の振りが遅い。腕の力だけだ。すぐにへばるし、それでは斬れん」

 ガツン!

 木の棒で殴られてふっとばされる。

「アル、大丈夫?」

 マリーナに抱き起され、よろめきながら立ち上がる。

 眼前、約二メートル先にはゼグス。

 強い……魔法が強くなれたからって、いい気になったらこいつらみたいな化け物に殺されて終わりだ……魔法を発動しても、防がれて、接近されて殺される。では、接近される前に防げないような魔法で、と考えても、あちらが魔法攻撃してくれば、防御魔法ディフェンシォを発動しないと結局はやられる……。

 堂々巡りだ……。

 よくわかる。

 強い相手だと、自分の非力さがよく理解できた。

「マリーナ、大丈夫。手を抜いてくれているから」

「はっはっは! 手を抜く俺相手に、やられっぱなしか? さ、一本とって終わりにしよう。さっさと来い」

「行きます!」

 斬撃を、あっさり躱され、蹴られた。

「うぐ!」

 地面を転がり、苦しむ俺にゼグスが笑う。

「いきます! と言って来る馬鹿か? お前は? 攻撃しますと宣言したら、躱されてそうなる。蹴りでよかったな? 剣だと死んでいたぞ」

 そうだよ!

 俺は馬鹿か? 

 声をかけてから攻撃なんて、漫画じゃないんだから!

 立ち上がる。

 呼吸を整え……だぁ!

 ゼグスが急接近してきた!

 相手の攻撃を、マリーナに教わった体術で躱すも、直後に火炎弾フレイムを発動され、防御魔法ディフェンシォで防ぐしかない! 反撃できないまま、ゼグスの連続攻撃を防ぐことしかできず、体当たりで吹っ飛ばされた……。

 奴は、俺なら魔法攻撃を防ぐとわかったうえで、それも踏まえて連続攻撃を組み立てていた……。

 俺の行動が、奴に支配されている。

 それから何度も挑んだけど、蹴られ、殴られ、ボコボコにされて稽古一回目は終了……しかも、かなり手加減されているという自覚があった。

「アル、顔は無事、よかったわね」

「よく……ない」

 情けなくなった。

 いっぱしに、強いつもりだった。

 魔法を使えるだけだと、実戦じゃ通用しない。

 強力な魔法も、発動がばれてしまうと意味がない。とくに、ゼグスのような強い相手と戦う時は、魔法戦闘と通常戦闘を同じレベルまで……それも最高度まで高めないとダメだ。

 ゼグスはここで、マリーナを誘う。

「どうだ? お前も戦ってみるか? 息子の代わりに俺から一本とってみろ」

「……それじゃ、少しだけ」

 マリーナ……断ると思ったけど、彼女は俺の剣を握るとゼグスと正対した。

 両者、向かい合ったまま動かない。

 だけど、わかる。

 お互いに、仕掛ける呼吸を計っているんだ。

 ゼグスが動いた!

 一瞬で火炎弾フレイムを発動させたゼグスに、マリーナも氷槍バラスを発動し対抗する。二人の魔法がぶつかりあい、すさまじい水蒸気となって周囲に爆風を撒き散らした。俺は転げながら体勢を整え、立ち上がった時、二人は至近距離でぶつかりあう。

 マリーナは、強かった。

 ゼグスの魔法を、防御魔法ディフェンシォで防ぐのではなく、攻撃魔法をぶつけて相殺することで無力化し、さらに魔法を連発することで相手に防御を強いる。一方のゼグスも、簡単にはさがらずマリーナに挑み、魔法とみせかけ殴打を浴びせた。

 ゼグスの拳を、マリーナは地面を転がって逃れる。

 追撃のゼグスが蹴りを見舞ったが、マリーナは立ち上がりながら剣を一閃した。

 危険で鋭い半円を、ゼグスは半身で躱す。

 稽古は、そこで終わった。

「人間にしてはやる。そして、息子に戦い方を見せたな?」

「アルに稽古をつけてありがとうございました」

 マリーナの感謝に、ゼグスは俺を見た。

「よい母をもったことに感謝するといい。アル」

「はい……ゼグス様にも、感謝申し上げます」

 魔人は、くぐもった笑い声を残して去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ